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【特集】

サステナブルロジスティクス

なくてはならない基幹産業・物流業。働き手不足、業界特有の業務効率の悪さ、労働環境の悪化などが大きな課題となっている。持続可能な物流のため知恵を絞る企業に迫る。
コラム2020.07.31

持続可能な物流をつくる 土井 大輔
ビジョン・経営計画の見直しの必要性 番匠 茂


2020年8月号

 

 

持続可能な物流をつくる

 

【図表1】水平の共創

 

 

【図表2】垂直の共創

 

 

物流業界における3大課題

 

世の中に“どこでもドア”はない。マスクもインスタント食品も日用品も全て、物流が稼働しているおかげで店頭に並び、自宅に届く。新型コロナウイルスが猛威を振るった今春、物流業界の方々が感染リスクのある中で業務を継続し、物流を支えてくれていたのだと思うと感謝しかない。

 

その半面、現場の省人化・自動化を進める必要性、投資のための原資の確保など、業種・業界を問わず「持続可能な物流体制」を構築することが、事業の継続や社員と家族の安心につながるとあらためて認識した期間だった。

 

物流業界における課題は大きく3点ある。

 

(1)労働力不足

 

2024年4月からドライバーの時間外労働の上限が年間960時間となり、時間外労働は現状の83%に抑えられる※1。また、2028年ごろにはドライバーの数は約76.3%へ減少すると言われている。つまり、10年もたたないうちに83%×76.3%=63%の人員での対応が迫られるのだ。

 

さらに、厚生労働省の発表によると「自動車運転の職業」の有効求人倍率は2.11倍(2020年5月分)となっており、1名の候補者に2社が求人を出している状態である。二者択一で選ばれる魅力の発信が必要となる。

 

(2)低い生産性

 

車両を101台以上保有している貨物運送事業者の平均営業利益率は0.8%※2と低収益である。

 

全業種と貨物運送業を比較しても、貨物運送業の人時労働生産性は低く、そもそも付加価値額を抜本的に上げていく必要がある。

 

一方で、「人手が足りない」「車両が足りない」と言いながら、トラックの積載効率は40%を割り込んでいる※3のが現状である。

 

(3)単独改善の限界

 

国土交通省の調査によると、1運行当たりの荷待ち時間は平均1時間45分※4である。物流機能は「受け身型」のビジネスモデル・ポジションであることが多く、単独での改善には限界がきていると言える。

 

2020年4月24日には国土交通省より「トラック運送業の標準的な運賃」が約20年ぶりに告示された。その中で初めてドライバーの待ち時間を換算する基準が設けられ、待遇改善に期待が高まっている。

 

 

※1…現在、4時間/日の残業×22日+休日出勤8時間/月=88+8=96時間/月の時間外労働とした場合、960時間÷12カ月=80時間/月が上限となると、96時間→80時間=83%となる
※2…全日本トラック協会「経営分析報告書―平成30年度決算版―」
※3…国土交通省「自動車輸送統計年報」(平成30年度分)
※4…国土交通省・厚生労働省「トラック輸送状況の実態調査(平成27年)」

 

 

 

【図表3】戦略的に狙う領域を決める

 

 

物流最適化の方向は「競争から共創へ」

 

3大課題解決とBCP(事業継続計画)の観点からも今後はますます共創が進むと考えられる。共創には「水平の共創(ヨコのつながり)」と「垂直の共創(タテのつながり)」がある。

 

(1)水平の共創

 

複数の荷主や物流事業者が連携し、輸配送や保管を共同化することは積載率の向上や倉庫・車両の稼働率向上につながる。BCPの観点からも他の荷主との連携・共同化の必要性が高まっており、異業種間も含めて広まると考えられる。

 

(2)垂直の共創

 

発荷主と着荷主、荷主と物流事業者などのサプライチェーンにおけるつながりである。荷待ちや付帯作業などはヨコのつながりでは解決しない。「検品の簡素化」「曜日指定や時間指定の納品」など、これまでの商習慣を見直す必要がある。

 

水平と垂直の共創を進めていく“共創テーマ”は、①共同輸配送、②標準化、③波動の平準化、④条件の見直し、⑤物流の位置付けを高める、の五つである。

 

共創テーマを推進するために、企業が進めていくべき五つの施策を提言する。

 

(1)ミッション・ビジョンの策定と浸透

 

外部環境が大きく変化する時期には、あらためて自社のミッション(使命)とビジョン(目指す姿)を明確にし、浸透させることが重要となる。変化を見据えた改革を実行するために、価値判断基準となるミッションとビジョンを描き、経営者、幹部、一般社員、これから仲間になる人たち全員で共有することが必要である。

 

(2)戦略人財の育成

 

組織のレベルと事業のレベルは比例する。生産性を高めるためには、内向きのマネジメントでは限界がある。事業の設計・条件見直しや共同配送の提案を推進するなど、得意先に働き掛けられる人材の育成が必須である。

 

(3)専門人材の採用と育成

 

数合わせの採用から切り替える必要がある。これからの10年で物流業界の労務管理、評価制度は特に難しくなる。また、自動化・システム化を進めていくことが必須である。システム系・人事系・デザインや広報系の組織を強化していくことが、共創を推進する組織づくりのスピードを速める。

 

(4)依存率の低減

 

販売先・仕入れ先(協力会社)の依存率を下げることが必要である。目的はリスク分散であるが、新たなノウハウの習得、自社のレベルアップにもつながる。

 

(5)基幹業務のフローの整理

 

業務平準化と多能工化、自動化・機械化のためには業務フローの整理が必要。BCPの観点においても復旧対応のためには業務フローが必須である。

 

 

アフターコロナに向けて

 

これからの10年、物流業界は激変すると考えられる。EC市場がますます拡大し、受発注が完全にデータ化されると自動化・省人化が進めやすくなる。倉庫内作業のプレーヤーが物流事業者ではなくロボット販売企業になる可能性もあるだろう。

 

未知の世界には正解がない。ゼロベース&スピードを優先して「新しい事実を創る」。最大の敵は「評論発言」「予定調和」「前例主義」である。評論・調和・前例に惑わされることなく、自社のミッション(使命)とビジョン(目指す姿)に基づいて判断し、進めていけば必ず正解にたどり着く。

 

物流が世の中を支えている。物流が止まれば経済も生活も止まってしまう。それだけに、皆で物流業界の魅力を高め、持続可能な物流をつくり上げていくべきだ。

 

 

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