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コンサルティング メソッド

タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
2019.04.26

スタートアップ企業の
スピード感とワクワク感
巻野 隆宏


2019年5月号
 

タナベ経営 経営コンサルティング本部 本部長代理 戦略コンサルタント 新規事業開発研究会 リーダー
巻野 隆宏
Takahiro Makino

企業の持続的な変化と成長をサポートする戦略構築に取り組んでおり、志ある企業・経営者のパートナーとして活躍中。「高い生産性と存在価値の構築」を信条とし、明快なロジックと実践的なコンサルティングを展開している。

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成長するスタートアップ企業が掲げるミッション・ビジョン

 
「困りごとを解決する『なくてはならぬ』サービスを通して誰もがしあわせに笑顔で暮らせる、よりよい未来をつくります」(akippa)
 
「乗り物を通じて、世界中の人々に、驚きと感動と笑顔をお届けする」(glafit)
 
「ソーシャルビジネスで世界を変える」(ボーダレス・ジャパン)
 
これらは最近、私が接したスタートアップ企業のミッション・社是である。成長を続けるスタートアップ企業は、事業を起こすに当たって明確で大きなミッション・ビジョンを掲げ、その実現に対し全ての経営資源を投入している。
 
“スタートアップ”とは、企業形態を指すわけではない。新たなビジネスモデルを開発し、市場開拓する段階を指す。スタートアップ企業の特徴として、短期間で急激な成長を遂げるという点が挙げられる。また、これまでに市場に存在しなかった新しいビジネスで世の中へ貢献するという大きなミッション・ビジョンを掲げていることが多い。
 
つまり、新しいだけではなく、「世の中に新しい価値をプラスし、人々の役に立つ」もので、社会貢献が果たせるイノベーションを提供するのがスタートアップ企業の条件である。しかも、短期間でスピーディーに実現するインパクトが求められる。
 
例えば、駐車場シェアリングサービスを提供するプラットフォーマーのakippaは、2013年9月にアイデアを着想し、外部とのアライアンスで2014年4月にはサービスを開始している。
 
 

ワクワクする新しい体験価値をスピーディーに

 
「先に〇〇に並んで予約を取ろう」「あと30分あるので△△が作れる」。寸暇を惜しむかのように走り回る子どもの後ろ姿を追い掛ける親たち。子どもの職業・社会体験施設「キッザニア」での一幕だ。
 
ある子どもはその仕事のスタッフに完全になりきり、またある子どもは自分で作ったものを親に誇らしげに見せている。職業体験でもらった「キッゾ(働いた給料としてもらえるキッザニア内で使える専用通貨)」をすぐに使ってしまう子どももいれば、銀行に預ける子ども、また財布がパンパンになるほどためている子どももいる。遊園地とは一味違う、子どもがそれぞれにワクワク感を感じられる体験施設である。
 
スタートアップスピリッツ(起業精神)で新規事業を創造するには、未来志向であり、自ら新しい分野を切り開こうとするパイオニア精神を持った「スピーディーに取り組むリーダーシップ」が必要である。前出のakippaの例でも分かるように、急成長を遂げるスタートアップ企業の成長・変革スピードは非常に速い。ワクワクする新しい体験価値をスピーディーに提供している。このスピード感に負けずに取り組むスピード意識が求められる。
 
これまでも世の中を変えてきたのは“いまだ見ぬ未来を見せてくれるテクノロジー”がもたらすイノベーションであり、それによって顧客はこれまでに体験したことのない「ワクワクする新しい体験価値」を手に入れることができるのである。このワクワクする新しい体験価値をスピーディーに提供できるかどうかが、新規事業創造におけるインパクトの大きさを左右する。このキーワードは次の3つである。
 
①長期視点を持つ
 
大きく明快なビジョンに基づいた、長期視点で新規事業を創造する力が必要である。ビジョンのない新規事業が成功することはない。未来をイメージした、顧客課題を前衛的な方法で解決する構想力が新規事業を成功に導くのである。
 
②競争しない
 
環境変化のスピードが速く、競争優位が長く持続しない状況下においては、競争を前提としない事業戦略が必要である。ライバルに先駆けて自らの事業を変革させ続けることで、競争自体をなくすのである。新規事業は生み出して終わりではない。常に独自のポジションを取れるように、他社に先駆けて変革し続ける仕組みが必要である。
 
③スピーディーに創造する
 
経済産業省の調査(「ものづくり白書」2016年版)では、「主力事業のライフサイクルは10年以下」と回答した企業が約74%を占め、この傾向はますます加速していく。短くなる事業のライフサイクルに先駆けるスピードで新規事業を創造する必要があり、そのスピード感がビジネスモデルの鮮度を維持するのである。
 
 
 

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