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2019.01.31

ものづくり業界に求められる“形”
小谷 俊徳


2019年2月号
 

メーカーズ・トランスフォーメーションに必要なポイント

 
これまで日本の経済発展を支えてきたのは製造業である。しかし、過去の成功は未来の成功を確約するものではない。過去の延長線上に未来はないと言っても過言ではない。いま、ものづくり企業に求められているのはビジネスモデルを変形(トランスフォーメーション)させることである。
 
ものづくり企業に求められる、未来を見据えたメーカーズ・トランスフォーメーションを展開するために必要なポイントを次に整理する。
 
1.アライアンスとオープンイノベーション

 
過去の日本企業は、守ることが好きだった。社内でも、技術者は自分の技術を誇示するために他の技術者が描いた図面を使うことを嫌い、共有化できる部品ですら自分流に作った時代があった。それだけ企業も個人も技術を囲っていたと言える。
 
しかし、一企業や一個人ができることは限られており、現在の国際競争に立ち向かうには、「アライアンス」(協業・提携)や、組織外の知識・技術を積極的に活用する「オープンイノベーション」による共同開発で立ち向かう必要がある。
 
例えば、浅野撚糸は、自社開発した特殊撚糸「スーパーZEROR」の特長を最大限に生かせる用途開発について、あらゆる可能性を探った。その結果、タオルメーカーとタッグを組んで新製品の開発に取り組み、大ヒット商品「エアーかおる」を生み出した。もし、浅野撚糸が自前での開発にこだわっていたら、エアーかおるは世に出なかったかもしれない。
 
また、ある技術で名を知られるA社は、業界内でその分野における「要素技術銀行」と呼ばれており、「開発に困ったら、A社に相談してみると解決の糸口が見つかる」との評判が広がり、異業種からさまざまな相談が舞い込んでいる。同社は、自前で解決ができない際は、外部の技術をつなぎ合わせるオープンイノベーション戦略によって成功を収めている。
 
ある開発型企業の社長は、「新たな開発は、過去に活用できなかった開発の掛け算で生まれる」と言っていた。自社では活用できない新技術でも、それを具体的に用途開発できる企業は他にあるはずだ。同じ目的を持った企業間連携を強化することで、「1+1=2」ではなく、3や4にもなるのである。「業界の常識は世間の非常識」と考え、広く外部に耳を傾け、夢の技術を追求すべきだ。
 
2.ビジネスモデル変革
 
モノ売りから「コト売り」へ――。そう叫ばれて久しいが、製造業のビジネスモデルはこれからどのように進化すべきなのか。
 
日本の技術は一流といわれてきたが、海外の技術革新は目覚ましく、日本の技術以上に磨かれているものも多く見られる。日本の製造業は、技術で勝ち残るのか、コストで勝ち残るのか、何で勝ち残るのかを、未来を見据えて考える時が来ている。考え方はいくつもあるが、その一つが、前述したインダストリアル・インターネットのような、製品以外に付加価値を生み出す方法である。
 
自社製品がどのように使われ、顧客の何を解決しているのか。設計段階で想定した通りに全ての機能が使われているとは限らない。顧客の用途に応じた製品改良や納品後のアフターサービスによる付加価値を生み出すことで、新たなビジネスモデルが誕生する。
 
アパレル業界のSPAも、登場した1990年代当時は画期的なビジネスモデルであった。顧客ニーズを最も知っているアパレル専門店が製造も手掛けることで、それまでの商流に風穴を開け、市場動向を的確に把握し、流通在庫を減らして、ブランド価値を高めることに成功した。いまやSPAはアパレル業界にとどまらず、「製造小売業」として多くの製造業で取り入れられている。これも今の常識にとらわれず、未来の市場を開拓する手法と言える。
 
3.スマート化
 
ものづくり研究会では、2016年にIoTセミナーを実施した。IoTの開発企業と活用企業に参加してもらい、パネルディスカッションも行った。当時の意見としては、「準備の時」というものが多かったが、その1年後にはIoTが一般に普及し、特別な存在ではなくなった。
 
このようにデジタルデータを活用し、製品、製造ライン、バリューチェーンのスマート化が進んでいる。そこにAIを加えると活用範囲は無限大に広がり、新たなビジネスチャンスが生まれてくる。
 
京都機械工具も、IoTを活用して工具の進化を成功させた企業だ。工具と言えば「頑丈でなければいけない」というイメージがあるが、同社は安全優先の精神から安全に壊れる工具を開発した。また、適切にボルトが締め込まれているかなどの情報を履歴として取り込んだ。現在は、同社の工具で生産された製品の安全性を担保する機能まで担っている。
 
ドイツ政府が提唱・推進している「インダストリー4.0」では、生産工程のみならず流通工程から得られる膨大なデジタルデータにより、生産から流通を自動化し、コストの最小化と生産性向上の実現を目的にしている。これを具現化させた「スマートファクトリー」(工場内のあらゆる機器がインターネットに接続し、「見える化」や最適生産を行うこと)が、世界の製造現場で注目を浴びている。
 
異常の早期察知や不良品発生率の低減など、デジタルデータの本格的活用は始まったばかりかもしれないが、今後の活用範囲の可能性は大いに期待ができる。工場のスマート化を推し進めることで、未来の生産・物流体制が見えてこよう。
 
これからは少なくとも、2020年東京オリンピック・パラリンピックの10年後、「2030年」を想定した未来構想を検討し、自社の新たな未来を生み出すための戦略判断を行う必要がある。そのためにも多くの情報を吸収し、ものづくり企業といえども製造面だけにとどまることなく、広く縦・横への展開を図り、新たな一歩を踏み出してほしい。
 
 
 

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