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マネジメントDX

海外では「ビジネスの成果に貢献する付加価値部門」と位置付けられるバックオフィス部門。だが、日本では「下支え部門」という認識が根強く残るのが現状だ。バックオフィス業務の無駄を洗い出し、最新のデジタル技術によって改善を施すためのシステム再構築メソッドを提言する。
コラム2022.02.01

バックオフィスのデジタル化に見るDX実現の突破口:江藤 ジョナタン

 

【図表】業務プロセスの「改善」と「改革」の対象関係

出所:松尾順著『DXに必須 プロセスマイニング活用入門』
(白桃書房)よりタナベ経営作成

 

 

DX実現には自社の現状分析と最適な業務の再設計が重要

 

昨今、DXを目標に掲げる企業が多いが、本来のDXに至るまでの道のりは決して容易ではない。本来のDXとは、企業のビジネスプロセス全般の変革を指す用語であり、全社横断的、かつ自社の特徴を踏まえたプロセスの再設計が求められる。

 

【図表】は、ビジネスプロセスの改革と改善の関係性を示したものである。DXは、【図表】右上のバリューチェーンやプロセス全体にまたがるデジタルツールの導入・設計部分に位置付けることができ、より複数の部署・工程を内包した改革と言える。

 

DXは手段であり、目的ではない。DX実現に求められる企業能力は、目標設定力や構想力である。自社の現状分析から始め、価値判断基準に基づいて業務を最適化しなければならない。

 

だが、いきなり大規模なDXプロジェクトを立ち上げることは、経験のない企業にとって難しいだろう。本稿では、「DX入門」として、バックオフィス部門におけるデジタル化の有用性をお伝えしたい。

 

 

「DX入門」としてのバックオフィス部門のデジタル化

 

ここからは、SaaS(Software as a Service)の活用によるバックオフィス部門のデジタル変革に焦点を絞り、改善コンセプトと対象業務のデジタル化によって受けるメリットについて、事例を基に紹介していく。

 

バックオフィスとは、一般的に総務・経理担当が行う業務領域を指す言葉であり、デジタル化と相性の良い部門とも言われている。バックオフィス部門は定型業務が多く、改善コンセプトの決定や運用プロセスの設計が行いやすいからだ。加えて、SaaSの隆盛がある。SaaSは、インターネットを経由してソフトウエア機能を提供するサービスだ。サーバーの構築やハードウエアの制約を受けないため、導入ハードルが低いのが特長である。代表的なサービスを3つ紹介したい。

 

❶楽楽精算

 

ラクスが提供するクラウド型の経費精算サービス。経費申請業務をウェブ上で完結でき、経費計算や承認業務をデジタル化できる。

 

❷BtoBプラットフォーム契約書

 

インフォマートが提供するクラウド型の契約サービス。紙面での取り交わしが通例であった契約書の発行から受領・締結までをデジタルで完結できる。

 

❸freee

 

freeeが提供するクラウド型のERPサービス。経理の一元化、月次決算業務の早期化からワークフローのペーパーレス化など、幅広い業務を一元管理できる。また、他サービスとの連携機能も豊富で、社内情報の統合管理も実現可能。

 

 

バックオフィス部門の業務課題と改善案

 

バックオフィス部門のよくある課題と、SaaS導入による課題解決事例を業務種類ごとに紹介する。

 

1つ目の経費精算業務は、バックオフィス部門でデジタル化が最も進んでいる業務領域だ。ここでのデジタル化前の課題は、「旅費精算を紙で行うため作成・管理にコストがかかる」「記入の不備が頻発して確認に時間がかかる」「承認工程が多い」の3つである。

 

デジタル導入のポイントは、①経費申請業務の簡易化、②保管書類の削減、③総務・経理部門の形式的作業量の削減、④承認業務の効率化の4つ。前述の課題に対しては、SaaSを導入することで、①経費申請業務のデジタル化、②形式チェックの自動化、③承認フローのデジタル化を実現できる。

 

2つ目の契約業務は、デジタル化が徐々に浸透している業務領域である。デジタル化前の課題は、「紙管理による紛失のリスクや契約書の保管スペースの圧迫」「契約書の作成や送付作業」「紙面と実印が必要なため決裁者の場所と時間が縛られ、柔軟な働き方ができない」の3つだ。

 

契約業務にSaaSを導入した場合、期待できる効果は、①契約情報のリスク管理強化、②契約書類の省スペース化(電子帳簿保存法への対応)、③紙面作成・送付作業工程の省略、④契約書の作成・確認業務の柔軟化(リモートワークでも対応可能など)である。

 

また、DXを体現するデジタルツールとしてERP(Enterprise Resource Planning)が注目を集めている。ERPとは、「経営資源を最適に配置し、効率経営を推進するシステム」である。ERP導入を検討している企業の中には、複数のシステムが乱立しており情報の二重管理・非連動が起きている、経営判断資料(月次決算書など)の作成が遅い、蓄積されているものの活用されていない情報がある、といった課題を持つ企業が多い。

 

ERPの導入でデジタル化される業務は、大枠で捉えると「経営判断システムのデジタル管理化」と位置付けることができる。業務レベルでは、データ集計のデジタル化やデータ加工の自動化、蓄積情報の活用プロセス設計などが挙げられる。

 

ERP導入のポイントは、①情報管理・連結を明確・単純化し、管理業務を軽減する、②形式的なデータ加工業務を削減する、③これまで可視化できなかったビジネスチャンスの拡大・リスク回避を経営判断に組み込む、の3つである。

 

特に③は、経営方針やビジネスモデルに基づいて、自社の強み・弱みの予測につながる情報を組み込むことで真価を発揮する。全社横断的なDXの好例である。

 

DXやIT化といった言葉は、バズワードとして世間で取り上げられる機会が増えた一方、導入に向けたポイントや導入の重要性を理解するための情報は不足しがちだ。本稿で示した例が、読者の皆さまの会社のデジタル化を加速させるための一助となれば幸いである。

 

 

 

 

 

Profile
江藤 ジョナタン
タナベ経営 ファンクションコンサルティング東京本部/データ分析、ビジネスプロセスの可視化から業務効率化・現場改改善など幅広い知見を基に顧客を支援。また、人事や事業戦略領域など幅広いテーマのプロジェクトに携わり、専門性に捉われない価値提供を得意とする。直近の研究テーマはナレッジマネジメント、SDGs。
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