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メソッド2020.08.20

トップライン対策へ舵を切る、営業担当者のパフォーマンス最大化による体質改善:森田 裕介

 

【図表1】新型コロナウイルスがもたらす顧客の価値観の変容

 

 

ウィズコロナにおける営業活動の在り方

 

新型コロナウイルスの影響を受け、経営者や経営幹部、事業責任者、営業責任者がトップライン対策(売り上げ対策)に頭を抱えている。業種間の差はあるが、新型コロナ禍前の売り上げに戻すことは並大抵の努力では成し得ないだろう。

 

有事において言えることは、既存の延長線上ではなく、抜本的な変化が必要ということである。その本質は、顧客の価値観の変化に合わせた対応だ。営業活動における顧客の価値観の変容について【図表1】に示す。

 

 

 

 

 

 

【図表2】1週間の時間配分基準の例

コンピテンシー策定によるパフォーマンスレベルの可視化

 

いま営業担当者に求められるのは、行動量と質の両面からの抜本的改善である。それは経営者・経営幹部も分かっているものの、掛け声のみにとどまっているため、営業担当者の行動が一切変わらないケースが多い。

 

原因として、「どう変化すればいいのか」という営業担当者ごとのパフォーマンスレベルが可視化されていないことが挙げられる。この解決策がコンピテンシー(業績や成果を上げる行動特性)の型決めである。コンピテンシーは次の三つの視点から定量・定性で設計していく。

 

(1)KGI・KPI・行動基準の確立

 

まずは職位別のKGI(重要目標達成指標)・KPI(重要業績評価指標)・行動基準の確立である。設計方法は、過去の業績を分析し、受注額、提案件数、商談件数とデータの集計レベルを一つずつ掘り下げていく。各歩留まりを見ながら適正な数値を職位別に設定するとよい。

 

ポイントは目標数値だけでなく、それを達成するための行動基準を明らかにすることだ。成果を上げる人材は、正しい評価をしなければモチベーションを阻害する要因となるため、KGIやKPIを評価にひも付けるのであれば制度そのものを見直す必要がある。しかし、有事において緊急度が高い場合は、策定したKGI・KPIに対し、期間限定の表彰制度を設けることが望ましい。

 

(2)活動時間の可視化

 

営業担当者の真の付加価値業務は顧客との接点。つまり商談であり、顧客との商談時間と成果は比例しなければならない。これを前提に考えると、業績・成果を上げる人材の活動時間を分析し、モデルとなる時間配分を可視化していくとよい。

 

分析は【図表2】に示す着眼点を基に実施していく。業務区分を大きく付加価値業務(成果を上げる業務)、準付加価値業務(成果を上げるための準備業務)、間接業務(社内業務など)、その他業務の4区分に分ける。

 

その後、各4区分に該当する業務を計10~20程度整理し、業務そのものを定義する。この業務区分の下、職位別に人材を選定し、約2週間から1カ月のモニタリング期間で活動時間を分析していく。その結果を基に、あるべき業務の時間配分と曜日別スケジュール(【図表3】)を策定する。

 

なお、タナベ経営では業務改善手法の一つとして、活動時間分析を実施することが多い。その際、営業成績上位者と下位者の活動時間分析を実施すると、営業成績下位者は付加価値業務の割合が低く、間接業務の割合が高いことがほとんどである。業務改善において、間接業務を圧縮し、付加価値業務をいかに最大化していくかがポイントとなる。

 

(3)定性要件の整備

 

(2)で述べた人材の定性情報を整備していくが、その着眼点は二つだ。

 

一つ目は営業プロセスの要件整備である。顧客リスト作成、アポイント、訪問、提案、クロージング、受注、アフターフォローの各プロセスにおいて、職位別の要件を整備する。ポイントは、営業プロセスにおけるボトルネックを明らかにすることである。

 

業績・成果を上げられない人材は、顧客リスト(顧客母数)から受注までの歩留まりにおいて、一定箇所の歩留まりが極めて低いことが多い。業績・成果を上げる人材と行動面において何が決定的に違うかを明らかにし、要件へ落とし込んでいただきたい。

 

二つ目は姿勢や態度、スキルの要件化である。例えば、顧客志向、計画力、問題解決力、コミュニケーション力、性格といった項目別にあるべき姿を定性的に整理し表にまとめる。

 

コンピテンシーは、実在型と理想型のハイブリッドで策定するとよい。実在型とは、実際に業績や成果を上げる社内人材の行動特性を指す。理想型とは、社内に実在はしないが、同業種と比べて望ましいとされる仮想人材から見た行動特性を指す。それらを組み合わせ、自社に合ったコンピテンシーを策定していただきたい。

 

 

マイクロマネジメントで営業組織の体質を改善

 

業績低迷時はマネジメントサイクルを短期化していくことがポイントである。営業担当者の動きを変えるのであれば、一人一人の徹底した行動管理を心掛けていただきたい。明白な目標や行動量が示されていなければ、部下の納得度が低い。前述のパフォーマンスレベルが可視化できれば部下の行動管理も容易である。究極は1日単位での行動管理だ。

 

業績の立ち上げに向けてリズムを作ることが重要である。ぜひ、コンピテンシー策定であるべきパフォーマンスを可視化し、トップライン対策へとお役立ていただきたい。

 

 

【図表3】業務の時間配分と曜日別スケジュールの例

 

 

 

 

Profile
森田 裕介Yusuke Morita
ライフスタイルビジネス研究会リーダー。大手アパレルSPA企業での経験を生かし、小売業を中心とした事業戦略構築、出店戦略、店舗改革を得意とする。理論だけでなく、現場の意見に基づく戦略構築から実行まで、顧客と一体となった実践的なコンサルティングを展開。「お客さまに喜んでいただけるまで妥協しない」をモットーに、業績向上を図っている。
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