社内の「あるある話」が成長を阻害する
浅井 尊行
2017年10月号
「なれ合い」の弊害
金融庁は7月20日、企業が監査契約を結ぶ監査法人について、一定期間で強制的に交代させる「ローテーション制度」の導入を検討すると発表した。近年、上場企業の不適切会計が相次いでおり、その要因として同一監査法人との長期契約による「なれ合い」が問題視されているためだ。
同庁がまとめた調査報告によると、TOPIX(東証株価指数)上位100社のうち、この10年間で監査法人が交代したのは5社。監査契約が固定化しているのだ。上場企業の会計監査では担当監査法人の独立性確保が求められるが、同一監査法人との関係が長期間に及ぶとなれ合いの関係が生まれ、会計の異常値に対して批判的・客観的な検証が行われない恐れがある。すでにEUでは2016年6月より、上場企業に対して担当監査法人のローテーション(最長10年で交代)を義務付けているという。
共通の目的を持ち、成果を共有する「分かち合い」の関係が、時間の経過とともに仲間内で互いに依存し、現状に満足する「もたれ合い」の関係に発展する。これをなれ合いと呼ぶ。特に同一の民族・言語・慣習を有する国民が大多数を占める日本は、こうしたなれ合いに陥りやすい文化的土壌がある。
従って、なれ合いの構造は上場企業と監査法人の間だけではなく、あらゆる企業の組織に内在している。