メソッド
「プラットフォーマー」の世界
村上 幸一
一言でプラットフォームと言っても、そのマネタイズ(収益事業化)モデルは多様である。供給サイドと消費サイドの両方から課金するモデルもあれば、片方から料金を得るモデルもある。また、両サイドへの課金を行わずに、第三者から広告料を得るモデルもある。
いずれにせよ、全てのプラットフォームモデルに共通している絶対的な成功の鍵がある。それは「情報の量と質」だ。人々がそのプラットフォームを訪問(利用)しようとする理由は、そこに行けば自分の探している情報やモノが存在しているからであり、そこに人が集まるからこそ、供給者も参加する。供給者が増えれば、情報やモノの量が増大するため、またそこへ消費者が集まってくるという、好循環サイクルが発生する。
この好循環サイクルを維持すれば、自然に、自発的にそのプラットフォームへの参加者は増えていく。逆に、情報の量や質が低下する、あるいは他のプラットフォームがそれを上回るようになれば、悪循環サイクルに陥って瞬く間に参加者が減少していく。極論すればナンバーワンでなければ生き残れないモデルだ。従って、ナンバーワンを目指して各社が競って魅力的なプラットフォーム作りに励んでいる。
一度、ナンバーワンとしてのポジションを確立すれば、好循環が生まれて、その地位は盤石になりやすい。そこに、プラットフォーマーの圧倒的な力が生まれる。
そのプラットフォームへ参加するためには、そこで定められた“ルール”に従わなければならない。そのルールは、プラットフォーマーが自由に設定できる。
つまり、プラットフォーマーがルーラー(Ruler:支配者)としての圧倒的な力を持つことになり、自社の収益最大化を図ることができるというわけだ。
その秀逸なビジネスモデルと圧倒的な収益力から、世界各国でプラットフォーマーが誕生し、覇権を争いながら成長している。日本でもあらゆる業界でプラットフォーム・ビジネスが生まれている。
例えば、小売業(電子商取引)の楽天、フリーランス人材(クラウドソーシング)のランサーズ、資金調達(クラウドファンディング)のマクアケやReadyfor、外食のぐるなびや食べログ、アパレルのZOZO、フリーマーケット(フリマアプリ)のメルカリ、ネットオークションの「ヤフオク!」(ヤフー)、レシピ情報のクックパッド、婚活支援のIBJ、BtoB-EC(企業間電子商取引)のインフォマート、製造業マッチングのイプロスなど、枚挙にいとまがない。今後もさまざまな分野で新たなプラットフォーマーがスタートアップしていくだろう。
ここで興味深いのが、成功しているプラットフォーマーのほぼ全てが新興企業ということである。魅力的なビジネスモデルであるにもかかわらず、豊富な経営資源を有する大企業での成功事例はほとんどない。これはイノベーションの困難さを示唆していると同時に、全ての人にプラットフォーマーへの挑戦権があると言えるだろう。