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【特集】

現場の自動化

これまで機械を使った自動化と言えば、工場の生産ラインが中心だった。しかし、いまや建築現場、医療現場、物流現場など、さまざまな現場・職場で自動化が進められている。人の仕事の質をさらに高めてくれる自動化技術を追う。
メソッド2020.04.30

技術解決思考でビジネスモデルを革新せよ:森重 裕彰

 

 

問題解決の思考フローを変える
「技術解決思考」とは

 

「先端技術はあくまでも手段でしょ?」と言われることがある。

 

確かにその通りではあるが、今後その考えでビジネスを進めていくのは危険だ。成長しているさまざまな先端技術企業の共通点は、「新たな技術を用いて、どの問題を解決するか」を常に考えていることである。

 

一般的に、日本のビジネスパーソンには「問題解決思考」が備わっており、「課題抽出⇒原因特定⇒対策考案」という流れで確実に問題解決できる素晴らしい能力を持っている。しかし、これからの環境下では、「対策手段⇒抱えている問題の選定⇒解決」といった思考フローが必要と思われる(ここではあえて「技術解決思考」と呼ぶ)。

 

思考の流れを変えるにはまず、「先端技術・デジタル技術がどのようなものか」「どこでどのように使われているか」を知る必要がある。技術の基礎知識と応用知識をもとに、「自社の課題解決にどう使えるか」「顧客満足度を高めるにはどこで使えるか」を考えることが成功への近道である。

 

技術解決思考では、一つの対策で複数の問題を解決できるといった特長がある。例えばユニクロは、RF-ID技術を用いて複数の課題解決を実現し、小売業界にイノベーションを起こしている。具体的にはRF-IDチップを商品タグに埋め込むことで、①店舗の棚卸し作業時間の圧倒的短縮、②工場内在庫管理業務の自動化、③店舗のセルフレジ化という3点の課題解決を実現した。ボウリングの1番ピンを倒すがごとく、1投で複数の課題解決を実現しているのである。

 

「業界にイノベーションを起こす必要がある」「10年後を考えると今のビジネスモデルでは通用しない」と感じているのであれば、まずは最新の先端技術を学ぶべきではないだろうか。誰も答えを教えてはくれないが、不確実な未来で変化を待つのではなく、自ら考え、変化を起こす側に回っていただきたい。

 

タナベ経営では、尖端技術研究会という「新たな技術を研究する会」を開催している。そこでは、特定の技術に固執せず、今後の市場環境を変えるであろう技術を研究するため、企業視察・講演会という形で2カ月に一度、さまざまな企業を訪問している。また、その一環として、2018年、2019年にはシリコンバレーにも赴いた。今後は中国の深圳や、2021年に米国ラスベガスで行われるCES(世界最大級の電子機器見本市)への視察もカリキュラムに入れ、現地・現物で「最先端」を学ぶことを軸に取り組んでいる。ぜひご参加いただければ幸いである。

 

※ID情報を埋め込んだRFタグを使い、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって情報をやり取りする技術

 

 

尖端技術研究会

AIに代表される「破壊的技術」の革新は日進月歩で進んでいます。そうした技術を学び、自社に取り入れながら成長モデルをデザインする戦略・方法について学んでいきます。

 

 

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Profile
森重 裕彰Hiroaki Morishige
タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長。2017年に尖端技術研究会を立ち上げ、ビジネスに応用できるさまざまな最新技術を研究し、クライアントの課題解決につなげている。近年はRPA導入支援、AI導入による品質検査省人化などの分野にクライアントとともに挑戦中。自身の経験を生かした現場改善のアドバイスに定評がある。製造業をはじめ、経営視点での具体的改善策における成功事例を多数持つ。
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