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コンサルティング メソッド

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メソッド2019.12.27

一つ一つの商談に全力を注ぐ:経営コンサルティング本部

 

 

 

コンサルタントは経営者から新入社員に至るまで、さまざまな立場の企業人と面談する機会が多い。その経験から感じるのは、若手営業パーソンが、顧客との面談を苦手としている点である。採用試験での面接では、自分の考えを理路整然と述べ、質問に対してもハキハキ答えていた人物が、入社して営業現場へ出た途端、要領を得ない話しぶりに終始する。実は、そんなケースが少なくない。そこで本稿では、若手の営業パーソンに向けて商談のポイントと心構えを述べていく。

 

 

なぜ、面談をするのか

 

 

そもそも、なぜ日時と場所を指定して、一定時間を設けてまで面談をする必要があるのだろうか。というのも、メールを使えば互いの考えを文章や添付資料で明確に伝えることができる。電話であれば、遠く離れた相手であっても言葉遣いや声の調子で細かいニュアンスを伝え合える。しかもスマートフォンのビデオ通話アプリを使えば、互いに相手の反応も目で確認できるのである。

 

だが、文章や音声、映像を通じた意思疎通と、直接対面するのとでは、受ける印象が大きく異なる。面談は体のあらゆるパーツを駆使し、時間制限がある中で目的を達成しなければならない。メールでは分からない顔の表情や体の反応、電話や映像だけでは得られない「場の空気」。だからこそ、真剣に相手を知りたい、思いを相手に伝えたい。その気持ちが双方で合致したときに面談の機会が生まれる。

 

たとえ面談が決まった時点で、相手から何を求められているのかが分からなくても、そう心配する必要はない。互いに面談を必要としていることは確かなのである。

 

 

相手との壁を崩す方法

 

互いに必要性を感じて面談の場を設けたとしても、若手営業パーソンの場合、相手のほとんどが初対面だ。人間は警戒する生き物であり、最初から相手に心を開くことはまれである。面談相手を高い壁に感じる若手は多いと思うが、それは相手も同じである。“壁の向こう側”にいる相手へ、いかにして自分を見せていくかが重要だ。

 

その際、若手の営業パーソンは自分をさらけ出すため、意気揚々と語りがちになる。ただ、自己紹介であれもこれも伝え過ぎると、相手は処理しきれず壁をさらに高くする恐れがある。まず両者の共通点を早く見つけ、相手に感情を込めて伝えるとよい。

 

例えば、その日の服装や持ち物、言葉のなまりであったり、互いの会社の創業時期や本社・営業所の場所、経営理念など。相手を承認しつつ、自身の情報を植え付けることで、場合によっては昔からの知り合いだったように感じさせることもできる。ビジネスの面談であっても場の雰囲気づくりは重要だ。壁を取り払い、意見を交わし、互いが求めていることに真に気付けるチャンスをつくる必要がある。

 

 

 

 

インタビュアーではなくコーディネーターである

 

顧客に対し、ただの下請け役になってはいけない。パートナーとして共に課題を解決していく間柄にならなければならない。

 

いかに相手の課題を引き出し、ポジティブな雰囲気をつくって「この人と一緒に取り組みたい」と思ってもらえるか。面談時がスタートであり、いかに相手の信頼を勝ち取れるかをコーディネートする必要がある。

 

 

共感を生むキラーフレーズ

 

相手の課題を引き出しつつ、自分をさらけ出す。面談の流れを説明してきたが、これらは相手との“共感”があってこそ成り立つ。ここでいくつか、共感を生むキラーフレーズやテクニックを紹介しよう。

 

1.「ここだけの話」

 

自分と相手の距離感を縮める言葉である。本音を伝える(本音のように伝える)ことは「私にだけ特別な話をしてくれている」と相手に思わせ、自分に親近感を抱かせる。

 

ただし、乱用すると相手がそれに慣れてしまうので、こちらの要望を特に強調したいときに使用するのがよい。

 

2.「なぜ?」

 

相手の話に「なるほど」と相づちを打つだけでは、「この人は本当に理解してくれている」と相手に感じさせることは難しい。「なぜ?」と疑問を呈することで話の発端や真意を深掘りし、「自分を知ろうとしているのだ」と相手に思わせることができる。

 

ただし、こちらも聞き方に注意しなければ「しつこいな」「面倒くさい人だ」と嫌がられる可能性もある。「何かきっかけがあったのですか?」「〇〇様はどうお考えですか?」と、「なぜ?」のバリエーションを事前に用意しておくとよい。

 

3.「歯を見せる」

 

こちらの印象を前向きに見せるテクニックである。歯を見せることで、自然とにこやかな表情を作ることができる。真剣さを相手に伝えようと口を真一文字に結んで聞き続けていると、緊張感を醸し出してしまい、明るい雰囲気をつくることが困難になる。初対面の相手ほど、歯を見せる回数を意識して増やすとよい。

 

 

次回のアポイント獲得のために

 

会話が進み、課題も明確になってきたところで、さらなる深掘りや提案書の提出など、次回訪問のアポイントを確約しておきたい。ここでよくやりがちなのが、「面談をまとめますと……」と、一連のダイジェストを先に話してしまうことだ。相手の課題を正しく理解しているかどうかを確認するための行動だが、これは避けた方がよい。それまでに積み上げてきた相手とのやりとりをたったの数十秒でまとめてしまうと、急に事務的かつ機械的な印象を与えかねない。せっかくの熱を帯びた会話が冷めてしまうのだ。

 

では、次の一手はどうすればよいのか。矢継ぎ早に「そろそろお時間となりましたので、○○様、スケジュール帳をご準備いただけますか?」と切り出し、会話を盛り上げたまま次回のアポイントを確定させる。もちろん、事前にこちらの候補日時は決めておき、面談のダイジェストは帰り際のあいさつ時に手短に確認するか、次回面談時の冒頭で話す。こうしたやりとりで次回の面談はほぼ確定できる。

 

初回の面談時間は、1時間が目安である。1時間では足りない、もう少し粘りたいと思う人もいるかもしれないが、顧客の貴重な時間を自分のために割いてもらっている事実を忘れてはいけない。目の前の顧客の1時間という限られた資源を大切に扱えない人に、どうして顧客の課題解決をサポートできようか。1回のご縁、1時間の重みのありがたさを感じて、面談という出会いを大切にしてほしい。

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