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デシジョンマネジメントシステム

的確で迅速な経営判断が求められる今、社員が質の高い意思決定を行うことができれば戦略実行の精度が上がり、生産性の向上や利益の最大化につながる。管理会計とその運用を含む「意思決定のマネジメント」について提言する。
コラム2022.06.01

意思決定を迅速化するセグメント会計:本島 雅己

 

 

セグメント会計で「経営の見える化」を実現

 

事業規模を拡大すると、企業の事業部門や扱うソリューションは増えてくる。しかし、全体業績だけでは事業別の状況が把握しづらい。そのため、各事業単位、あるいは業績を評価する単位であるセグメントごとに会計を行う「セグメント会計」が必要になってくる。

 

セグメント会計を導入する最大の目的は、経営における意思決定の迅速化である。業績管理体系を部門・商品・得意先などのセグメント別に分けることで、経営者・幹部が自社の経営実態を適時理解できるよう、「経営の見える化」を実現するのである。

 

【図表】は、全社の業績は黒字であるものの、セグメントごとに分けた際に一部の部門(c部門)が赤字となっている事例である。a部門とc部門の売上高は同額だが、c部門の方が売上原価が高い。よってc部門には、コスト削減や費用対効果を高めていくなどの対策が必要なことが分かる。

 

 

【図表】セグメント会計の例(単位:千円)

出所:タナベ経営作成

 

 

全社の業績管理のみにとどまってしまうと、こういった赤字部門の所在が見えず、誤った意思決定を行ってしまう可能性がある。セグメント会計を導入することで、部門ごとの業績を把握し、自社の実態に沿った経営判断を行うことができるのだ。

 

セグメント会計を実施するには、まず「管理するセグメントをどのように決定するか」が重要なのである。

 

 

マネジメント・アプローチに沿ったセグメント決定を

 

では、どのように管理するセグメントを決めればよいかを解説していく。

 

まずは、顧客・商品・事業・部門など、業績管理を行う単位の設定から始めていただきたい。また、経営者自身が自社の実態業績の評価・管理を行うために、事業の構成単位ごとで分ける「マネジメント・アプローチ」に沿ったセグメント決めも有効である。マネジメント・アプローチを行うメリットは、次の3点だ。

 

❶経営者の意思を反映しやすい

 

❷すでに作成されている財務情報を基にしているため、追加投資が比較的少ない

 

❸実態の組織構造に即しており、恣意性が入りにくい

 

経営者の思いを事業ビジョンに反映するためには、経営理念などを通じて社員に発信する手法が一般的であるが、マネジメント・アプローチで管理会計上に事業ビジョンを反映すれば、定量的な観点からも経営者の思いを発信できる。

 

また、財務会計上の値を基に作成できることから、会計システムの再構築や人員増加などの追加投資が比較的少ない。組織・管理体制の整備で事足りるため、導入が簡単で効果も出やすい。

 

このように、マネジメント・アプローチに沿ってセグメントを決定することで、事業戦略策定の材料として活用し、企業成長の一端を担うことが可能となる。

 

一方で、全社の業績結果を示す財務会計とは異なり、セグメント会計を含む管理会計においては、業績管理と評価上細分化された予実績を、財務会計の数値と、ある程度まで合わせる必要がある。計算基準や活用する目的が異なるため、財務会計と管理会計の数値を正確に合わせることは困難であるが、極力近づけることが重要である。

 

 

セグメント会計の効果を最大限に高める運用設定

 

セグメント会計導入のメリットとして、セグメント別での詳細な業績差異の要因分析と、その分析に基づく推進計画の立案に生かせることが挙げられる。

 

例えば、顧客ごとにセグメントを分ける場合、「適切な販売単価や数量であるか」「厳しい値引き要求で目標利益を大きく下回っていないか」などをチェックすることができる。売り上げの構成要素と「適切なコスト配分かどうか」を分析することで、利益率の高い得意先への営業力を強化したり、粗利益の低い取引先に対しては取引条件の改善を考えたりするなど、顧客別に戦略を策定することも可能になる。

 

また、商品ごとにセグメントを分ける場合、商品ごとの粗利益率や販売数を把握することで、現状の売れ筋商品・利益率が高い商品の販売強化など、今後の販売戦略に生かすことができる。

 

なお、セグメント会計を事業戦略策定に生かすためには、セグメント会計のスムーズな運用体制の構築が必要となる。まずは、次の2ステップで進めていくと良い。

 

❶管理会計ルールの整備

 

セグメント会計を用いた業績評価には、公平な配賦ルールの設定や会計データの整備が欠かせない。本社と部門間の配賦ルールは、構成比による売上高基準や営業利益基準、経常利益基準を基に設定する。

 

次に、本社費予算を設定し、本社にも利益責任(経費管理責任)を負わせることで、業績管理の一部であるコスト意識を高めるとともに、経費に関する責任の所在を明確にすることが可能となる。

 

❷セグメント会計の運用

 

セグメント会計の目的であるタイムリーな業績評価・管理を実現するには、データの収集と収益の早期化が必須である。業務改革や会計システムの見直し・構築を早急に進めることが重要だ。

 

セグメント会計は、自社の実態を迅速につかみ、経営の意思決定を行う上で重要な手法である。まずは、マネジメント・アプローチに沿ったセグメント決定を行い、自社の管理会計上の経営課題を明らかにする。そこから、管理会計ルールの作成やセグメント別での業績管理体制を構築していただきたい。これらを整備することが、セグメント会計を踏まえたデシジョンマネジメントシステムの実装につながる。

 

 

 

 

 

 

Profile
本島 雅己Masaki Motojima
金融機関の個人・法人営業にて多くの事業承継・ホールディングス化案件に従事後、2021年タナベ経営に入社。「クライアントと共に成長できる会社を1社でも多く作る」を信条に、グループ経営・事業承継・資本政策・マネジメント改善を中心にファイナンス分野のスペシャリストとして活躍中。顧客に向き合い、課題解決のための熱意あるコンサルティング展開で、業種を問わず幅広いクライアントから高い信頼を得ている。
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