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【特集】

SDGsビジネスモデル

「社会性」と「経済性」の両立を目指すSDGsビジネスモデル。持続可能な開発のために解決すべき社会課題を本業に掛け合わせた戦略の構築から、重点テーマやKPI(重要業績評価指標)を明確化し、社内外へ浸透させるまでを一気通貫で設計する方法を探る。
コラム2022.05.02

SDGs実装の5つのステップ:中野 翔太

SDGs達成を目指す目的は何か

 

本稿ではSDGsプロジェクトを実施する際のステップを説明する。基本的には「SDG Compass」※1に記載のあるステップでSDGsを押さえていくことをお勧めする。そのステップとは❶SDGsを理解する、❷優先課題を決定する、❸目標を設定する、❹経営へ統合する、❺報告とコミュニケーションを行う、である。

 

❶SDGsを理解する

 

まずはファーストステップである「SDGsを理解する」ことから始める必要がある。企業としてSDGsに取り組むためのプロジェクトを10名以下で組成し、プロジェクトメンバーのSDGsへの理解レベルを上げるために勉強会を実施するのが望ましい。その際、次のポイントを押さえておく必要がある。

 

①企業としてSDGsに取り組むことのメリットとリスクを理解する

 

②自社がどのような目的でSDGs達成を目指すのかを理解する

 

③自社が行っている取り組みと、SDGs17ゴール・169ターゲットをひも付ける

 

3つのポイントのうち最も重要なのは、②自社がどのような目的でSDGsを目指すのかを理解することである。既存事業強化の視点でSDGsを考えるのか。採用強化や従業員が働きやすい環境を創造するといった視点でSDGsを考えるのか。企業価値向上に向けたブランディングとしてSDGsを考えるのか。それぞれ議論が必要である。

 

実際には、取引先である大手企業がSDGsを掲げており、今後の継続的な取引を行うために「自社でもとりあえずホームページにSDGs活動を行っていることを発信しなければ」と焦ることもあるかもしれない。しかし、そんな焦りが「SDGsウォッシュ※2」のきっかけになりかねないことを理解しよう。

 

❷優先課題を決定する

 

SDGsを経営へ実装するに当たり、優先課題を決定すること、すなわち自社でどの社会課題を解決していくのかを決めることは、プロジェクトの重要ファクターになる。

 

優先課題を決定する際は「自社ができること・同業他社がやっていないこと」といった視点と、「解決できていない社会課題解決マーケットがどこにあるのか」といった社会課題解決にこだわった視点が必要である。ただSDGsを実施するのではなく、「差別化」を意識することも重要である。

 

次に、優先課題を決定する上でのポイントについて紹介する。

 

インサイド・アウト・アプローチ

 

インサイド・アウト・アプローチとは、自社の強みや自社がすでに行っている事業活動・経営活動から解決できそうな社会課題を模索し、ひも付けを行う手法である。多くの企業では3カ年ないし5カ年の中期経営計画を策定し、事業・組織・財務の視点で重点テーマを策定していることだろう。

 

まずは自社重点テーマとSDGs17ゴール・169ターゲットを確認し、ひも付けを行うのが良い。そうすることで重点テーマに掲げている事業・組織・財務のそれぞれのテーマにSDGsの付加価値を付与することができ、中期経営計画と連動したSDGs展開が可能となる。

 

アウトサイド・イン・アプローチ

 

アウトサイド・イン・アプローチとは、解決したい社会課題を選定し、自社で保有している経営資源を活用して解決できないか検討し、解決できない場合は他社とのアライアンスを検討しながら、選定した社会課題を解決していく手法である。このアプローチでは、社会課題として顕在化しているが、なかなか解決できていない社会課題に着手することができ、他社とは違うSDGs展開が期待できる。半面、成果が出るまでに時間を要すことが課題となる。

 

これらのアプローチ手法を基に、解決に向けて取り組む社会課題を選定した後、優先的に取り組む重点社会課題を決定するフェーズに移行する。優先課題を選定する際は、マテリアリティー(重要課題)・マトリックスを使用することを推奨する。縦軸を「ステークホルダーにとっての重要度」、横軸を「自社の事業・経営にとっての重要度」とし、各テーマをカテゴライズしてみるのが良い。

 

 

差別化につながるSDGs展開が重要

 

❸目標を設定する

 

優先課題を決定した後、ソーシャルインパクトを想定した目標設定をする必要がある。

 

例えば、中期経営計画を策定した際にはKGI(重要目標達成指標)・KPI(重要業績評価指標)を設定し、計画達成のための道しるべを示しているだろう。SDGsに対しても、中期経営計画と同様に「目指すべき数値」を決定し、社員一人一人が目標達成に向けたアクションを起こすための地盤を整備しなければならない。

 

また社外コミュニケーションを行うに当たり、社会貢献を行った活動を数値化できていないと、評価を得られなくなってしまう。数値目標を立てることが、❹経営統合、❺社内外コミュニケーションにおいても重要な位置付けとなる。

 

例を挙げると、カーボンニュートラルに関して数値目標を立てる際は、環境省が発表している「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を確認し、現状よりもCO2排出量を抑えた目標数値を設定する必要がある。

 

目標設定の際は、本社機能メンバーだけでは設定が難しいことも多々あるため、現場メンバーを巻き込みながら設定していくのが良いだろう。

 

❹経営へ統合する

 

会社として取り組むべき重要テーマが決まり、数値目標が設定されると次は「経営統合」のフェーズに入る。経営統合の目的は、大きな数値目標に対し、部・課・チームそれぞれに何をすべきか理解してもらい、目標を企業全体に定着させることである。このフェーズでも中期経営計画と同様、重要テーマを基にそれぞれの部門で何をすべきかというアクションプランを作る必要がある。

 

また、必要に応じてSDGs目標を達成できている部門を評価し、モチベーションを維持していくための仕組みについても、持続的なSDGs展開を見据えた上で検討してはいかがだろうか。

 

❺報告とコミュニケーションを行う

 

最後に報告とコミュニケーションについて説明をしよう。

 

コミュニケーションの方法としては、コーポレートサイトでの発信やサステナビリティリポート発行などがある。自社でどんなに素晴らしいSDGs活動を行っていても、ステークホルダーから評価されなければ「SDGsで企業価値を向上させた企業」とは言えないからだ。

 

ここでは、自社のSDGsが社会にどれだけのインパクトを与えているのか伝えることが目的となる。そのためには、誰が見ても判断できるように、可能な限り数値目標を設定し、目標に対して結果はどうだったのか、今後どうしていくのかをPDCAサイクルを回しながら設計する必要がある。

 

まずは社内で、重点テーマと数値計画、部門別アクションプランをまとめた小冊子を作成し、社内への発信と浸透を進めてはいかがだろうか。

 

SDGsをこれから進めていく企業、すでにSDGs17ゴール・169ターゲットにひも付けを行っている企業など進捗は各社まちまちだが、まずは本稿のステップを参考にSDGs実装を進めてもらい、「差別化」につながるSDGsの展開につなげることを期待している。

 

 

※1…GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)、国連グローバル・コンパクト、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が開発した指針。3度にわたる協議期間において世界中の企業、政府機関、教育研究機関、市民社会組織から提供されたフィードバックを盛り込んでいる
※2…SDGsに取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないビジネスを揶揄(やゆ)する言葉
※3…社会的影響力

 

 

 

 

 

Profile
中野 翔太Shota Nakano
2019年タナベ経営入社。2021年よりSDGsビジネスモデル研究会サブリーダー。SDGsを軸とした戦略構築から実装のための教育を得意とする。「ステークホルダーがワクワクしないSDGsは展開しない」を信条に、企業価値向上に数多く貢献している。また、建設業・製造業を中心とした人材育成体系の構築や人事制度アドバイザリーなどHR分野のコンサルティングにも定評があり、幅広く活躍している。
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