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【特集】

経営をつなぐM&A

買収によって新規事業を始める際に必要となる時間を短縮できることから、「時間を買う戦略」とも言われるM&A(企業の合併・買収)。アフターコロナを見据えた経営戦略・事業戦略に基づいた、「買って終わり」「売って終わり」にしないM&A 戦略の設計メソッドを提言する。
コラム2021.12.01

ターゲットM&Aを用いた中長期ビジョン実現のポイント:小野 樹

 

【図表1】M&Aを用いた成長戦略の流れ

出所:タナベ経営作成

 

 

M&A戦略は中長期ビジョンの明確化から始める

 

タナベ経営が推奨するM&A戦略とは、自社の中長期ビジョンを実現するために、企業買収の目的と具体的な買収候補先企業を明確にし、幅広くM&A情報を取り扱う会社へ依頼すると同時に積極的にターゲットM&Aを行うことである。

 

ターゲットM&Aとは、事前に「どの分野の企業・事業を買収するのか」というM&Aの目的を設定(ターゲティング)するM&A手法の1つだ。ターゲットを明確にすることで、より良い買収候補先企業に効率よくアプローチできる。

 

自社の現状の経営資源を前提に中長期ビジョンを組み立てようとすると、「現事業の延長線上で何ができるか」という思考になりがちだ。だが、M&A戦略も含めて考えると、「現状の経営資源という制約条件を外し、自社が中長期的にどうありたいか」という思考で組み立てることができる。

 

中長期ビジョンを明確にすることで、ビジョン実現のためにどのような経営資源が必要で、そのうち外部企業から何を調達すべきか(M&Aの目的)が分かるため、M&A戦略の策定において、中長期ビジョンの明確化は重要な工程となる。(【図表1】)

 

ここがはっきりしなければ、M&A戦略が成功したのかどうかさえ分からなくなる。

 

 

ターゲットM&Aに向けたリストの作成ポイント

 

自社の中長期ビジョンとM&Aの目的を明確にした後は、買収候補先の企業を具体化していく。

 

まず、候補先の大まかな基準を設定したロングリスト(絞り込む前段階の買収候補先企業リスト)を作成する。大まかな基準とは、事業(取扱商材・サービス)、地域、売上規模などである。この時点では買収の実現可能性は考慮せず、対象範囲の企業を広く列挙していく。

 

次に、作成したロングリストから、産業分野や事業内容、販売チャネル、地域シェア、製品ブランド力、技術力、株主構成、財務状況などを基準にスクリーニング(ふるい分け)し、候補先を絞り込んでいく(ショートリストの作成)。その際、【図表2】のようにマトリクス図で分類し、カテゴリーごとにアプローチ手法を整理することも効果的である。

 

 

【図表2】買収候補先企業の優先度マトリクス

出所:タナベ経営作成

 

 

相手企業の状況に合わせて提案方法を変える

 

具体的に買収候補先企業を選出した後は、買収に向けたアプローチを仕掛けていく。“仕掛け”と言うと物騒に聞こえるかもしれないが、敵対的買収というニュアンスではなく、「自社と相手企業の成長・発展戦略を提案する」という意味合いである。

 

買収候補先企業への提案については、相手企業の状況によって接触、提案の仕方が異なる。例えば、後継者不在による事業存続の危機や従業員の雇用維持などを解決する「後継者不在型」、財務状況が芳しくない企業が経営の安定化を図る「企業再生型」、地域・業界で生き残るための「再編型」、業界のトップシェアを獲得するべく経営統合や合併を行う「合理的M&A」などが挙げられる。

 

このように、買収候補先企業の状況に応じて、自社と提携することで得られるシナジー(相乗効果)を伝えた上で提案を行う。提案方法については、直接的な提案も本気度を示す意味では有効だが、自社の素性を知られずに相手にアプローチしたい場合もあるだろう。その際は、相手先の取引金融機関やM&A仲介会社、コンサルティング会社など外部の専門家を活用し、ノンネームで打診を行うことをお勧めする。

 

M&A戦略によって、自社の中長期ビジョンを高い確率で実現させることができる。だが、M&Aのマーケットは、基本的に売却側に有利な“売り手市場”の構造となっており、買収側は少ないチャンスで確実に成功させなければならない。外部協力者の持ち込み案件だけでは、自社のビジョン実現の確度は高まらない。

 

しっかりとした中長期ビジョン戦略を立て、買収候補先企業をアウトプットすることで、ターゲットM&Aや持ち込み案件の適切な検討が可能となる。自社の持続的な成長発展を目指すためにも、ぜひともM&A戦略を取り入れていただきたい。

 

 

※特定されない範囲で自社の情報を開示すること

 

M&Aアライアンス

「TCB(チームコンサルティングブランド)」とは、専門分野のスペシャリストからなる顧客最適のチームを編成し、迅速かつ的確な解決策の提案を可能とする、タナベ経営独自のコンサルティングメニューです。

Profile
小野 樹Tatsuki Ono
タナベ経営に新卒入社後、金融機関や会計事務所とパートナーシップを築き、後継者を育成する企画や取引先企業が抱える経営課題とタナベ経営のコンサルティングソリューションをマッチングするアライアンス事業を推進。2017年よりM&A部門の事業化、仕組みづくり、商品開発、実績づくりを行う。
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