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コンサルティング メソッド

タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
2018.02.28

デジタル革命を機に住宅産業から
「暮らし産業」へ
山本 剛史


2018年3月号

コンサルティング戦略本部
大阪本部 副本部長 住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会 リーダー

山本 剛史 Tsuyoshi Yamamoto
企業の潜在能力を引き出すことを得意とする経営コンサルタント。事業戦略を業種・業態ではなく事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定して事業モデル革新を行うことに定評がある。現場分散型の住宅・建築・物流事業や、多店舗展開型の小売・外食事業などで生産性を改善する実績を上げている。神戸大学大学院卒。

 

「第4次産業革命」が従来にないスピードで進行中

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IoT、ビッグデータ、ロボット、AI(人工知能)――。これらによる「第4次産業革命」とも呼ぶべき技術革新が今、従来にないスピードとインパクトで進行している。

 
2017年10月、中国のEC(電子商取引)大手アリババ・グループが今後3年間で研究開発予算に150億ドル(約1兆6900億円)を投じると表明した。金融情報サービス大手ブルームバーグの集計データによれば、アリババが過去3会計年度に投じた研究開発費は64億ドル。発表した支出額はその2倍余りに上る。併せて、世界各地に研究所を7カ所設立し、AIやIoT、量子コンピューティングなどの研究員を100人採用するとも発表した。
 
一方、国内に目を向けると、政府が成長戦略(「未来投資戦略」)の中核となる技術革新としてIoTを挙げたほか、ソフトバンクが日本企業として過去最大となる約3.3兆円を投じ、英国の半導体設計大手ARM社の買収を発表した。これらも将来のIoT需要を見据えた動きと推測できる。
 

AIが注目される3つの変化

2017年5月に中国・浙江省烏鎮で行われた、グーグル・ディープマインド社(英国)が開発した囲碁ソフト「アルファ碁」と、世界最強と目される中国の棋士・柯潔氏の対決は、アルファ碁の完勝(3連勝)という結果で幕を閉じた。
 
囲碁はボードゲームの中で最も難しいものとされ、AIが棋士に勝つのは10年先とみられていた。ところが2015年10月にプロの囲碁棋士に初めて勝ち、2年たたずに世界のトップを破った。いかにAIの開発スピードが加速しているかが分かる。2017年10月には、さらに腕前を上げた「アルファ碁ゼロ」が発表された。
 
「コンピューターは人類を追い越す」といわれてきたものの、多くの人々は「まだまだ先の話だ」と考えてきた。こうした例はアルファ碁に限らず、私たちの暮らしの周辺でも、気が付かないうちにコンピューター化が浸透しつつある。次に3つの事例を紹介しよう。
 
(1)アナログ社会からデジタル社会へ
 
iPhoneには紙の説明書がない。製品について知りたいことがあれば、Web上でテキストを閲覧する仕組みになっている。また、不動産取引でも同様の動きが進んでいる。2017年10月から賃貸不動産取引での「IT重説」が解禁され、対面が原則だった宅地建物取引士による重要事項説明をテレビ会議などオンラインで行えるようになった。例えば、チェーン展開する不動産会社で、A店の来店客にB店の取引士が重説を行う、または顧客が自宅や職場で重説を受けるといったことも可能になる。
 
不動産取引における営業担当者の接客スキルを、AIでデータ化する動きもある。クライアントの要望に応じてカスタマイズも可能だ。「家を売るためにはどんな準備が必要か」「このエリアで良い物件はないか」など数千パターンの質問にAIが応対するというものである。
 
AIのカスタマイズは、まず優秀な営業担当者にインタビューすることから始まる。よくある質問内容など大量のデータを集めて学習させながら、トップ営業担当者に近づけていく。分厚いマニュアルにまとめる従来の手法とは一線を画している。
 
(2)情報インフラの変化
 
2つ目は、インターネットによるデジタル革新により、暮らしを取り巻く情報インフラが急速に変化している事実である。
 
不動産情報サービス会社のアットホームが、1人暮らしをする18~29歳の男女2038名にアンケート調査を実施した(2016年)。それによると、現在居住する部屋を探した際、①ほぼ半数の人は不動産会社1社しか訪問しなかった、②社会人の多くはスマートフォンやパソコンで部屋を探している(特に女性は8割以上がスマホ)、などが分かった。(次項【図表】)
 
①の結果については、SNSやホームページなどで事前に調べて絞り込んでいるためだと考えられる。また②についても、賃貸物件をオンラインで探すことが当たり前になっていることが分かる。パソコンの容量は一昔前にメガ(M)だったのが、ギガ(G)、その1000倍のテラ(T)、さらにその1000倍のペタ(P)までが主流になりつつある。デジタル革命の加速化がいかに激しいかが、ここからもうかがえる。
 
(3)Webでリフォームが申し込める時代に
 
EC企業によるリフォームへの参入が始まって久しい。しかし、本や服、食品のようにワンクリックでリフォームを“買う”には、心理的なハードルがまだ高い。しかし、思い出してほしい。「靴は試着しないとだめなので通販は無理だ」「眼鏡のネット販売は不可能だ」。これが、かつての常識だったはずだ。
 
リフォームのEC展開は、工事会社とエンドユーザーを単につなぐだけのマッチングサイトではなく、工事込みの“商品”として販売していることに注目したい。いくつかの問題を抱えているものの、比較的手軽に行える少額リフォーム工事は全て、そう遠くない未来にネット販売へ置き換わると思って間違いないだろう。
 
 
 

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