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【特集】

持続可能な経営

SDGs(持続可能な開発目標)の認知はかなり進んだ。しかし、CSR(社会的責任)やコミュニケーションとしての活動にとどまっている企業も多い。社会課題解決と企業利益の両方を追求するビジネスモデルを構築し他企業に「サステナブル経営」を学ぶ。
メソッド2020.06.30

社会性と経済性を追求するSDGsビジネスモデル:経営コンサルティング本部

SDGsとは

 

SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、17のゴール(グローバル目標)、169のターゲット(達成基準)から成る国連の持続可能な開発目標。2015年の国連総会で採択された、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された2030年に向けた具体的行動指針であり、2015年までの達成を目指していたミレニアム開発目標(MDGs)が継承されている。前身のMDGsは途上国の開発問題を対象に8のゴールと21のターゲットで設計されていた。

 

しかし、「5歳未満児・妊産婦死亡率の削減」「全ての子どもの初等教育の全課程を修了できる」などの項目は目標を達成していない。先進国においても、相対的貧困といわれる「格差」や地球温暖化などの環境面における課題も残されたままであった。そこで、SDGsでは発展途上国の課題だけでなく、先進国を含む全世界を対象とし、経済・社会・環境の観点から世界の理想像が描かれたのである。つまり、SDGsは全人類が取り組むべき課題として設定されており、17のゴールは密接に絡み合っている。(【図表1】)

 

【図表1】SDGsの17ゴールは密接に絡み合っている

出所:Stockholm Resilience Centre ホームページ

 

 

MDGsのように「途上国の問題なので、先進国には関係ない」というわけにはいかない。地球上の「誰一人取り残さない」という宣言であり、今、これを読んでいるあなたも当事者として取り組むべきテーマなのである。

 

※開発分野における国際社会共通の目標。2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられたもの

 

 

なぜ今、企業がSDGsに取り組む必要があるのか
企業がSDGsに取り組むべき三つの背景

 

(1)社会的背景

 

企業が短期的な視点で事業を展開すると、ミクロレベルの課題を引き起こし、やがてマクロレベルの社会課題へと連鎖するケースは多い。

 

例えば、天然資源を原材料として活用するA社が、環境に配慮しない生産活動によって温室効果ガスを大量に排出したとしよう。すると、徐々に地球温暖化に悪影響を及ぼし、結果として天然資源の供給不安定化につながる。供給が不安定になると、原価の高騰に影響を及ぼす。

 

このように、企業が社会課題へ配慮せずに活動すると、最終的にはその影響がブーメランのように戻ってきて、市場に影響を与える。悪循環を防ぐためにも、一社一社が「持続可能」という視座を身に付けることは必要不可欠なのである。

 

(2)事業機会としての背景

 

コロナショックにより、世界経済は現在、混乱の渦中にある。「あと数年はwithコロナ」とも言われる中、新型コロナウイルスと向き合いつつ、経営を止めないためには、自社が「どういう未来を描くか」「解決すべき社会課題は何か」を走りながら検討し、サステナブルなビジネスモデルを建設的に創造することが重要になる。

 

創業の背景には「困り事の解決」があったように、困り事の数だけ事業がある。社会課題起点で市場を創出していくに当たり、まず創業の精神・ミッションから掘り下げて、取り組む軸を考えるとよい。

 

そこを原点にすると、社会課題解決を新たな事業領域として捉えることができる。

 

(3)ステークホルダーへの影響による背景

 

SDGsへの取り組みは、従業員のモチベーションや意識を高める原動力となる。「この企業と取引がしたい」と思ってもらうことができ、クライアントにとって取引の動機形成にもつながる。

 

投資家との関係性も強化される。近年、ESG投資(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治の三つの要素を考慮した投資)に目を向け、持続可能な社会づくりを評価する概念が一般的になりつつある。

 

そのきっかけとなったのは、投資にESGの視点を組み入れることを求めたPRI(責任投資原則)であり、その署名機関数も増加傾向にある。なおPRIとは、2006年に国連のコフィー・アナン事務総長(当時)が機関投資家に対し、ESGを投資プロセスに組み入れるよう提唱した原則である。

 

それに伴い、ESGに配慮した取り組みを掲載する統合報告書の数は2019年には500社を超え、投資家は財務諸表(B/S、P/L)だけでなく、非財務諸表(ESGの視点)を加味した総合力で企業を選別するようになった。(【図表2】)

 

 

【図表2】統合報告書の発行企業数

出典:企業価値レポーティング・ラボ(エッジ・インターナショナル)
「日本の持続的成長を支える統合報告の動向2019年版」(2020年2月10日)

 

 

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