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【特集】

経営をつなぐM&A

買収によって新規事業を始める際に必要となる時間を短縮できることから、「時間を買う戦略」とも言われるM&A(企業の合併・買収)。アフターコロナを見据えた経営戦略・事業戦略に基づいた、「買って終わり」「売って終わり」にしないM&A 戦略の設計メソッドを提言する。
コラム2021.12.01

経営をつなぐ唯一無二のM&Aコンサルティングモデル:南川 典大

M&Aによる選択と集中がアフターコロナの競争力を左右する

 

一昔前まで、M&Aは「大手や特別な会社が行うもの」と認識され、テレビドラマなどの影響でダーティーなイメージもあった。しかしながら、M&A情報データベース構築・提供を手掛けるレコフデータによると、2021年1~6月のM&A件数は2128件と過去最高を記録※1。アフターコロナをにらんだ選択と集中に向け、M&AはDX(デジタルトランスフォーメーション)とともに不可欠な経営技術となっている。M&Aが急増している要因として、次の2つが挙げられる。

 

1.大廃業時代にM&Aで経営をつなぐ

 

1つ目は中小企業の事業承継問題である。中小企業庁によると、2025年までに70歳を超える中小企業経営者は245万人に達し、うち約半数の127万人(日本企業全体の3分の1)が後継者未定という。このままだと約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があると試算されている※2

 

後継者未定127万社のうち、半数の60万社は黒字企業だそうだ。M&Aを実施すれば、オーナーが代わってもこれらの企業の技術、社員、歴史を引き継げる。こうした背景からも第三者承継のニーズの高さは顕在化しており、次代へ経営をつなぐM&Aは、今や社会的価値の高い事業と言える。

 

2.事業ポートフォリオの再編にM&Aを活用

 

2つ目は、アフターコロナに向けた事業ポートフォリオの組み替えだ。伊藤忠商事がファミリーマートをTOB(株式公開買い付け)したようなコーポレートガバナンス重視による再編、ニトリホールディングスによる同業の島忠買収に見られる業界内再編のほか、デジタル化や脱炭素社会への対応に向けた経営資源の集中化に伴う非コア事業・不採算部門の売却も増加している。

 

2021年7月、タナベコンサルティンググループ(TCG)は年商3000億円以下の上場企業に対し、「アフターコロナに向けた企業経営アンケート」を実施した。それによると、6割の企業がコロナショックにより「中長期経営計画の見直し」を実施、もしくは検討している(【図表1】)。また、「今後の中長期経営計画の見直しの重要テーマ」は「ESG、SDGsへの取り組み」「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの見直し」と続く。

 

 

【図表1】中長期ビジョン・中期経営計画の見直し・修正

出所:タナベ経営作成

 

 

 

M&Aについては85%以上の企業が「すでに実施、現在交渉中」と回答している(【図表2】)。その目的は「エリア拡大、業態拡大、多角化に伴う事業譲渡」が最も多く、事業ポートフォリオの再編にM&Aを活用していることが分かる。

 

 

【図表2】M&Aの実績および今後の予定

出所:タナベ経営作成

 

※1…レコフデータM&A情報・データサイト「マールオンライン」(2021年7月5日)

※2…中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」(2017年9月)

 

 

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Profile
南川 典大Norihito Minamikawa
1993年タナベ経営入社。西部本部長、取締役、常務取締役を経て2021年より現職。中長期ビジョンや事業戦略、再生戦略の策定、ブランディングなど、数百社のコンサルティング・教育に従事。2017年よりM&A、金融機関コンサルティング・アライアンス事業の立ち上げに注力し、主導。加えて、現在は東京本社エリアおよびドメインコンサルティング戦略の推進を指揮している。著書に『問題解決の5S』(ダイヤモンド社)ほか。
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