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【特集】

経営をつなぐM&A

買収によって新規事業を始める際に必要となる時間を短縮できることから、「時間を買う戦略」とも言われるM&A(企業の合併・買収)。アフターコロナを見据えた経営戦略・事業戦略に基づいた、「買って終わり」「売って終わり」にしないM&A 戦略の設計メソッドを提言する。
コラム2021.12.01

M&Aによる企業成長をサポートするFAの役割:文岩 繁紀

 

 

【図表】M&A仲介業者とFAの違い

出所:タナベ経営作成

 

 

M&A戦略の立案からクロージングまで包括的に担当

 

中小企業庁の「2021年版 中小企業白書」(2021年7月)によると、買い手としてのM&A実施意向のある企業にM&Aを検討したきっかけや目的について調査したところ、「売上・市場シェアの拡大」と回答した企業が最も高く(73.7%)、次いで「新事業展開・異業種への参入」(49.1%)となったという。このように、コロナ禍で経済の不確実性が増す中、他社の経営資源を活用して自社の企業規模拡大や事業多角化を目指すためにM&Aを検討する企業が増えている。

 

だが、M&Aを検討しようにも、M&Aに関する専門知識を持つ人材が社内にいない場合が大半であり、ファイナンシャル・アドバイザー(以降、FA)やM&A仲介業者といった専門家の助言がM&Aを進める上で必須と言える。

 

FAとは、M&Aに関連するアドバイスと契約成立までを取りまとめる者を指す。売り手・買い手企業の間にM&A仲介業者が着任し、中立的な立場で助言を行う「仲介方式」に対し、タナベ経営では、売り手・買い手企業それぞれに「M&Aアドバイザリー」が着任し、それぞれの立場で助言を行う「アドバイザリー形式」を採用し、特に買い手側企業のアドバイザーとしてM&Aを支援している。(【図表】)

 

M&A仲介業者が双方のバランスを重視するのに対し、FAはそれぞれの契約する会社の利益の最大化を重視する。自社の意向を最大限に反映してくれるため、有利に交渉を進めることができる。FAにM&A戦略の立案からクロージングまでを包括的に担当してもらうことで、M&Aの成果を最大化することが可能となるのだ。

 

 

利益の最大化と法的リスク回避の徹底

 

売り手・買い手両社から見たFAの役割・業務を紹介する。

 

1.情報整理

 

買い手企業の場合、売り手企業の実態調査や開示可能情報の取得など、持ち込まれた案件の情報精査を行う。情報の取得段階では、ノンネームシートと秘密保持締結後の企業概要書(社名や決算申告情報が分かる資料)が一般的だ。売り手企業の場合、買い手企業候補を選定するためのノンネームシート・企業概要書の作成などを行う。買い手企業に見つけてもらうための企業プロフィールを作成するイメージである。

 

2.対象企業の選定

 

買い手企業の場合、売り手企業の情報を取得し、理念・戦略など書面上で分かる範囲の情報を基に買収を実施するかを判断する。判断に必要な情報は、質問事項として売り手企業に聞く場合もある。売り手企業の場合、ネームクリア(ノンネームで打診した譲渡対象となる企業名を買い手候補企業に開示すること)を行う。「自社を生かしてくれる企業であるか」を検討することが重要だ。

 

また、企業情報を開示する段階で、「どのような会社とパートナーを組むとシナジーが見込めるか」を事前に擦り合わせることで、交渉を円滑に進めることができる。一般的に、事業シナジーは買い手企業が検討する部分だが、売り手企業にも事前にM&A戦略を共有することで、より良いパートナーを選定することができる。

 

3.交渉

 

両社のFAで交渉を進めていく。交渉段階においては、質問、面談時間(トップ面談)、定性・定量条件を設定しておくことが重要である。事前に自社で譲れないポイントを明確にすることで、交渉がスムーズになるからである。両社にとって条件が完璧なM&A案件は限りなく少ない。交渉段階でさまざまな条件を交渉段階で決定していくケースが多いため、妥協できる部分とできない部分を明確に分け、案件を進めるか否かの判断を行うことが重要である。

 

買い手企業は売り手企業に意向表明(条件表)を提出することになるので、買い手企業はFAと相談して意向表明の内容を作成し、売り手企業は提出された意向表明の内容をもとにFAと相談しながら進めていく。

 

4.デューデリジェンス(DD)

 

DDとは、企業の実態調査のことである。買い手企業が売り手企業を調査し、これまでに提出された情報に相違がないかを確認する。調査されることを不満に感じる売り手企業も少なくないが、虚偽の回答や曖昧な返答をする方が売り手企業にとって不利になるため、買い手企業が希望する資料の提出と質問に対する回答を行うことが重要である。

 

5.最終契約締結

 

全てのステップが終了し、両者の合意が取れると最終契約書の調印・引き渡しとなる。FAから最終契約書ならびに重要書類についてのアドバイスを行う。法的な手続きも存在するため、自社の弁護士・司法書士への契約内容の確認も行う。

 

 

幅広い視野でアドバイザーを検討する

 

アドバイザーを選定する際は、買い手企業の場合、自社が求めている案件を持っているアドバイザーとの契約をお勧めしている。また、アドバイザー会社を1社に絞り込まないことも重要である。

 

売り手企業の場合、M&Aにかかる費用で見るのではなく、より信頼できるパートナーと契約していただきたい。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「【M&A実態調査】ポストコロナ時代を見据えたM&A戦略とは」(2021年2月)にも、FAを選定する際に重視する点として、「実際に担当するディールヘッド(アドバイザー)の経験・力量」と回答した企業が最も多いとある。また、M&Aの実施件数が多い企業ほど、前述の理由を重視する傾向にある。

 

売り手・買い手企業にとって、M&Aは企業の存続を分ける重大なターニングポイントである。M&Aの実施から契約までの期間も約半年から1年を有するため、自社のM&Aを任せることができる人材と二人三脚で取り組んでいくことが、M&A成功の大きなポイントになるだろう。

 

M&Aアライアンス

「TCB(チームコンサルティングブランド)」とは、専門分野のスペシャリストからなる顧客最適のチームを編成し、迅速かつ的確な解決策の提案を可能とする、タナベ経営独自のコンサルティングメニューです。

 

Profile
文岩 繁紀Shigeki Humiiwa
タナベ経営に新卒入社後、主に東日本エリアにて金融機関等と連携し、地域企業の後継者を育成するセミナーや取引先企業が抱える経営課題解決に向けタナベ経営のコンサルティングソリューションをマッチングするアライアンス事業を推進。2017年よりM&A部門の事業化、仕組みづくり、商品開発、実績づくりを行う。M&Aを事業化後最初の案件を手掛け、3年間での支援社数は10社以上。
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