TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【特集】

未来戦略

未来の不確実性が高まる中、企業には、外部環境を精緻に分析・予測することよりも、自社の意志でどのような未来を切り開くのかを明確に示すことが求められている。「前期の踏襲」をやめ、成長の限界を突破するための長期ビジョン・中期経営計画構築メソッドを提言する。
コラム2021.09.01

企業変革を実現するための中長期ビジョンロードマップ:森田 裕介

中長期ビジョン構築の4つのスタイル

 

タナベ経営がクライアントと共に中長期ビジョンを構築する際、そのコンサルティングスタイルは大きく4つに分類される(【図表1】)。クライアントの業績や経営課題の優先度、また人材育成状況に応じ、経営者と相談の上、決定することがほとんどである。

 

 

【図表1】中長期ビジョン構築のコンサルティングスタイル

出所:タナベ経営作成

 

 

アフターコロナの環境下では、どの産業もスピードを持った改革が求められるため、直近では「I.チームコンサルティング主体の社内プロジェクト型」「II.社内プロジェクト主体のジュニアボード※型」が多く選ばれている。

 

中長期ビジョン構築に当たっては、タナベ経営とクライアントの双方でプロジェクトチームを組成し、共同で取り組んでいく。タナベ経営のコンサルティングの特徴は、高度な専門性を総合的に発揮するチームコンサルティングにあり、このプロジェクトではそれが遺憾なく発揮される。

 

中長期ビジョン構築の最終アウトプットはロードマップである。タナベ経営主導のコンサルティングの場合、最終的にコンサルティングレポートとして作成。内容は、経営理念から始まり、経営トップのメッセージ、ビジョン・経営計画のサマリー、数値計画、戦略と続く。(【図表2】)

 

 

【図表2】中長期ビジョンのロードマップ目次

出所:タナベ経営作成

 

 

ロードマップは会社、また策定メンバーの未来に向けた意思である。ゆえに、まずは全社員への浸透を最優先することが望ましい。その前提で、ロードマップは会社によって複数枚で構成する、1枚にまとめる、冊子にするといった形式を決める。見せ方により社員への伝わり方が変わるため、出来栄えにもこだわりたいところだ。

 

 

※米国で始まった制度であり、若い中堅幹部・社員を青年役員として任命し、彼らに経営全般やビジョンなどについて、役員と同じように課題を討議させ、意思決定された内容を役員会に意見具申する。次世代経営体制の構築に極めて高い効果を発揮する

 

 

事例から見る中長期ビジョン構築と推進

 

次に、実際にタナベ経営が中長期ビジョン構築をコンサルティング支援した事例を2社紹介する。

 

【A社】ヘルスケア関連企業で年商100億円、従業員150名。社長の息子への事業承継を控えているが、後継者を含めた次世代幹部への教育が未着手。【B社】建設関連企業で年商80億円、従業員100名。オーナー経営であるが、後継者が不在であり、事業承継手段も決定していない。

 

A社、B社ともに中堅企業であり、事業承継の課題を抱えている。いずれもタナベ経営と共に中長期ビジョン構築をスタートさせている。

 

A社は経営者の息子(30歳代)への10年以内の事業承継を予定しており、次世代経営体制へのシフトを考え始めている。しかし、後継者を含めた次世代幹部を人選しておらず、その教育にも未着手であった。

 

そこで、まずは次世代幹部の育成を2016年に開始した。「次世代幹部研修」と名称付け、月1回(終日)、タナベ経営の講義、計数演習、各回テーマに基づくディスカッション形式にて、計7カ月間にわたり基本的なマネジメントや事業を学んだ。

 

毎期人材を入れ替え、2016年から2020年まで実施した結果、今では次世代幹部研修を修了した次世代幹部は約50名。実に全社員の3分の1にのぼる。事業承継が間近となった2021年現在、50名の次世代幹部から10名程度を選抜した上で、ジュニアボードスタイルにて中長期ビジョン構築を推進中である。

 

熾烈な争いではあるが、研修を通じたタナベ経営からの人物評価と社長からの評価を突き合わせ、さらには研修後の現場での活躍を総合的に評価し、10名の選抜に至っている。この研修を通じて次世代幹部のレベルは飛躍的に向上。かつ、現在取り組むジュニアボードでも、5年先、10年先に後継者と共に経営を担う人材が中長期ビジョンを構築しているため、必然的に推進力が高まっていくことは言うまでもない。

 

一方、オーナー経営のB社は、バトンをわたす後継者が不在であり、事業承継への大きな不安を抱えている状況にあった。そこでB社社長は、将来的に資本と経営を分離したホールディングス化を見据え、ホールディング会社はオーナー家、事業会社は社員から経営者を輩出し、経営を任せる方針を2017年に決意した。

 

B社はジュニアボードを組織し、第1期で6カ月にわたり「5カ年中期ビジョン・経営計画」を構築。その後、第2~4期では中期ビジョンを推進するフェーズへ移行している。A社と違い、次世代幹部がすでに人選されておりスキルも高かったが、事業推進力の低さが課題であった。

 

ジュニアボードメンバーは当初11名の次世代幹部で組織し、メンバーの入れ替えもなかったが、事業推進力向上を見据え、メンバーの拡充へかじを切った。「我こそは」と次世代幹部に名乗りを挙げる人材を迎え入れ、現在は約2倍の20名まで増えている。つまり、全社員(100名)のうち5分の1がジュニアボードメンバーということになる。これにより事業推進力も格段に向上。現在はジュニアボードからビジョンボード(現幹部層)へと進化し、推進を継続している。

 

中長期ビジョン構築および推進に成功する企業の特徴は、次の3点に集約される。

 

①理念以外は丸ごと変えるという、強い改革意識がある

 

②トップの思いや志、中長期ビジョンが全社員に浸透している

 

③中長期ビジョン推進に、より多くの人材が関わっている

 

こういった特徴を持つ企業の多くは、結果として計画を前倒しで達成している。2021年は、アフターコロナの新たな環境下、自社の2030年に向けた中長期ビジョンを見直す絶好のタイミングではないだろうか。

 

 

 

中長期ビジョン構築・推進支援コンサルティング

「TCB(チームコンサルティングブランド)」とは、専門分野のスペシャリストからなる顧客最適のチームを編成し、迅速かつ的確な解決策の提案を可能とする、タナベ経営独自のコンサルティングメニューです。

Profile
森田 裕介Yusuke Morita
タナベ経営 ドメインコンサルティング大阪本部 本部長代理。大手アパレルSPA企業を経て、2012年タナベ経営入社。ドメインコンサルティング大阪本部本部長代理兼ライフスタイルビジネス研究会リーダー。消費財関連企業の事業戦略構築、新規事業開発、また小売業の出店戦略、店舗改革を得意とする。理論だけでなく、現場の意見に基づく戦略構築から実行まで、顧客と一体となった実践的なコンサルティングを展開。
未来戦略一覧へコラム一覧へ特集一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo