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【特集】

グループ経営システム

M&Aや分社化などを戦略的に進める企業が増える中、形成した企業グループの経営をどのように進めるかが大きな経営課題となっている。グループシナジーを発揮し、効果的なマネジメントシステムやガバナンスを構築するメソッドを提言する。
コラム2021.08.02

成長を実現するグループ経営におけるCFOの役割
稲岡 真一


2021年8月号

 

 

【図表】CFOに求められる役割

出所:タナベ経営「2021年度経営戦略セミナー」テキストより筆者が加工

 

進化するCFO機能

 

経営管理を統括し、財務の専門知識を駆使して経営戦略の意思決定を支援するCFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)。ホールディングス化する企業が増える中、グループの企業活動全体の最適解を追求するCFO機能の重要性は年々高まっている。

 

CFOとは、経営資源の1つである「カネ」に関わる全てを統括し、企業の財務・経理戦略の立案と実行を担う責任者である。CFOには、戦略実行を推進するパフォーマンスマネジャーと、日常の取引処理を効率的に実行するオペレーションマネジャーという2つの役割がある。だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるデジタル時代の到来を主な背景に、パフォーマンスマネジャーからビジネスパートナー、オペレーションマネジャーからオペレーションデザイナーへと役割の進化が求められている。(【図表】)

 

ビジネスパートナーは、企業価値向上のための戦略立案に参画し、経営資源をコントロールすることが役割である。ここで重要なのは、事業部門最適ではなく、全社最適による経営戦略を重要視し、現在の業績以上に将来の業績を向上させる戦略を構築することだ。

 

オペレーションデザイナーは、全社的なリスクマネジメントを行うこと、また業務改革に向けたルールや仕組みを構築し、コントロールすることが役割である。ここでも重要なのは、現在のリスク以上に将来リスクを全社的視点で統制することだ。

 

 

CFOの7つの役割

 

グループ経営におけるCFOは、全社をコントロールすべく次の7つの役割を担っている。

 

①事業ポートフォリオの最適化

 

複数の事業会社を抱えるグループ経営において、グループ全体の企業価値を最大化するためには、「どの事業にどの程度、経営資源を投資すべきか」を判断していく必要がある。各事業会社の成長性や収益性などを客観的かつ定量的に示すことが重要だ。

 

「成長事業」「安定収益事業」「縮小・撤退検討事業」などの事業分類を行い、中立的な立場・視点から、中長期的なグループとしての企業価値向上のため、経営資源の配分・投資を判断していく。

 

②組織・人事・マネジメント運営

 

事業の多角化や子会社化が進んでグループ企業が増えると、グループとしての価値観の共有やコーポレートガバナンスの強化、経営の効率化など、グループ全体を総括する仕組みが必要になってくる。グループ全体を統一していく「プラットフォーム」をつくることが、CFOの2つ目の役割だ。

 

プラットフォームには、①規程、②業績管理、③人事、④情報システムの4機能が考えられる。グループ全体として統一する部分と、事業会社の状況に応じて臨機応変に対応すべきところを、CFOの視点から提言することが重要な役割となる。

 

③ファイナンス

 

本社機能を持つ会社がグループ全体の資金を一元管理することにより、グループ各社で生じる資金の過不足を調整する。効率的な資金運用を「キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)」という。CMSを導入するメリットには、①借入金や支払利息などのグループ全体のコスト削減、②財務機能の集約化による省人化、③グループ全体の財務指標の改善などが挙げられる。

 

CMSに取り組む上で最も基本的な機能は、プーリング機能である。これは、本社機能を持つ会社に専用口座を設け、資金が余っている子会社から銀行口座に資金を吸い上げ、資金が不足している子会社に分配するという仕組みだ。グループ内金融機関の役割である。

 

④シナジーの発揮・推進

 

シナジーは大きく2つに分けることができる。1つ目は、売上高および限界利益率向上のためのシナジー。2つ目はコストにおけるシナジーであり、各社に共通する機能を集約することで発揮される。グループ企業のCFOは、定量的な数字や業績情報を把握できるポジションであるため、各社では気付きにくいシナジーやアイデアを提案し、推進していくことが可能である。

 

⑤インキュベーション

 

さまざまな事業を展開するグループ企業において、新規事業の立ち上げや不振事業・会社などの撤退を判断・支援する役割はCFOにある。事業リスクを低減し、多角的にグループの成長を図ることは企業成長において有効な手段だ。

 

一方で、経営資源が分散され、経営の効率が阻害されることもある。経営資源である「ヒト・モノ・カネ」をバランス良く配分し、最適化する視点を持つことが重要だ。

 

⑥M&A機能・経営資源調達

 

グループを成長・発展させるには、自ら成長して規模を拡大する方法と、すでに出来上がった会社を買収する方法がある。グループ経営により、M&Aなどの組織再編を行いやすい環境をつくることができる。ここでのCFOの役割は、買収先のデューデリジェンス(投資・買収対象の精査)は当然のこと、その後の経営統合や、買収後のマネジメントによる二次再編に至る可能性を検討することである。

 

⑦グループ総括

 

創業時から受け継がれてきた理念やブランドを軸とした経営を行わなければ、各事業会社がバラバラの方向を向いてしまい、グループとしてのシナジーが生まれなくなる。グループ全体の理念や基本方針を明文化し、それに基づいた価値観を共有すること、また、それに基づいたコーポレートガバナンス体制を構築・強化してグループを総括していくことが、グループ経営におけるCFOの役割である。

 

 

 

 

タナベ経営 ファンクションコンサルティング大阪本部 部長
稲岡 真一(いなおか しんいち)

収益モデルを研究テーマに数多くの企業の業績構造を分析。その中から新しいビジネスモデルに即した収益構造をデザインし、確立することを得意とする。多くの中堅・中小企業の財務戦略構築や推進、指導などに携わり、クライアントの立場に立った真摯な取り組みが高い評価を得ている。

戦略CFO研究会

戦略CFO研究会では、経営者および経理財務や経営企画など戦略立案に携わる実務者が、CFOの職務の全容を体系的に捉え、経営戦略実務で活用できるよう、共に学んでいきます。

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