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【特集】

教え方×学び方改革

「学費ゼロ」「教員不在」「テスト不要」「少人数制大学」。こうした〝あり得ない学校〞やスクールがいま、日本で続々と誕生している。従来の教え方と学び方を大きく変える、最新の〝ガッコウ〞にアプローチする。
メソッド2020.03.31

特別対談 “未来の教育”を考える:AMS合同会社 代表/元ミネルバ大学 日本連絡事務所 代表 山本 秀樹 氏 × タナベコンサルティング 細江 一樹

 

AMS 合同会社 代表/元ミネルバ大学 日本連絡事務所 代表 山本 秀樹氏
1997年慶應義塾大学経済学部卒、2008年ケンブリッジ大学経営管理学修士(MBA)。大学卒業後、東レに入社し、高機能繊維の新規用途開発を担当。ブーズ・アンド・カンパニー(現PwC Strategy&)では、主に素材メーカーの事業再生、成長戦略、M&A戦略、新規事業開発支援に携わり、その後、住友スリーエム(現スリーエムジャパン)にて二つの事業部でマーケティング部長を経験。ケンブリッジ大学に留学後、同大学のカレッジ制度や少数、グループワーク重視の学習環境・スタイルに感銘を受ける。2014年に独立後、Minerva Schools at KGIの存在を知り、コンタクトしたことがきっかけで、日本連絡事務所代表を務めることになった。2017年、ミネルバ大学で得た「教育の再創造」というミッションをより多くの人に届けるため、日本連絡事務所代表を辞し、「Dream Project School」を立ち上げた。

 

 

山本秀樹著『世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ』(ダイヤモンド社)

 

 

資質・キャリアに応じた社内教育が必要

 

細江 ミネルバ大学の革新的な教育を目の当たりにされた山本代表には、日本の大学教育はどのように映るのでしょうか。

 

山本 残念ながら、日本の大学はどこも同じことをやっていて特色が感じられません。例えば、国際系の学部なのに学生の8割は日本人で授業も日本語、グローバル感が全くない。「自校の特色」「自校の教育システムで成長できる人のプロファイル」「そうした人材の集中するエリア」といった基礎的なマーケティングが足りないのでしょう。

 

塾と偏差値に頼って学生を集め、旧態依然とした教育を提供して、教授推薦で就職先を探す……。これではグローバルで変化の激しい時代を勝ち抜く人材など輩出できません。ちなみに偏差値は成績分布上の位置を示しているだけで、頭の良さとは無関係です。

 

細江 注目されている教育機関はありますか。

 

山本 学生の立場からすると、学びはものすごく多様化しています。例えば、フランスに本校があるエンジニア養成機関42の東京校、42 Tokyo(東京都港区)。2020年4月に開校予定で、キャンパスは365日24時間開放され、学生同士が学び合う「ピアラーニング」方式を導入します。応募資格は18歳以上で経歴不問。4週間続く入学試験に合格すると在籍資格が与えられ、学費は一切かかりません。パリ本校では年収1000万円以上のプログラマーやシステムエンジニアを輩出しています。

 

このほか、アジア各国から優秀な留学生が集まる立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)。また開学以来、在学生の97%が海外留学生で、その半分がアフリカからの国費留学生という神戸情報大学院大学(兵庫県神戸市)にも注目しています。

 

細江 最後に、企業経営者は社員の教育にどのような姿勢で取り組むべきでしょうか。

 

山本 今の大学生は、もはや終身雇用という考え方を持っていません。プロジェクト単位で仕事の価値を測り、自分のキャリアにもたらされるメリットを気にします。

 

ですから、入社年次ごとに行うような従来型の研修より、各人の資質・キャリアに応じた研修を施すべきです。「この研修を通して、このようなアウトプットを期待している」と本人に伝え、その成長具合を見ながら適切なフィードバックを行う必要があると思います。

 

細江 タナベ経営も人材育成に意欲的な企業と連携してITを活用したFCCアカデミー(企業内大学)の開校を進めています。ミネルバ大学の先進的な取り組みはとても参考になります。本日はありがとうございました。

 

 

 

タナベ経営 経営コンサルティング本部 支社長代理 戦略コンサルタント
教育・学習ビジネス研究会リーダー

細江 一樹

「人事制度で人を育てる」をモットーに、制度構築を通じた人材育成はもちろんのこと、高齢者・女性の活躍を推進する制度の導入などを通じ、社員総活躍の場を広げている。人を生かす独自のアイデアを数多く生み出し、ソフトな語り口での提案と、本質をズバリ提言するコンサルティング展開で、クライアントから高い評価を得ている。

 

教育・学習ビジネス研究会

戦後最大の教育改革への対策や、教育とテクノロジーを掛け合わせた新ビジネス領域「Ed-Tech」に取り組む最新事例企業から学び、優良企業のノウハウの習得、新規事業のヒントの獲得などにつなげていきます。

 

 

 

 

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