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2017.07.31

AI(人工知能)時代において営業職は消滅するのか?
コンサルティング戦略本部

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2017年8月号


AI、IoT、ロボットが話題

日々、経営者と話していると、よく出てくるキーワードに「AI」「IoT」「ロボット」がある。この技術革新により、世の中、もしくはビジネスが大きく変わるという話題になることが多い。

実は、すでにAI( 人工知能)は私たちの日常生活に入り込んでいる。身近な例では、アップルのiPhoneに搭載されている音声検索機能「Siri」がある。また、最近ではカメラに映った情報を自ら判別し、画像内の文字を翻訳するGoogleの翻訳アプリも人々を驚かせた。日本未上陸だが、アマゾンの人工知能「Alexa」を活用したサービスも話題となっている。

では、ビジネスの現場でAIは、今後どのように活用されていくのだろうか。

例えば富士通では、人と接して表情や声から喜怒哀楽などの感情を理解できるAIの開発を進めており、電話での会話をAIで分析して、声のトーンなどから振り込め詐欺の被害に遭っている可能性がある人を見つける技術などの実証実験を開始している。

また、医療の現場ではAIを活用して、X線CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)などの医用画像から、がんを検出する技術の開発が進められ、一定の成果を収めている。

一部の大企業だけでなく、地方政令都市に本社を置く中堅企業もAIに注視している。ある食品会社の経営幹部は、「原材料の高騰、今後起こり得る労働人口の減少といったことを考慮すると、対応策を早急に講じておく必要がある。これまでのようにただ生産ラインの生産性向上を図るだけではなく、AI、IoTを導入して省人化することによって、生産性を向上させることを検討中である」という話をしていた。

技術革新が急速に進展していることに起因しているが、日本国内の労働人口の減少という社会課題の解決策の有効な手段の1つとして、AIを中心とした技術革新のさらなる活用と普及が推察される。

 

AI、IoTの普及に必要な環境が整った

AI、IoTの急速な進展は3つの要素が背景にあるといわれている。1つ目がデータ量の増加である。スマートフォンの普及により、世界のデータ量は2年ごとに倍増している、ともいわれているほどだ。2つ目がハードウエアの性能が指数関数的に変化していること。そして3つ目がディープラーニング(深層学習)などによるAIの非連続的な進化である。

つまり、AI、IoT、ロボットが相互につながり始め、大量のデータの取得、分析、そして実行が可能な状態になることによって、あらゆるビジネス分野の壁がなくなりつつあるのだ。(【図表】)

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AI、IoT時代において営業職は消滅するのか?

これまで見てきたように、AI、IoT、ロボットの技術革新により、間違いなく世の中、ビジネスは変わってくる。2013年に英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が「AI利用により、人間が行う仕事の半分がなくなる」と衝撃的な研究結果を発表したのは記憶に新しい。

同氏は米労働省のデータに基づき、702の職種が今後AIを中心とした技術革新によって自動化されるか分析を行った結果、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化される可能性が高いという結論を出している。

この発表に際して、議論になっている職種の1つが「営業職」である。インターネットの活用率がBtoC、BtoBともに高まっているものの、多くの企業において営業職はいまだ、従業員における多くの構成比を占めている。

この議論に対する私の考えは、「営業職は消滅しない」である。理由の1つには、営業活動はビッグデータの収集とは方向を異にしていることが挙げられる。前述のように機械で自動化されるためにはデータの量が必要不可欠である。しかし、営業の業務内容はその場・その時で顧客の要望、課題に対して臨機応変に対応することが求められるため、商談上のデータを取得することは困難である。

 

これからの営業に必要な能力

さらに技術革新が進展するビジネス環境において、営業職に必要な能力はどのようなものだろうか。それは今も昔も同様であるが、2つであると考える。

1つ目は専門的知識である。BtoBビジネスを展開するある専門商社A社が、同社の顧客にアンケートおよびインタビュー調査を行った。A社の業界では、多くのインターネット通販事業者が展開している状況である。


その際、多くの顧客が話していたことに共通点があったという。「汎用的な商品はインターネットで購入するが、業務上の重要なものの購入に際しては、専門的知識・ノウハウを持つ人に自社の事情を理解してもらった上で、相談しながら『何が最適なのか』を判断してから購入したい」というのだ。

新製品開発のスピードはあらゆる業界において加速しており、このような顧客の期待に応えるためにも、自社の技術そのものや活用方法について、営業担当者は十分理解しておくことが大切である。

2つ目は、エンドユーザー(顧客の顧客)のことを考え、価値創造ができる企画提案力である。住宅を購入する人はただ単に住宅が欲しいのではなく、購入した住宅での暮らしやすさや楽しい生活を求めている。また、新たな設備投資を考えている企業は設備を導入することが目的ではなく、新たな設備を導入したことによる生産性向上や品質の安定化などを求めているのだ。

「モノ」を売る営業スタイルでは、営業担当者の存在価値がなくなってしまう。未来を見据え、営業担当者にしかできないことを今一度、突き詰めてほしい。

 

 

 

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