中期ビジョンとブランディングが 企業を変える
番匠 茂
2019年11月号
ブランディングで事前価値を高める
私は、ブランディングとは自社・商品・サービスの事前価値を高める取り組みだと認識している。
「取引して、初めて貴社が良い会社だと知りました」「貴社の商品を使用して良い商品だと分かりました」「貴社に入社して良い会社だと感じました」。確かにうれしい言葉ではあるが、重要なのは取引する前に自社の良さを理解してもらうこと(自社・商品・サービスの事前価値を高めること=ブランディング)である。
企業価値を高めるための取り組みの変化として、ここ20年間で他の機能と比較して最も変わっていなかった「販売・営業」のやり方が大きく変わろうとしている。「プッシュ型セールスからプル型セールスに変える」とかなり前から言われていたが、実際はガチガチのプッシュ型セールスが多く、大きな変化はなかった。
しかし、直近の3?5年を見ると、電話アポイントメントや訪問営業で顧客との接点を作ることにより会社訪問へとつなげ売り上げを獲得するプッシュ型セールスではなく、事前に自社の商品・サービスを知ってもらった上で購入を促すプル型セールスに変わりつつある(【図表】)。インターネットやSNSの浸透により、顧客が商品やサービスを時間をかけて知ったり、選んだりすることが可能になったからだ。
その結果、顧客は商品やサービスについて非常に詳しくなっており、余計な説明(プッシュ型セールス)はかえって不快に感じる。しかし、企業側は「昔のやり方で頑張れば頑張るほど顧客は離れていく」ということに気付いていないケースもある。
企業主体の営業から顧客主体の営業に変わる時代において、経営者や営業責任者は、従来の販売・営業方法を変えていかなければならない。
昔はテレビCMや新聞・雑誌への広告など、非常にコストが高い上に効果も見えにくい媒体が多かった。だが、現在は低予算で効果の高い、自社の顧客ターゲットに絞ったブランディング活動ができるようになっている。これもインターネット・SNSの浸透があってこそだ。これを活用しない手はない。
ビジョンを打ち出し、社員をワクワク・ドキドキさせ、ブランディングで顧客に事前価値を提供し、成長する。経営者にはそういったビジョン策定とブランディング活動に、ぜひ重点的に取り組んでいただきたい。
- タナベ経営
- 経営コンサルティング本部
- 副支社長
- 番匠 茂
- Shigeru Banjyo
- 長年にわたる営業部門での経験を生かし、各企業の経営コンサルティング、幹部人材の育成などで活躍中。トップ・幹部と一体になった実践的な取り組みにより、クライアントへの熱い思いをベースに進化を実現。数多くの成長企業を支えている。