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【メソッド】

+Difference(タナベコンサルティング副社長コラム)

タナベコンサルティンググループの副社長・長尾による連載。経営環境や市場トレンドを踏まえ、企業経営の未来に向けて提言します。
メソッド2022.08.01

経営人材に必要な3要素を養う:長尾 吉邦

タナベコンサルティンググループのチームコンサルティングブランド(TCB)である「ジュニアボードコンサルティング(経営幹部養成プロジェクト)」。その原形は、クライアントA社で2000年ごろに実施した「戦略キャンプ」がきっかけだった。

 

当時、A社は年商150億円、従業員数600名の建材メーカー・商社。社長だった父親の急逝を受け、36歳で新社長に就任した若手経営者からの依頼は、次代の経営幹部を見極めることだった。当時の経営幹部は60歳代が中心で、5年後を考えると次世代の登用が急務だったのである。

 

そこで、まず次長・課長クラス60名で戦略キャンプを実施した。結果はひどいものだった。口を開けば不満と愚痴、他部門の批判、ライバルに劣るところをあげつらう。しかし、どうすれば良いかとの問いに答えは返ってこない。

 

私は、「皆さんの下では540名の社員が働いています。その社員の未来を担っているという責任を理解していますか?」とコメントし、リーダーとして不足している要素を3つにまとめた。1つ目は「全社視点」、2つ目は「経営感覚(バランスとタイミング)」、3つ目が「意思決定力」だ。

 

この不足を解決するため、60名の中から8名を選抜し、社長をオブザーバーとした計9名でジュニアボードを実施。約1年間で「次世代の和と経営能力」を創造するための環境をつくった。

 

カリキュラムの1回目は「創業の精神、成長過程・要因、バリューチェーンや経営資源の強みの確認」とした。自社の使命や培ってきたことを認識し、創業者や先人たちをリスペクトすることから始めなければならないと考えたからだ。

 

2回目は「業績構造分析とKGI(重要目標達成指標)設定」。客観的に自社の課題を診て業績目標を決めた。3回目は「環境分析と強みを起点とした戦略オプション」とし、勝てる場を決めた。4回目は「バリューチェーン競争力とKPI(重要業績評価指標)」とし、勝てる条件づくりを行った。5回目は「内部分析による強化点とKPI」で、経営能力の目標を定めた。6・7回目が「中期ビジョンの策定と意思決定」。毎回、事前課題で大量のインプットを行い、質の高い議論を重ね、緊張感のある疑似取締役会で意思決定を積み重ねた。

 

結果、前述の3要素を併せ持つ経営人材が育ったA社は上場を果たし、順調に成長を続けている。現在の取締役と執行役員はジュニアボード出身者で、同社は今も3年に1回、ジュニアボードを実施中だ。ぜひ貴社の経営人材育成の仕組みとして、ジュニアボードを取り入れていただきたい。

 

 

※タナベ経営のコンサルティングチームが、クライアント企業の社長・経営幹部とビジョンや事業構想を合宿形式で議論し、持続的成長のための戦略構築を支援するコンサルティング商品

 

 

 

 

 

Profile
長尾 吉邦Yoshikuni Nagao
タナベ経営 取締役副社長。タナベ経営に入社後、北海道支社長、取締役/東京本部・北海道支社・新潟支社担当、2009年常務取締役、13年専務取締役を経て、現職。経営者とベストパートナーシップを組み、短中期の経営戦略構築を推進し、オリジナリティーあふれる増益企業へ導くコンサルティングが信条。クライアント先の特長を生かした高収益経営モデルの構築を得意とする。著書に『企業盛衰は「経営」で決まる』(ダイヤモンド社)ほか。
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