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コンサルティング メソッド

タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
2017.04.27

海外展開するか否かは
10年先を見据えた高度な経営判断である
巻野 隆宏


2017年5月号
 
取り組みが不十分な企業に共通する問題点
 
このように海外ビジネスにチャンスがあるとは分かっていても、全く、もしくは十分に取り組めていない企業が多々存在するのが現実である。どのようなことが原因なのだろうか?これらの企業に共通する問題点は、次の3点だ。

 
1点目は、なぜ海外事業へ取り組むのかが明確になっていないこと。「国内事業は縮小する。だから海外に進出する」という動機はあると思うが、海外事業に取り組む意義がなければ「何としても海外で事業を立ち上げる」という強い意思を持てない。まずは「何のために」という目的を明確にすることからスタートしたい。

 
同時に、どの国で何を売るのかも明確にする必要がある。展開国の選び方は、その業界における先進国を選択したり、逆に未開拓の国を選択したり、距離の近さからアジアを選択したりとさまざまだが、明確に展開国を設定することが大切である。展開国が決まれば、販売する商品やサービスがマッチするかを実際に現地で踏査する。その際に忘れてはいけない着眼点が、その国の文化に触れること。販売する商品やサービスに関する調査だけでなく、その国の文化、生活習慣、人々の考え方に触れることが大切になる。

 
2点目は、収益を上げるビジネスモデルが見えていないことが挙げられる。先日、タナベ経営の海外ビジネス研究会で講演いただいたある方は、「世界で戦うには利益率が2桁なければ戦えない」と話されていた。海外のグローバル企業と戦うためには2桁の事業利益率を確保するビジネスモデルが必要なのである。
 
コストを抑えるためのサプライチェーン全体での工夫や、提供価値を最大限に引き上げるための真の顧客価値の再設定で、高収益ビジネスモデルを組み上げなければならない。自分たちが良いと考えていても、海外のものの考え方や生活習慣からは価値と捉えられないものもある。ジャパンブランドが受け入れられる部分もあるが、逆に品質が悪い、ニーズとマッチしていないなどと受け取られる部分もあり、「価値なし」と判断されることもあるのだ。その意味でも展開国の文化を知ることは非常に重要である。
 
3点目は、誰が取り組むのか決まっていないことが挙げられる。海外事業においても人材不足が顕著である。海外事業が成功するか失敗するかは、何をやるかも大事であるが、それ以上に「誰がやるか」が重要になる。
 
まずはリーダーが自ら開拓する気概を持ち、先頭に立つ必要がある。併せて、実務を引き継いで、実際に事業として取り組む人材の確保も欠かせないが、ここに課題を抱える企業は多い。社内人材の育成やスカウトなどを活用し、「海外事業を何としても立ち上げる」という気概も一緒に引き継げる人材をいち早く見つけることが、海外事業成功の秘訣である。
 
海外ビジネスを成長エンジンとするためのポイント
 
あれらの課題を克服し、海外ビジネスを成長エンジンとするためのポイントとして次の3点を提言したい。
 
1点目は、「郷に入れば郷に従え」。海外では、国内では考えられない問題が発生する。日本で経験してきたステップが通じないことも多々あるだろう。日本は実店舗での商品購入から、Web通販での購入へと移行してきたが、実店舗が発達する前にWeb 通販での購入が主流になっている国もある。そうなると消費に対する考えが日本とは全く違ってくる。
 
また、高度経済成長期の「質より量」という考えと、高付加価値志向の「量より質」への移行が同時に起こっている国もあり、日本から見れば理解しがたい価値観を持っていることもある。まずは展開国を決めて、現地の文化を理解し、受け入れた上でビジネスモデルを構築することが大切である。
 
2点目は、「卵を1つのカゴに盛るな」。一品、一国、一代理店に偏っていては高収益ビジネスモデルを組み上げることはできない。海外事業を推進している企業は例外なく、点から面への展開、地道な新規顧客開拓活動を重視している。海外で売り上げを伸ばしている企業は、自ら海外で顧客数を増加させているのである。マネジメントがしやすいからといって、一代理店と独占販売契約を結んだり、特定の顧客とだけ商売をしている企業は少なくないが、代理店も顧客もその状況に安住し、積極的に販売しなくなってしまうことが多々ある。展開国や展開商品・サービスを積極的に広げていく行動力が、海外ビジネスを成功させるためには重要となるのである。

 
3点目は、「七転び八起き」。これまで海外ビジネスに取り組まれている多くの優良企業の経営者と話をする機会があったが、口をそろえて「初めは失敗の連続であり、最初からうまくいかないことを前提に取り組まなければいけない」と言う。海外ビジネスは長距離走だ。短距離走ではない。だからこそ、小さく始めて長く続けられる工夫と、中期的なゴールの設定が大切である。初めから全力疾走ではすぐに息切れしてしまう。とはいえ、永久に続くマラソンは完走できない。まずは、3年で単年度黒字化するなどの中期的ゴールを設定したい。
 
 

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