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【特集】

デシジョンマネジメントシステム

的確で迅速な経営判断が求められる今、社員が質の高い意思決定を行うことができれば戦略実行の精度が上がり、生産性の向上や利益の最大化につながる。管理会計とその運用を含む「意思決定のマネジメント」について提言する。
コラム2022.06.01

業績先行管理で未来をマネジメントする:浜岡 裕明

未来視点で業績を伸ばすマネジメント手法

 

企業における業績管理の仕組みは、大きく3つのレベルに分類できる。

 

1つ目は、「遅行管理型マネジメント」である。マネジメントレベルが弱く、月次決算の完成に1カ月前後かかるケースだ。特徴は、結果管理にとどまり、「業績が良ければ社員を評価、悪ければ指摘」の繰り返しに終わることである。業績状況を把握するまでに時間がかかり、対策が遅れて目標を達成できないケースも少なくない。

 

2つ目は、「同時管理型マネジメント」だ。月次決算がタイムリーに把握できる程度のマネジメントレベルである。現状から見える課題を業績対策案に即反映できるという意味では効果は期待できるものの、プロセス管理にとどまってしまうケースが多く、対策の範囲は限定的だ。

 

3つ目は、「先行管理型マネジメント」である。3~6カ月先を見通して、顧客または案件情報を管理できるのが大きな特徴だ。

 

自社の業績目標を達成するためには、過去の数字を眺めていても前に進まない。当たり前であるが、未来に向けて行動することが業績をつくることにつながるのだ。

 

TCG(タナベコンサルティンググループ)は、未来視点で業績をつくる「業績先行管理メソッド」を多くのクライアント企業に導入している。業績先行管理メソッドとは、実績(現在確定している累計金額)に見込み(3~6カ月先行の見込み情報を基に算出した累計金額)を加え、目標とする累計金額との差額(真の差額)を把握し、そのギャップを埋めるための対策を推進することである。

 

これを数式で表すと、「真の差額=累計目標-(累計実績+累計見込み)」となる。先行管理すべき業績は営業利益であり、営業利益目標を達成するための取り組みを継続しなければならない。

 

【図表】をサンプルに業績先行管理メソッドを説明する。現時点を9月上旬とし、6カ月先行で業績先行管理を行う場合、真の差額は2月末累計時点のマイナス5億円になる。「9月末時点では目標を達成している」という目線ではなく、先行6カ月間で埋めるべき5億円の差額対策を未来志向で推進することが重要だ。

 

 

【図表】先行管理型マネジメントの例(現時点:9月上旬/単位:百万円)

出所:タナベ経営作成

 

 

営業部門と生産部門の業績先行管理のポイント

 

営業部門における業績先行管理は、「受注型」と「見込型」でポイントが異なる。

 

受注型は、建設業などをイメージすると理解しやすいだろう。単発の案件を中心に業績を生み出すビジネスモデルである。

 

業績先行管理期間は3カ月で、真の差額を埋める(3カ月後の目標を達成する)ために必要な案件情報(リード)金額は、差額の3倍以上だ。

 

差額を埋める対策のポイントは3つある。まず、案件のステップを決め、状況・情報をマネジメントする。次に、キーパーソン・予算・タイミング・ライバル動向を押さえるための行動計画を具体化する。最後に、受注確定に向けた動きをマネジメントしていくと同時に、見積件数と受注率をKPI(重要業績評価指標)に設定する。

 

見込型は、卸売業など、一度取引が始まると季節変動や景気動向などの上下はあるものの、需要予測を基に業績をつくることができるビジネスモデルである。

 

このモデルは、対策を始めてから取引を開始するまでに一定の時間を要することが多いため、先行期間は6カ月が望ましい。また、真の差額の2倍以上の案件情報(リード)金額が必要だ。

 

差額を埋める対策のポイントは2つ。製品・商品別の対策を立て、先行で実行することと、顧客の動向・情報をマネジメントしながら需要予測の精度を高めていくことである。

 

生産部門における業績とは粗利益を指す。営業部門との情報連携を密に行って生産性を最大化し、コストマネジメントを図りながら粗利益を最大化することが生産部門の業績責任とも言える。

 

生産部門における業績先行管理のポイントは、営業部門から情報を集めるための仕組みづくりの確立である。生産と販売のバランス、投入と出荷のバランスが可視化されてからマネジメントは始まる。

 

営業部門の販売情報を基に、1カ月程度の大日程計画、週単位の中日程計画、日単位の小日程計画と、期間ごとの先行生産計画を作成する。まず大日程計画でシフトを組み、中日程計画で当初の予定と急きょ対応すべき案件を調整して生産性を最大化。小日程計画で当日の生産目標を計画する。

 

狙いは、生産部門のコスト変動要素で最も大きい生産量と人件費のコントロールにある。先行計画を踏まえて、1時間当たりの人的生産性をどのように高めるかが生産部門の業績管理と直結する。また、繁閑差のコントロール、内製・外注のバランス基準、設備の稼働率についてもマネジメントするのが良い。

 

 

営業部門と生産部門の業績先行管理のポイント

 

業績を先行管理する上では、営業部門・生産部門の先行管理情報(金額)を踏まえて全社の営業利益をマネジメントすることが重要である。また、各事業が生み出すキャッシュフローを最大化させるための先行資金マネジメントの仕組みも欠かせない。

 

業績先行管理がうまくいかない企業では、「金額」を管理してしまっていることが多い。だが、業績先行管理の本質は「情報のマネジメント」だ。

 

受注・売上確定に向けて、顧客情報、商品・サービスの情報を動かすためには、社員一人一人の対策実行(=行動マネジメント)が必要になる。行動をマネジメントした結果として案件が動く(受注確度が上がる)からこそ、先行で読んでいる見込み(金額)がマネジメントできる。

 

業績先行管理システムの導入で、必ず目標を達成する“未来志向型マネジメント”を推進していただきたい。

 

 

 

 

 

 

Profile
浜岡 裕明Hiroaki Hamaoka
2006年タナベ経営入社。経営者の志を受け止めるコンサルティングスタイルで、ホールディング設立支援・グループ経営システム構築・事業承継計画策定・企業再生など経営機能別コンサルティングに定評がある。組織経営体制を目指した経営システムの構築、後継者・経営幹部育成を多数経験している。ビジネス・ブレークスルー大学大学院(経営学修士)修了。
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