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メソッド2017.09.29

営業力強化の必須ポイント~これだけは必ず実行~:コンサルティング戦略本部

営業力強化は長期的・計画的に

「販売なくして経営なし」は経営の原理原則。営業力強化は企業経営における最重要課題である。とはいえ、営業機能の変革・改善が進んでいる企業は少ないというのが実情だ。

営業は、顧客に認められ、ライバルに打ち勝って初めて成果につながる経営機能である。それだけに、営業機能の強化は企業が長期的・計画的に継続して取り組まなければ実現しない。

次に、営業力強化のために継続して取り組むべきポイントを説明する。基本的な内容であるが、必ず実行するべき項目である。自社でも再確認し、実践してほしい。

 

事業戦略の再検証勝てる事業戦略の構築

営業力強化の前に再検証すべきなのが「事業戦略」である。そもそも事業戦略が勝てる内容になっていないのに、営業力強化だけを図っても結果は出ない。にもかかわらず、ライバル企業との差別化を実現できないまま、同質化競争に陥っている企業が多い。

顧客はどの企業から商品・サービスを選択しても差を感じないために、最も価格が低いものを選択する。勝てる事業戦略を構築することは、全ての企業における至上命題であるが、勝てる事業戦略を構築できている企業はまれである。

事業戦略は、「誰に(ターゲット顧客)、何を(顧客価値)、なぜ(理由)提供するか」で構成する。事業戦略の構成要素のポイントを次に記す。

(1)ターゲット顧客

総花的な顧客ニーズではなく、「○○という要望を持っている」「□□という課題を抱えている」と、要望・課題を軸にしてターゲット顧客を明確にする。また、そのターゲット顧客には、今後の自社の事業成長を支えるに十分な規模が見込めるかも検証することが必要である。

(2)顧客価値

ターゲット顧客は商品・サービスの「機能」を求めるのではなく、商品・サ―ビスが提供する「コト」を求めている。自社の提供するコトは、ターゲット顧客にどのような具体的ベネフィット(便益)を提供するのかを明確にする。自社の提供するコトがライバル企業と比較して差別化されていなければ、「強みを決めて、その強みを磨く」仕組みを構築し、計画的に競争優位を確立することが必要不可欠である。

(3)理由

ターゲット顧客がなぜ満足し、自社商品・サービスを選択するのかを徹底的に突き詰めていく。ここで重要なことは、希望的観測ではなく、合理的にターゲット顧客が自社の商品・サービスを選択するレベルにまで突き詰めていくことである。マーケティングにおいては、「なぜ私がこの商品(またはサービス)をあなたから買わなければいけないのですか」という究極の質問がある。この質問に対して明確な答えを用意できなければ、勝てる事業戦略にはなり得ないのである。

 

コンサルティング営業への進化

営業においては、自社の強みを活用した商品・サービスを提供して、顧客の要望実現・課題解決に貢献し、業績向上を実現することがあるべき姿だ。営業手法の変革に、この問題を解決する役割を求めるとすれば、「コンサルティング営業」へ進化することである。コンサルティング営業のポイントは、次の2点に要約される。

(1)顧客の抱える本質的な課題・要望の上位3つに対する改善具体策を提供できる。

(2)顧客の同属性(同業他社・同機能担当・同性/ 同年齢/ 同職種)の成功事例を豊富に有しており、具体的内容を資料で提供できる。

(1)については、営業担当が取引先の業種・業態における成功条件、課題解決手法や、窓口担当者の業務内容全般を把握することが必要になる。自社の商品やサービスに直接関わらない内容についても踏み込んでいくことが重要だ。

例えば、飲食業態に業務用食材を販売する営業担当者であれば、飲食業の店長に対して、メニュー構成やパート社員への教育法、客数や客単価の向上について、具体的なアドバイスができることを求められる。

(2)については、具体的な提案内容を「課題→改善実行策→成果」のストーリーに沿ってまとめ、提案できることが重要である。ここでは、解決策を豊富に有していることを証明しなければならない。

品質・価格・納期・付帯サービスで他社と差別化ができていなくとも、コンサルティング営業で顧客の本質的な課題解決に貢献できる具体的な提案ができれば、十分に差別化は可能である。

 

ノウハウの共有化

営業機能は、営業担当者のノウハウが共有化されることなく属人化している場合が多い。多くの営業担当者は成功体験が少なく、どのように営業をすれば成果が上がるのかを理解しないまま、営業活動を継続しているのが実情だ。営業部門全体で、あるべき営業のステップを徹底的に討議して構築することが必要である。成果を生み出す営業ステップがノウハウとして共有化されず、実行できていない営業部門では、勝ち続けることはできない。

ある建材商社では、初回訪問から受注、アフターフォローにおける、顧客に対する質問事項とその具体的質問方法を決定し、成果を残す営業活動の標準化を行った。

また、営業会議に参加する条件として、成功事例を統一フォーマットに記入して提出することを義務化した。その内容を分類ごとに区分し、営業担当者が活用できるように営業部の共有フォルダをサーバー上に作成した。その結果、営業活動の標準化が進み、営業メンバーのレベルアップにつながった。さらに訪問件数も増加するなど、営業の質と量の両面での改善が進んでいる。

 

会議運営方法の変更

慣例に沿った営業会議を続けてはいないだろうか。最後に、効果的な会議運営方法の例を3点挙げる。

(1)毎月の営業会議で行っていた各営業担当者の先月の結果と当月の見込みについては、会議開始前にリーダーが営業担当者と個別面談を行って把握する。営業会議での発表は行わないようにする。

(2)営業会議では、各営業担当者に6カ月先の着地見込みを把握させ、累計目標との差額を埋めるためにどのような対策を実施するのか報告させる。

(3)対策は、見込み案件増加や新規顧客開拓のための仕掛けという「種まき」に重点を置く。当月目標を達成するために当月分の活動をするだけでは、実施できる内容が限られてしまう。また、期間が短すぎるために対策の効果が当月の数値に反映されない。見込み客を当月に探して当月内に受注する動きだけでは、目標は達成できないのである。もし、達成できるのであれば、設定した目標自体が間違っている場合が多い。

目標を12カ月連続で達成するためには、「種まき→育成→刈り取り」がバランスよく実行されることが必要である。営業会議とは、6カ月先行の累計目標差額に対して、いかに種まき・育成・刈り取りをバランスよく実行するかを検討する場なのである。

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