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【特集】

経営をつなぐM&A

買収によって新規事業を始める際に必要となる時間を短縮できることから、「時間を買う戦略」とも言われるM&A(企業の合併・買収)。アフターコロナを見据えた経営戦略・事業戦略に基づいた、「買って終わり」「売って終わり」にしないM&A 戦略の設計メソッドを提言する。
コラム2021.12.01

事業戦略とM&Aをリンクさせよう:M&Aコンサルティング本部

M&A戦略策定のポイント

 

事業戦略とM&Aをリンクさせる戦略を取り入れたB社のコンサルティング事例を紹介したい。

 

B社は雑貨(小売)と食品(卸)の2大事業を主軸として成長してきた企業である。年商は80億円、従業員は60名だ。

 

B社でM&A戦略を構築するに当たって、次の3点を重視した。

 

1.M&Aの目的を明確化

 

長期ビジョンから事業戦略・M&A戦略へ展開する。

 

2.どのような戦略が必要か

 

オーガニックグロースとノンオーガニックグロースを組み合わせる。オーガニックグロース(Organic growth)とは、企業がその内部資源によって成長する戦略を指す。既存の人材、商品やサービス、技術やノウハウ、資金を生かして収益を増大させる成長戦略である。一方、ノンオーガニックグロースはその対義語で、企業の合併や買収によって新しい事業や製品、サービスを取り込んで収益を伸ばす戦略である。

 

全てを自力開発、または全てをM&Aで、という考え方は短絡的である。狙う事業領域と持てる経営資源の組み合わせによって、事業の伸ばし方は多様であり、M&A戦略はその手法の1つである。

 

3.次の事業の柱の構築に着手できるか

 

実行フェーズはスピードをもって推進する。B社は今後の事業のビジョンの具体化に早期に着手するため、事業構築の実行フェーズに重きを置くことを重視した。

 

この3点に加え、外部環境の変化への対応も欠かせない。既存事業を継続しつつも、10年、20年先を見据えた新しい事業の柱づくりへの注力が重要である。

 

次に、事業戦略とM&Aをリンクさせる戦略の構築に当たって、B社の事業内容や外部環境、同業他社が狙う新たな事業の将来像を明確にする必要があった。

 

外部環境に関して、B社の位置するエリアの人口増減率は、2020年にマイナスへ突入しており、人口は減少傾向で、母数が減ってきている(少子高齢化についても同時に進行)。同地域の年齢構成はつぼ型であり、生産年齢人口が多いが、同時に高齢者も増加しており、ターゲット層の絞り込みが必要であった。

 

また、同業他社が狙う新たな事業の将来像に関して分析すると、同業他社は事業構造の変化を捉え、現在の基盤事業から成長事業への投資へシフトしていた。つまり、現在の商材の販売から新規格の商材を提供する企業への転換を目指していた。

 

こうした調査・分析の結果、B社には既存事業を生かしたM&A戦略を提案した。

 

 

 

新規事業戦略とM&Aをバランスよく構築

 

タナベ経営からB社へ提案した内容は次の通りである。

 

1.ビジネスモデル案

 

小売既存顧客に対して、自社で企画・開発した食品を製造・販売するモデル「食品M&Aコングロマリットモデル」を提案した。

 

食品製造機能は、関東圏を中心としたメーカーをM&Aすることにより得ることを想定している。商品製造力(生産機械)はあるが、商品企画・販売力の弱い企業をターゲットとする。商品カテゴリ増加のため、複数企業のM&Aも視野に入れている。

 

2.参入する新規事業のミッション

 

新規事業立ち上げ・参画の目的を明確にした。具体的には、どのようなミッション(目的)のためにターゲットとする新規事業を行うか、将来性、対内的メリット、社会的意義などだ。

 

B社の場合、中長期的ミッション(目的)は、「“人々の暮らしを豊かにする”フード&ドリンクメーカーになる」である。食品・飲料メーカーをM&Aし、専門食品を開発・自社チャネルで販売する。

 

短期的ミッション(目的)は、「小売利用者に喜んでもらえる新たな商品を開発し、販売する」「食品メーカー機能を強化し、食品事業の収益を増加させる」「顧客が喜ぶサービスにより、ES(従業員満足度)を高める」である。

 

3.ビジネスモデルイメージ

 

商品カテゴリ増加のため、飲料メーカー、食品メーカーなどの複数企業のM&Aを狙う。自社生産・販売が安定したら、外販を狙うイメージである。(【図表】)

 

 

【図表】B社のビジネスモデルイメージ

出所:タナベ経営作成

 

 

 

既存事業や外部環境、ライバル社の分析を行うことにより、M&Aを行うべきターゲット企業の条件が明確になった。この条件をもとに、今後の戦略の構築が図れたのだ。

 

また、B社の現状の長期ビジョン・事業戦略を前提に、M&A対象企業との事業関連性やシナジーなどを見極め、戦略から外れた買収でないことを社内外に示すことができた。

 

売り案件のソーシングを迅速に実施するために、対象会社を明確化することが必要である。ここでいうソーシングとは、自社の希望の条件に合う候補企業を見つけ、交渉を進めて行くプロセスのことである。

 

売り案件と出合う確率をできる限り上げるためには、自社から対象会社へ買収を仕掛けていくことも必要である。たまたま売り案件が出てくる場合もあるが、どのような会社を狙うのかを絞り込んでおく作業が、早期に交渉フェーズへ移行するポイントになる。

 

 

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