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メソッド2020.04.30

周年記念を活用したブランディングプロモーション:安永 信司

 

 

 

【図表1】2020年に「周年記念」を迎える企業数

出典:帝国データバンク「2020年『周年記念企業』調査」(2019年11月20日)

 

自社の歴史を振り返りさらなる飛躍の契機に

 

企業にとって節目となる年は、業歴や沿革を振り返る機会であり、自社の強みやアピールポイントを再認識する機会にもなる。

 

帝国データバンクの「2020年『周年記念企業』調査」(2019年11月)によると、2020年に「周年記念」を迎える企業は、全国に15万7507社を数える。このうち50周年を迎える企業は2万5870社と過去最多を記録しており、また、100周年を迎える会社は1176社、200周年は13社となっている。(【図表1】)

 

2020年を迎えるに当たって、すでに周年を祝う記念事業や、さらなる発展のための計画を立てている企業も多い。例えば、食品会社A社は創業当時の味わいやデザインを現代風にアレンジした100周年記念ブランドを発表した。熱エネルギー機器の製造・販売メーカーB社は、次の100年へ向けた新スローガンを策定し、2019~2021年の3年間でさまざまな周年事業を展開していくという。

 

企業を長い間、存続・発展させていくのは容易なことではない。だからこそ周年記念事業は、自社の記念となる日を華々しく祝うだけでなく、自社ブランドのイメージ向上や新たなプロモーションの機会にすべきだ。

 

さらには、創業当時からの歴史を再確認することで原点に立ち返り、この区切りを転換期と位置付けて事業戦略や方針を見直すことも重要である。周年記念は新たなビジネスチャンスであり、リブランディングのチャンスとも言える。

 

 

 

 

 

【図表2】主なコミュニケーションツール

 

社員を巻き込みプロモーションを検討する

 

実際に、どのように周年記念をチャンスに変えていくべきか。

 

まずは、自社の経営理念やスローガンを実行していくために、社員の意識のベクトルを一つに合わせることが重要である。そのためにもインナー(社内)・アウター(社外)両軸でのプロモーションを検討すべきだ。いくつか事例を紹介しよう。

 

国内電気通信会社のグループ会社C社は、10周年の節目に、さらに10年先(20周年時)のビジョンを社員に検討させ、漢字1文字で表現して会社案内やウェブページに掲載。社員の思いが詰まったツールとして活用することで、社員のモチベーションが上がり、売り上げも向上した。

 

また、アパレルの製造・販売を手掛けるD社では、130周年を迎えるに当たり社員から周年記念ロゴを公募し、130周年であることの認知度向上を図った。自分が考えたロゴが自社で使われる可能性があるということで、たくさんの社員が参加して公募企画は大いに盛り上がった。

 

両社に共通するのは、社員をうまく巻き込んでトップの思いを浸透させている点だ。社員に楽しみながら当事者意識を持たせ、周年事業の意義や目的、テーマやコンセプトなどの根幹の部分を理解・共有できる仕組みを考えることが重要である。

 

アウタープロモーションの事例としては、テーマパークを運営するE社が専用周年サイトを作り、周年記念キャンペーンやコラボ企画サービスを提供。集客数が増加した。厨房機器メーカーであるF社は周年記念ロゴをあしらった販促ツールを作成、営業時に持参しコミュニケーションツールとして用いることで販売力の強化を図った。

 

タナベ経営が周年記念事業をお手伝いさせていただいた西東京バスは、顧客・地域へのプロモーションの強化を目的に、50周年プロジェクトとして社員の原案や制服を忠実に再現したキャラクターを作成し、キャラクターのアイテムを販売・ノベルティー化。また、定期券購入時の購入額でキャラクターのアイテムが変わるような仕組みを施した。

 

結果として、定期券購入者は前年に比べ31.2%もアップ。作成したキャラクターは全国のバス会社キャラクターのナンバーワンを決定する「第1回バスキャラ選手権」で1位を獲得するほどの人気ぶりで、バス事業全体の認知度も格段に向上した。

 

この3社に共通することは、周年記念を行事にとどめず、プロモーションの手段に使って売り上げ向上・顧客獲得策として活用した点である。

 

インナー・アウタープロモーションを検討し、発信していく手段を【図表2】にまとめた。このツールをうまく連動させ、自社にはどの手段が適切なのかを検討いただきたい。社内イベントを実施し、自社の歴史を振り返って社員のモチベーション向上を図ったり、周年記念ロゴを作成して、コーポレートツールに印刷したりする方法もある。

 

また、コンサルティングを行う中で最近多い相談は、周年特設サイトの製作だ。冊子にまとめる社史の場合、会社の歴史を体系的に整理した貴重な資料にはなるが、社員に見られる機会は少ない。20歳代の若い社員はなおさらだ。ウェブページであれば、すぐにスマートフォンやパソコンで確認でき、情報が拡散される機会も増える。

 

 

周年記念プロモーションはいつから計画すべきか

 

結論から言うと、少なくとも周年記念の1年前から計画し、実施後も1年間は振り返りを続けることが重要である。可能であれば、3~5年計画で検討していくのがオススメだ。周年記念年の1~2年前から計画を練り、当年にはしっかりと決めた計画を実行し、終了後の1~2年で効果検証を行うというPDCAサイクルを回していくことが、周年記念プロモーションを成功に導くポイントである。(【図表3】)

 

ぜひ、計画性を持った周年記念を実施し、さらなる売り上げ拡大や事業発展の手段にしていただきたい。

 

【図表3】周年記念事業の推進スケジュール

 

 

 

Profile
安永 信司Shinji Yasunaga
クライアントの販促を支援するSPコンサルティング部門で活躍後、経営コンサルティング部門に配属。営業・人事教育を中心に実績を上げる。現職では企業成長に向けたさまざまなアイデアを駆使し、販促、プロモーション支援を推進中。お客さま視点でのコンサルティングを信条とし、ひた向きな取り組みで厚い信頼を寄せられている。
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