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【コラム】

コンサルタント レビュー

タナベコンサルティンググループの経営コンサルタントが、各専門分野の経営テーマに沿った戦略や施策を提言します。
コラム2021.03.01

「Who we are(これが私たちだ)」から自社の存在意義を捉え直す
筒井 美帆

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2021年3月号


 

 

環境変化へしなやかに対応する

 

2点目は「ブランディング」という言葉の本質的な意味である。

 

ブランディングという言葉は、「Brand(ブランド)」と「ing(現在分詞や動名詞をつくる接尾辞)」で構成されている。構築したブランドをさまざまな方法で伝え、差別化し続けるという意味である。

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響で私たちのライフスタイルや働き方が大きく変わったように、市場や事業環境も変化し続ける。この変化に対応できなければ、自社が提供する価値は失われる。提供価値を自らに問い直し続けながら、事業内容やアプローチ手法を変えて顧客へ届ける必要があるのだ。

 

ブランディングを実践する企業として有名なのが、アウトドア用品の製造・販売を手掛けるパタゴニアである。同社の企業理念は、行動に明確に表れている。

 

2018年、同社は長年掲げてきた企業理念を変更し、新たなミッションステートメントを発表した。「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」。それ以前は、「最高の商品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」だった。

 

新旧の企業理念の共通点は、地球環境への危機感だ。「地球を救う」という大きなテーマから自社の存在価値を捉え直したとき、地球環境を守るためには、必ずしも「商品」を通す必要がないと気付いたからこその変更だろう。

 

また、2019年7月21日、日本の第25回参議院議員通常選挙の投開票日に同社が起こした行動は、まだ記憶に新しいのではないだろうか。小売業にとって最も売り上げが見込める日曜日であるにもかかわらず、パタゴニア日本支社は全直営店を休業させたのである。

 

日本支社の全従業員が、家族や友人などの身近な人物と、日本の政治や選挙、地球の未来について話すきっかけと時間を持つこと、そして投票に行くことが、地球を救うことにつながると考えたからである。

 

2018年以前の企業理念は「事業ありき」だったため、このような判断と行動を起こせなかった。しかし、新たな企業理念によって、本質的な指標で行動できるようになったのである。環境変化に合わせて変わり続けている企業と言える。

 

本稿で提言したいのは、事業視点からブランドという概念を捉えるのではなく、自社の存在の根幹をブランドという視点で見つめ直すこと。そして、常に自らの存在意義を問い続け、企業として何をすべきなのかという判断を、環境変化に合わせて素早く行動にまで落とし込むことだ。

 

2021年度も不確実性の高い1年になるだろうが、だからこそ強度が高くしなやかな企業ブランドを設計し、ブレない判断と行動につなげていただきたい。

 

 

  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • 部長
  • 筒井 美帆
  • Miho Tsutsui
  • こども・子育て・ファミリーマーケットの分野で、幅広い業種のクライアントに対して販促支援コンサルティングで活躍中。販売促進戦略の策定から実行推進までトータルで支援し、顧客ニーズを的確に捉えロイヤルカスタマーを育てていくことを大切にしている。子ども・子育て・ファミリーマーケット成長戦略研究会サブリーダー。
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