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コンサルタント レビュー

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2017.05.31

Web通販で「放置マーケット」を狙え:コンサルティング戦略本部

Web通販事業が頓挫するわけ

2015年の国内の電子商取引市場規模を見ると、BtoCは13.8兆円で前年比7.6%増、BtoB(狭義)は203兆円で同3.5%増。特にBtoCが大きく伸びている(経済産業省調べ)。このような市場を見据え、「Webを活用して新たな売り上げを」とWeb通販を始めたものの、成果が上がらず困っている企業は多い。

困っているレベルには、次のようなものがあると考えられる。

(1)レベル1: Webで集客できず月の売り上げも数十万円程度

集客にかける広告宣伝費が不十分であることが主な原因である。Web上に掲載したからといって、商品が勝手に売れていくわけではない。

店舗型ビジネスの集客策であれば、ダイレクトメールなどで商品をPRし、営業担当者が訪問して顧客拡大を図っていくことになる。そのためには多くの費用がかかる。

同じようにWebにおいても、顧客を集客するための費用は当然必要となる。集客ができている会社は売上高の10%程度を広告宣伝費として投入している。このようにレベル1では、経営者のWeb通販の投資に対する理解が重要なポイントとなる。

(2)レベル2:一定程度の売り上げは獲得できるが利益が出ない

これは、リピート顧客の獲得が進まず、新規顧客開拓のために広告宣伝費を投下し続けなければならないことが原因である。忙しくなるものの、収益の出ない「利益なき繁忙」にとらわれている企業が多い。大手ネットショッピングモールだけに出店しているケースも、これに該当するであろう。利益を出していくには、自社サイトでリピート顧客をつくることがポイントとなる。

(3)レベル3:自社サイトに誘導し利益が出ており、事業化できている

上記(1)と(2)を卒業したレベルであるが、この域に達している企業はまだ少ないかもしれない。商品をWebサイトに掲載したというレベルを超えて、ビジネスモデルそのものが変わっているというケースが多い。

Web通販に参入すると、販売先は地域から日本国内全体(場合によっては海外)に広がるが、商品の差別化がなされていなければ、より競争の厳しいマーケットで戦うことになるだけだ。Web通販を事業化できるレベルにまで持っていくには、誰に、何を売るのかというビジネスモデルそのものを変える必要がある。

ビジネスモデルを変えた包装資材卸会社

A社は、創業40年を超える包装資材卸売業である。同じ地域には包装資材を扱う競合会社が複数あり、取り扱っている商品にも大差がない。商品に差がなければ価格勝負になり、事業の収益性は下がってしまう。また、取引継続のために過剰な顧客サービスを続けており、社員は疲弊し切っていた。

「このままでは会社の未来はない」。そう考えたA社社長は、自分たちがナンバーワンになれることに事業をシフトしようと考えた。目を付けたのは、ある食品小売り業向けの包装資材であった。その包装資材自体、もともと必要量が少ないため、積極的に営業活動をする同業者の少ない「放置マーケット」となっていた。

ただ、A社がこの分野に横展開するだけでは当然需要量が見込めないため、事業としては成り立たない。しかし、Web通販を使って全国の顧客にアプローチできれば、一定規模の売上高は確保できるのではないかと考えた。

実際に事業を始めてみると、やはりその市場は、需要量が少ないために各地域の包装資材会社から放置され、それぞれのニーズに合った商品や細かなサービスの提供を期待することができない状態であることが分かった。手応えをつかんだA 社は、放置され続けた細かなマーケットを集め、Web通販という手段を通じて、全国ナンバーワンになることを決意した。

しかし、あくまでもWeb通販そのものは事業でなく、商品を届けるための手段である。自社の包装資材を使ってもらうことで顧客の売り上げが上がらなければ、ナンバーワンにはなれない。

自社の売り上げや利益を追い求めることだけでなく、売れる包装資材の提供を通じて取引先の売り上げを拡大させるという信念が、A社の根底にあった。

そこでA社は、売り上げにつながる商品を開発することにこだわった。開発会議を毎週開催し、社員から募った大量の商品企画案の中から良いものを選び、商品化していった。

また、全国の小売店に認知され、商品を取り扱ってもらうためには「顔の見える通販」であることが大事であると考えた。展示会などで直接取引ができる場を設け、信頼につなげて顧客拡大を図っていったのだ。

成功するためのポイント

最後に、Web通販で成功するためのポイントについて解説する。

(1)ターゲットとニーズを絞り込み、専門性を高める

A社の事例から見えるのは、従来、中小・零細企業向けであったり、販売数が少なく手間が掛かると放置されていたマーケットを、通販という手段を通じて市場化したことである。

文具の通販からスタートしたアスクルのビジネスモデルも同様である。地域の文具卸にとってみれば、中小企業からの文具発注は数量が少なく、営業活動の主なターゲットにはなり得なかった。多くの中小企業では、総務担当者が社内からの依頼に応じて近隣の文具店に買いに行くというケースが多かったが、その小ロットのニーズに対応したのがアスクルである。

(2)差別化を図るため経営資源を集中させる

A社の例では、商品開発という機能を徹底的に磨き、新たな商品を作り出すことに経営資源を集中させている。通販事業で成功している企業の多くが、このような経営資源の重点配分を実施している。ネットでの売り方なのか、商品そのものなのか、それとも1個から製造できる製造能力なのか。何が成功ポイントになるのかを明確にし、そこへ徹底的に経営資源を集中させるべきである。

(3)スピード重視の経営を行う

通販市場においては情報の広がるスピードが速い分、「この商品が売れている」と分かれば、同様の商品がライバル企業から販売されることも多い。このような他社の動きに毎回反応しても意味がない。スピード感をもって、市場を押さえることこそが対抗手段である。

例えば、商品をシリーズ化して市場での認知度を高め、「この商品は〇〇会社の商品が一番で、他のものは模倣品でしかない」との認識を持たせることが必要であろう。

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