企業ブランディングで長く愛される仕組みをつくる
池谷 滋
2020年9月号
大変革期の今こそブランディングを
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界は経験したことのないスピードで変化を始めている。また、あらゆる分野で商品のコモディティー化(陳腐化)も進むと言われている。高付加価値を持っていた商品や人材は、AIに取って代わられ、今まで差別化の要因とされてきたものがなくなっていく。結果、同じスペックの商品であれば価格のみが購入の判断軸となる。人の在り方も同様で、例えばホワイトカラーと呼ばれる人たちがスキルとして生かしてきた情報処理や価値判断といった武器も、ただの棒切れになってしまいかねない。
こうした大変革期において重要なのは、世の中に自社を認知してもらい、価値観に共感してもらえるファンを増やすことによって、中長期的な売り上げや企業価値の向上につなげることだ。自社の3C「Customer(市場顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」と4P「Product(商品・サービス)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」を分析し、自社のブランドコアは何なのかを追求して、新たなブランドコンセプトを打ち出し育てていく必要がある。
企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)は常に変化していくものだが、企業ブランドコンセプトは色あせるものであってはならない。自社のブランディングを先延ばしにしてきた企業こそ、アフターコロナ時代となる今、ブランドコンセプトを突き詰めるチャンスである。
企業におけるブランドとは「世の中に提供する唯一無二の付加価値」であるが、これを製品やサービス(モノ)だけで作ろうとすると難しい。企業には、顧客に支持されてきた部分や、社員が培ってきた歴史がある。この部分を掘り下げていくことで、企業ブランディングのヒントが見えてくる。
本稿では、私がお手伝いした自動車小売業Y社のブランディング事例を基に、企業ブランド価値を高めるための取り組みを紹介していく。