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【特集】

地域創生ウェルネス

超高齢社会の進行による医療費の高騰、医療・介護リソースのひっ迫、医療制度改革、デジタル技術の進化、コロナ禍に伴う行動変容などを背景に、ヘルスケアやウェルネス分野の現場の課題が複雑化している。新規事業や既存顧客の深掘りで多角化を図る企業の成長戦略に学ぶ。
メソッド2021.06.01

地域企業がヘルスケア市場参入で持続的成長を実現するためには:経営コンサルティング本部

 

 

 

 

大半の業界が成熟期を迎え、既存ビジネスだけでは持続的成長が困難な時代となっている。
特に地域企業では、限られた範囲での成長戦略が求められる。
そうした中で成長市場への参入は有望な選択肢であり、現在の成長市場の筆頭はヘルスケア市場と言える。
この機会に、業界の現状・参入への着眼点を整理し、ヘルスケア市場へ参入を検討する際の参考としていただきたい。

 

 

他業界と大きく異なる「制度対応型業界」という特徴

 

ヘルスケアビジネス=保険内ビジネス+保険外ビジネス

 

ヘルスケア市場は、保険内市場と保険外市場で構成されている。病院をはじめ医療機関、要介護者向けの各種サービスは保険内市場である。一方で、フィットネスジムや健康食品などは保険外市場である。

 

ヘルスケアビジネス=制度対応型ビジネス

 

国民が健康・安心・安全な生活を送るために、社会保障の運用が必要であり、診療報酬改定(2年に1度)といった行政によるコントロールが存在する。保険内ビジネスはこの制度改正の影響を受ける。言い換えれば、変化する制度への迅速な対応が求められる。

 

例えば、医師が個人宅・施設へ訪問する「在宅診療」を行えば、これまでよりも加算(収益増加)、従来通りの通院は減算(収益減少)といったルール改正である。

 

保険内ビジネスのように直接的な影響は受けないが、間接的に保険外ビジネスも制度変更の影響を受ける。他業界と異なり参入障壁が高いと感じる要因は、この制度対応の必要性にある。

 

ヘルスケア分野への新規参入においては、制度変更の影響を直接的に受ける保険内ビジネスは避けるべきである。あるいは成功方程式を有するFC(フランチャイズ)加盟による展開が望まれる。

 

 

ターニングポイントを迎えるヘルスケア業界

 

ご存じの通り、少子高齢化の加速が社会や経済、市場の構造的変革をもたらしている。日本は次の2つの代表的な問題を抱えており、ヘルスケア業界は大きなターニングポイントにある。

 

 

2025年問題

 

日本は高齢化率21%以上の「超高齢社会」だが、2025年には「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、4~5人に1人が後期高齢者という「超・超高齢社会」に突入する。

 

医療や介護の需要が高まり、社会保障の急増が予想される中、次のような対策が求められている。

 

環境激変に適応した新たな社会システムの構築

 

地域包括ケアシステムを完成させ、地域のことは地域で解決する仕組みの構築

 

社会保障の限界・崩壊への対策

 

医療保険・介護保険など社会保障制度の段階的見直し

 

医療技術の進化による、寿命と健康寿命へのギャップ対策

 

「社会保障費の拡大=要介護高齢者×非健康期間」であり、医療技術の進化によって健康寿命を延伸する取り組みが必要

 

 

2040年問題

 

高齢者(65歳以上)人口がピーク(約4000万人)を迎える2042年、高齢者人口の3割が85歳以上と「高齢者の高齢化」が進み、貧困・孤立・認知症などの問題が深刻化する。必要な社会保障費は現状の1.6倍以上と推計される一方、支える側となる現役世代の急減により世代間不均衡が極限に達するため、次のような対策が求められる。

 

人中心社会の実現

 

先端技術の活用によるSociety5.0社会の実現(次世代医療の深化×総合ヘルスケアサービスへ範囲拡大)

 

シームレスな医療の実現

 

個人データの共有社会の実現、遠隔診療・訪問診療など、地域を1つの組織と捉えて切れ目のないサービス網を構築

 

未病(予防医学)による、寿命と健康寿命のギャップ対策

 

2025年問題の対策は医療技術の進化による健康寿命延伸であったが、2040年問題では、病気になる前の「健康から未病(予防医学)」へ注力(上流対策)

 

以上から、求められる対策は、①短期対策:2025年までは「超高齢社会対策の基盤構築」、②中長期対策:2040年に向け「技術進歩を踏まえた安心・安全・住みやすい世の中の構築」の2つと言えよう。

 

 

 

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