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【メソッド】

コンサルティング メソッド

タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
メソッド2020.11.30

新規事業立ち上げの成功率を高めるプロセスとフレームワークを紹介:経営コンサルティング本部

 

 

事業性評価が必要な背景

 

顧客に対して新規事業開発・新規サービス開発を検討、または取り組んでいるが閉塞感を感じている方にぜひ参考にしていただきたい戦略フレームワークとして「事業性評価(フィージビリティースタディー)」を紹介する。

 

社会・市場の成熟化・人口減少をはじめ、さまざまな構造的変化により、これまで自社の成長を支えてきた既存事業だけでは持続的成長が困難になっている。加えて、新型コロナウイルスの影響により環境変化のスピードはますます加速中だ。

 

このような状況下において、大半の企業は新規事業を検討しているが事業として立ち上げるに至っていない。または、立ち上げたものの、その事業が今後の既存事業として業績貢献するまでに至っていないケースが大半である。

 

新規事業はゼロからのスタートであり、ステップ1「事業検討」、ステップ2「事業開始」、ステップ3「事業の黒字化」、ステップ4「事業のスケール化」というプロセスがある。注視されていないが、このプロセスの中で成功率を高めるために最も重要となるのが、ステップゼロと1の間のステップ0.5「事業性評価」である。事業性評価のメリットは次の5つだ。

 

(1)事業可能性のスコア化

 

多面的・客観的視点からのスコア化により新規事業の可能性が見える化できる。

 

(2)判断基準の明確化

 

複数の事業案からどれを選択すべきかの客観的な判断材料となる。

 

(3)課題・改善点の整理

 

現時点で想定される課題・リスクの整理、今後に改善・強化すべき点が明確になる。

 

(4)事業計画の精度向上

 

事業計画を策定する際、事業性評価の結果を踏まえることで計画の精度が大きく高まる。

 

(5)戦略思考ができる人材育成

 

事業性評価から事業計画策定までを通して、多くの幹部人材の課題である戦略思考が鍛えられる。

 

新規事業は検討段階から軌道に乗るまでにさまざまな壁があり、最終的に成功するケースは少ないのが現状である。多くの経営者から「新規事業が進まない」といった相談をいただくが、内容をまとめると次の5つのケースに分類できる。

 

(1)事業案の選定段階で停滞

 

新規事業テーマがアイデアレベルで決め手に欠き、進まない。

 

(2)意思決定における判断材料不足

 

新規事業テーマは選んだが、経営資源を投入すべきかどうか判断しかねている。

 

(3)アイデアの事業化段階で停滞

 

実施に向けて動いてはいるが、さまざまな障壁があり、予定通り進んでいない。

 

(4)実行・推進における優先順位が不明確

 

戦略の実行・推進体制の構築に際し、どこから手を付けるべきか整理できていない。

 

(5)新規事業立ち上げ後の低迷

 

新規事業を立ち上げたものの売り上げが伸びず赤字状態であり、事業の継続・撤退の岐路にある。

 

これらの解決策として、今回のテーマである事業性評価が有効となる。

 

 

 

 

 

【図表】外部・内部環境の事業性評価項目(例)

外部・内部環境の事業性評価項目(例)

※1…評価シェアは事業内容により設定
※2…「全国でみると縮小であるが、該当エリアでは成長」の場合などを考慮
出所:タナベ経営

 

 

客観的な評価を用いて成功率を高める

 

事業性評価は、次のプロセスで準備(条件設定)を進めていく。【図表】は代表的なモデルであり、実際には業種や業態、置かれた状況に応じて設定することが重要である。

 

まず、項目を大きく外部(自社を取り巻く環境)と内部(自社内)に分ける。次に、スコア化に向けて判定基準(【図表】では1~5段階)を設定する。最後に、設定した各項目の重要度順にウエート(重要度)付けを行う。

 

項目設定と同様に明確なルールはなく、状況に応じてウエートを付ける。この準備が完了次第、事業案に対して各項目の調査・評価を実施していく流れである。

 

10の項目で客観的な評価(スコア化)をした上で、最終は経営判断に委ねる。事業性評価は、客観的な判断材料を示すことを目的としている。同時に、分析・評価する際に点数の低い項目が見える化できることで、どこに改善点があるかが明確になる。

 

直感頼みの意思決定、声の大きな意見による挑戦ではなく、客観的な評価を「加味」して検討、活用することで、新規事業の成功率は大きく高まる。また、この切り口による分析は既存事業の点検の際にも有効だ。

 

限られた経営資源を有効活用し、将来の成長エンジンを構築するためにも、ぜひ事業性評価に取り組んでいただきたい。

 

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