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コンサルタント レビュー

タナベコンサルティンググループの経営コンサルタントが、各専門分野の経営テーマに沿った戦略や施策を提言します。
コラム2020.09.30

業務の可視化でDXを実現し生産性改革につなげる
岡村 隆宏

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2020年10月号


 

 

【図表2】DXレポートから見る「2025年の崖」

出所:経済産業省「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月)、「IT人材需給に関する調査」(2019年4月)などより筆者作成

 

 

DXを成功に導く業務の可視化と業務フロー改善

 

DXの実現に向け、既存業務の可視化とDX後に合わせた業務改善が必須となる。具体的な失敗例として、契約書の発送業務のデジタル化を例に挙げる。

 

アナログ業務が残る会社では、事務担当者が契約書のデータをワードなどで作成し、データを紙に印刷して顧客へ発送する。仮にテレワークへ移行した場合、契約書の作成まではデジタルで対応できるが、社判や上司の印鑑といった書類への押印がないと送れないため、結局は事務所に出社して印刷・発送をしなければならない。このように、既存の業務フローを変えずにデジタル化だけを推進しても失敗に終わってしまう。

 

まずは、既存業務の可視化から始めることが重要だ。各業務フローにおける意味を理解した上で、報連相に具体性を加える5W1Hで業務の可視化を実施する。この段階において、既存業務の所要時間を計測することを勧める。ポイントは大きく三つである。

 

(1)業務目的の可視化

 

業務フロー作業ごとに目的を把握する。作業目的の把握とともに作業の必要性を把握することで、次のステップで実施する業務のスリム化に役立てる。

 

(2)業務担当者と関係者の可視化

 

該当する業務の関係者および関係部署を洗い出す。社外との連携を伴う業務の場合は、企業別に分析することで業務がより明確になる。

 

(3)判断項目・基準の可視化

 

デジタルの場合と人間の場合で大きく異なるのが、判断できるか否かである。人間は無意識に判断を行っており、この判断項目・基準を明確にしなければ、業務をデジタルに代替させることができない。

 

次に、業務フローにおいて古くなった要素を思い切って捨てていく。「決まっていることだから」「そう教えられたから」などの古い慣習だけで進めてきた業務があれば、それを見直して改善する必要がある。

 

最後に、部分的な改善にとどまることなく、大胆に改善を実施していく。ゼロベースで検討する姿勢で臨まなくては、DXを諦める原因になりかねない。「紙ベースの資料だから」「取引先が対応してくれないかもしれない」「担当者がデジタルに精通していない」などの“できない理由”を並べ、変革を止めてしまってはならない。

 

ここまで、DXの実現に向けた業務改善について述べてきた。DXは全企業・全産業におけるテーマであり、経済産業省が発表した「DXレポート」では、DXが進まなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告している。(【図表2】)

 

新型コロナ禍が収束すれば、企業のDXの必要性がなくなるというわけではない。DXの実現は、難易度が高く成果が出るまでに時間を要する。だが、一つの経営課題として捉え、全社一丸となって取り組みを継続できれば、必ず成果は表れる。今一度、自社の業務を細かく可視化し、DXを導入することで生産性改革につなげていただきたい。

 

 

※5W1H(When、Where、Who、What、Why、How)にHow much(いくら)を加えた用語。How muchを加えて相手に伝達することにより、ビジネスシーンにおける報連相の具体性が高まる

 

 

 

  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • チーフコンサルタント
  • 岡村 隆宏
  • Takahiro Okamura
  • 経営数値の的確な分析に基づいた生産性向上コンサルティングを展開。デジタル戦略の構築支援、RPA導入サポートなどでも幅広く活躍中。クライアント視点で現場と一体となった改善策を立案し、粘り強く着実に成果へつなげる実行力が、経営者だけでなく現場メンバーからも高い評価を得ている。
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