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【特集】

未来戦略

未来の不確実性が高まる中、企業には、外部環境を精緻に分析・予測することよりも、自社の意志でどのような未来を切り開くのかを明確に示すことが求められている。「前期の踏襲」をやめ、成長の限界を突破するための長期ビジョン・中期経営計画構築メソッドを提言する。
コラム2021.09.01

SDGsを中長期ビジョンに実装するメリット:ドメインコンサルティング東京本部

 

【図表1】SDGs実施のための主要5原則

出所:SDGs推進本部「SDGs実施指針改定版」(2019年12月)よりタナベ経営が作成

 

 

SDGs、3つのメリット

 

「SDGs」という言葉がさまざまなメディアで取り上げられている。あのカラフルで印象的なロゴマークを見かけない日はない。

 

SDGsとは、2015年の国際連合総会で全加盟国(193カ国)が合意した「2030年までに世界規模で目指すべき持続可能な開発目標」である。国連総会での採択後、各国が自国の現状を踏まえた上で、SDGsの達成に向けて具体的な指針を発信している。

 

日本は2016年12月に「SDGs実施指針」を決定し、ビジョンとして「持続可能で強靭、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の総合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」を掲げた。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を前提に、課題解決先進国として、持続可能な経済・社会・環境づくりに向けた取り組みの実績を世界に発信しつつ、2030年までの目標達成を目指している。

 

また、日本はSDGs実施指針の中で、実施のための主要5原則を設けている(【図表1】)。企業および個人としても、SDGsの取り組みを検討する際は考慮する必要がある。

 

ここまでSDGsが話題になるのは、これまでの類似する取り組みと異なり、政府・民間・自治体、そして各個人に至るまでの全ての活動を対象としている点が大きい。SDGsが世界の共通言語となったいま、企業にとって無視できない価値観になったことをあらためて認識する必要がある。

 

企業がSDGsに取り組むメリットはさまざまあるが、本稿では中長期ビジョンと絡めて3つ紹介したい。

 

①市場の魅力度が高い

 

1つ目は、市場の魅力度が高いことだ。ビジネスと持続可能な開発委員会が2017年に発表したリポート「よりよきビジネスよりよき世界(Better Business Better World)」によると、「SDGs達成によって約12兆ドル(約1340兆円)の市場機会が創出される」とされており、大きなビジネスチャンスが潜んでいることが分かる。

 

②競争優位の向上につながる

 

2つ目は、SDGsを企業経営に実装することで自社の競争優位を高めることができる点だ。現代社会の多くは、「社会性を得るために収益を失う」「利便性・快適性を追求すると温暖化ガスを大量に排出してしまう」など、何かを得るために何かが失われる「トレードオフ」の関係になっている。これを「トレードオン」に変える仕組みや技術を開発できれば、自社の希少価値は一気に高まる。例えば、米アップルは製品を100%循環利用する「Apple to Apple」を目指している。原材料の高騰や調達が困難な時代になっても、変わらず事業を継続できる取り組みである。

 

③人材採用に直結する

 

3つ目は人材採用だ。人口減少トレンドにある日本では、今後さらに人材採用が難しくなる。昨今、「SDGsに向けた取り組みをしているか」を企業選びの軸とする求職者は少なくない。実際、多くのクライアント企業から、特に若年層の求職者から「御社はどのようなSDGsに関連する取り組みをされていますか?」という質問を受けると聞く。自社の持続可能性を高めるためにも、SDGsは欠かせないものになっている。

 

 

 

【図表2】SDGs実施のための5ステップ

出所:GRI、国連グローバル・コンパクト、WBCSD「SDG Compass(SDGsの企業行動指針)」を基にタナベ経営が作成

 

 

企業経営・中長期ビジョンとSDGs

 

中長期ビジョンにSDGsを実装する際、SDGsを機会と捉えて能動的に検討するか、「外圧や規制に対処するため」と受け身に捉えるかによって、そのビジョンの持つ意味合いが大きく異なる。小売・フィンテック事業を手掛ける丸井グループは、「2050年にありたい姿」を軸に検討し、「ビジネスを通じてあらゆる二頂対立を乗り越える世界を創る」という壮大な2050年ビジョンを描いている。

 

現時点では、3~5年(中期)でSDGsに関連した目標を立てている企業が約4割と多いが、今後はより長期の視点で計画する企業が増えるだろう。これは、SDGsと長期ビジョンの親和性が高いからである。

 

理由は3点。まず、SDGsが、簡単に変わることのない世界規模の社会課題解決を目標としている点である。17のゴールは経済・社会・環境を総合的に捉え、世界のあるべき姿として描かれたものだ。企業の持続的成長を描くに当たり、持続可能な世界になっていることは前提条件であり、必然的に組み込まれることになるだろう。

 

次にSDGsが2030年をゴールとした定量的な国際目標であることが挙げられる。SDGsは、17のゴール・169のターゲット・232の指標に細分化されている。長期ビジョンの策定には、定性的な目標はもちろんのこと、定量的な目標を掲げることも重要な要素だ。その際、SDGsの指標は目標設定の目安になる。

 

最後は、先述した競争優位を実現するためには、事業・サービス・製品・技術などの開発および社会への実装が必要であり、それには時間を要するため、おのずと長期ビジョンとの親和性も高くなる点だ。

 

SDGsを長期ビジョンに実装するに当たっては、SDGsの導入メソッドである「SDG Compass(SDGsの企業行動指針)」の5つのステップを踏むのが一般的である(【図表2】)。ステップ1~3を重点的に実施し、ステップ2、3の際に自社の経営理念や長期ビジョンの視点と併せて検討することで、長期ビジョンにSDGsをうまく組み込むことができる。SDGs推進企業の約8割がこのステップで設計を行っているため、SDGsを長期ビジョンに取り入れる際にはぜひ参考にしていただきたい。

 

 

 

 

ビジネスモデルイノベーション研究会

タナベ経営の研究会とは、同じ顧客課題の解決に取り組む仲間とともに、視察先企業や最新の企業事例を通じて、ビジネスモデルやマネジメント手法を研究するプラットホームです。

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