新規事業の成功率を高める事業性評価
経営コンサルティング本部
2020年12月号
事業性評価が必要な背景
新規事業を検討、または取り組んでいるが閉塞感を感じている方にぜひ参考にしていただきたい戦略プロセスとして「事業性評価(フィージビリティースタディー)」を紹介する。
社会の成熟化・人口減少をはじめ、さまざまな構造的変化により、これまで自社の成長を支えてきた既存事業だけでは持続的成長が困難になっている。加えて、新型コロナウイルスの影響により環境変化のスピードはますます加速中だ。
このような状況下において、大半の企業は新規事業を検討しているが事業として立ち上げるに至っていない。または、立ち上げたものの、その事業が今後の既存事業として業績貢献するまでに至っていないケースが大半である。
新規事業はゼロからのスタートであり、ステップ1「事業検討」、ステップ2「事業開始」、ステップ3「事業の黒字化」、ステップ4「事業のスケール化」というプロセスがある。注視されていないが、このプロセスの中で成功率を高めるために最も重要となるのが、ステップゼロと1の間のステップ0.5「事業性評価」である。事業性評価のメリットは次の5つだ。
(1)事業可能性のスコア化
多面的・客観的視点からのスコア化により新規事業の可能性が見える化できる。
(2)判断基準の明確化
複数の事業案からどれを選択すべきかの客観的な判断材料となる。
(3)課題・改善点の整理
現時点で想定される課題・リスクの整理、今後に改善・強化すべき点が明確になる。
(4)事業計画の精度向上
事業計画を策定する際、事業性評価の結果を踏まえることで計画の精度が大きく高まる。
(5)戦略思考ができる人材育成
事業性評価から事業計画策定までを通して、多くの幹部人材の課題である戦略思考が鍛えられる。
新規事業は検討段階から軌道に乗るまでにさまざまな壁があり、最終的に成功するケースは少ないのが現状である。多くの経営者から「新規事業が進まない」といった相談をいただくが、内容をまとめると次の5つのケースに分類できる。
(1)事業案の選定段階で停滞
新規事業テーマがアイデアレベルで決め手に欠き、進まない。
(2)意思決定における判断材料不足
新規事業テーマは選んだが、経営資源を投入すべきかどうか判断しかねている。
(3)アイデアの事業化段階で停滞
実施に向けて動いてはいるが、さまざまな障壁があり、予定通り進んでいない。
(4)実行・推進における優先順位が不明確
戦略の実行・推進体制の構築に際し、どこから手を付けるべきか整理できていない。
(5)新規事業立ち上げ後の低迷
新規事業を立ち上げたものの売り上げが伸びず赤字状態であり、事業の継続・撤退の岐路にある。
これらの解決策として、今回のテーマである事業性評価が有効となる。