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【コラム】

コンサルタント レビュー

タナベコンサルティンググループの経営コンサルタントが、各専門分野の経営テーマに沿った戦略や施策を提言します。
コラム2020.04.30

企業価値の診断に欠かせないデューデリジェンス:M&Aコンサルティング本部

 

企業の価値やリスクを詳しく把握

 

デューデリジェンス(デューデリ)とは、「Due」(当然)と「Diligence」(義務)を組み合わせた言葉で、投資やM&Aの際に行う、投資・買収対象の精査のことである。目的は、売り手であるセルサイド(譲渡案件)と買い手であるバイサイド(譲受案件)の情報量の格差(平たく言えば誤解)を解消し、双方の的確な意思決定と関係者への説明責任に備えること。買収監査とも言う。自社で、または専門家を起用し、事業・財務・法務・人事・その他の項目についての開示資料やヒアリングを基に精査を行う。

 

ポイントは、出資の必要性を十分に確認した上で、「社員が行うことと、外部の専門家に任せることを分ける」ことだ。開示契約や基本合意の下にデューデリを実施し、その結果に基づき最終的な交渉や出資の可否の判断を行い、投資やM&Aを実行あるいは棄却する。

 

たとえ相手が信頼できる企業であっても、出資・買収後に問題が発覚して取り返しがつかなくなる可能性があるため、デューデリは必ず行う必要がある。買い手は売り手の会社について限られた情報しか得られないので、本来知っているべき情報を得られずM&A後に損失を被るリスクを有する。このリスクは主に次の二つであり、両方を事前に予見し影響を見積もることが必要となる。

 

1.買収価額を過度に高く見積もる

 

(1)貸借対照表項目に含まれる不良資産(売掛金や棚卸資産、遊休資産)や簿外債務(未払給与、役員退職金など)の存在を発見できず、買収価額基礎となる時価純資産の評価を見誤る

 

(2)対象の収益性や成長性に対する評価を誤り、買収価額算定の基礎となる将来キャッシュフロー(資金の流れ)に対する評価を過大に見積もる

 

2.隠れた瑕疵・統合困難な課題を発見できていない

 

(1)法律上の問題(係争中の事件、訴訟の可能性、著しく不利な契約の存在)や税務上の問題(追徴課税の可能性)、環境上の問題(土壌汚染の可能性など)を抱えているにもかかわらず見落とし、買収後に問題が顕在化することにより損失を被る

 

(2)事業の存続に重要なキーパーソンの存在を見落とし、買収後のフォローを怠ったためにキーパーソンが流出する

 

(3)社内の業務やシステムが未成熟なため、必要な情報をタイムリーに得られず、買収後に現場を掌握・管理できない

 

(4)立地などの問題で買収後も事業の改善が困難にもかかわらず、それを見落とす、あるいは軽視してしまうことにより業績の改善が図れない

 

 

 

【図表】デューデリジェンス(デューデリ)の進行スケジュール

出典:タナベ経営作成

 

 

表明保証保険を活用する

 

どこまで細かくデューデリを実施するかは買い手企業の意向による。限られた時間内で調査するには限界があり、売り手企業全てを明らかにすることはできない。そのためにデューデリのリスク対策に活用される手法として、「表明保証保険」がある。

 

M&Aで譲渡契約を交わす際、主に売り手側が契約の内容などに関する事実について正確であるという表明を行い、買い手に保証する。違反した場合、売り手は損害賠償責任を負う。この責任(リスク)を保証するのが表明保証保険だ。

 

表明保証保険は、売り手と買い手の双方が合意した上で加入するのが基本である。損害賠償リスクを回避できる売り手はもちろんのこと、買い手側にもメリットは大きい。保険を購入することで売り手に表明保証違反の責任を追及しない姿勢を示すことができ、交渉をスムーズに進行できる。一方、売り手は自社の財政状態に不安がある場合も、保険によって信用力を補完できる。

 

デューデリでM&Aを成功させるポイント

 

1.パートナーとなる会社選び

 

中小企業のM&Aを経験したことがある専門家の雇用が重要である。単なる会計監査や契約書チェックだと勘違いしている“専門家”は、M&Aのノウハウを持っていないことが多い。デューデリをメインに行っているコンサルティング会社を選ぶことが重要である。

 

2.中小企業に強い専門家を選ぶ

 

大企業のM&Aばかり経験している“専門家”は、中小企業独特の慣行に慣れていない。例えば、名義株や株主変遷の問題解決に時間を費やす弁護士などが挙げられる。中小企業は、不明確で当たり前のことに時間を割く余裕はない。

 

3.メンバーの選定

 

M&A案件担当者、営業・人事部門の役職者、対象会社の強みに応じた部署の管理職の選定が重要である。その他、案件の特徴に応じて必要な関連部署の協力を仰ぐことも必要になる。

 

なお、チーム全員がデューデリの現場に行くのは難しいので、案件担当者が各メンバーから確認すべき要点を取りまとめ、代表してインタビューや情報収集を行う。

 

4.目的の共有

 

関わる全てのメンバーに、M&Aの目的(対象会社のどういう点に魅力を感じ、何が欲しくて買収するのか)と、買収後の事業計画(どのようなシナジーを期待し、どのような事業計画を立てているのか)を共有する。

 

5.買収後の事業計画の設計

 

M&Aの目的や買収後の事業計画、【図表】のスケジュールを踏まえて、各チームがどの部分を重点的に調査すべきか、明確に伝える。M&Aのデューデリは極めて短期間で多くの調査を行うため、調査・分析にはメリハリが必要になる。買い手が重視していない問題の調査に時間を費やしてしまわないよう注意する。

 

以上のポイントを踏まえ、デューデリを行っていただきたい。作業漏れ防止策としてチェックリストの活用があるが、案件によって調査すべき点は異なる。この業務をこなせばデューデリが完璧にできるというリストは存在しない。チェックリストを埋めることに意識が奪われ、本質を見誤る可能性もあるため、あえて使わないのも方法の一つである。

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