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メソッド2019.09.30

社内プロジェクトは「3」で進行し、 成果を出す:水谷 好伸

 

プロジェクト成功のマジックナンバーは3

近年、企業において、中期ビジョン策定後に、ビジョン達成のための社内プロジェクトを立ち上げることが多くなった。目的は、組織の活性化やチームワークの強化を図り、ビジョン達成を推進することだ。

そうしたプロジェクトを成功に導くためのマジックナンバーは「3」である。次に、社内プロジェクトの実行推進度を高める三つの着眼を紹介する。

 

 

プロジェクトは3テーマ・3チーム

社内プロジェクトを実施する上で、まず気を付けたいのは、たくさんのプロジェクトを作らないことである。多くのプロジェクトを推進していたA社の事例を紹介しよう。

A社では、同時に五つのプロジェクトを稼働させていたため、二つのプロジェクトを掛け持ちするメンバーが2名いた。その2名は、通常業務に二つのプロジェクトが加わったため仕事が回らなくなり、プロジェクトの活動がおろそかになっていた。

いくつものプロジェクトテーマを作ることは簡単だが、実行・推進するのは現場の社員である。通常業務に加えて社内プロジェクトへも関わり、どちらも不十分な結果となってしまっては本末転倒だ。まずは、社内プロジェクトを三つに限定し、重点テーマを絞り込むことが大切である。

A社においては、半期が終了した時点で重点テーマを再検討し、プロジェクトを「3テーマ・3チーム」に変更。残りの二つのプロジェクトは次年度の重点テーマとして先送りし、複数のプロジェクトを掛け持ちするメンバーが出ないよう、チームを再編成した。

その後、3テーマ・3チームのプロジェクトメンバーは、役割を明確化したことで各自が成果を出しやすくなり、半年後にプロジェクトの目標を達成した。翌年度は先送りした2テーマに、新たな重点テーマを一つ加え、実行・推進している。

 

 

プロジェクト人数は3の倍数

B社では、社内プロジェクトをメンバー8名で実施していた。構成は、リーダー1名、サブリーダー1名、その他6名。リーダーとサブリーダー以外の6名の役割は、リーダーのサポート1名、サブリーダーのサポート1名、残り4名は手持ち無沙汰だった。

そこで、新たにメンバーを1名追加し、リーダー1名、サブリーダー2名、その他メンバー6名にして、一つのプロジェクトを3グループに、また実施する内容を三つに分けて取り組んでみた。すると、3グループ・3名ずつになり、やることも明確になったことで進捗スピードがアップ。結果、8名・1チームでは3カ月かかってもできなかったことが、1カ月で達成できた。

社員数が多い企業では、一つのプロジェクトテーマに多くの人数を割くことが可能ではある。だが、重要なのは、社内プロジェクトを推進し、成果を出すことだ。

そのためには、小人数でやるべきことに集中する必要がある。人数が多いだけで役割がはっきりしていなければ、「誰かがやってくれる」と思いがちになる。「役割」を与え、実行力を高めることだ。

プロジェクトメンバーの人数が、3の倍数である6名や9名になったとしても、それを細分化し、2班×3名、3班×3名という編成にすることをお勧めする。各班の実行策も三つに分け、スピード感を高めることで、推進力を上げることができる。

社員数70名のC社では、三つの社内プロジェクトを立ち上げ、各テーマを3名、6名、9名のメンバーで推進していた。特に、9名の社内プロジェクトには、部門の“ 横串” が刺されており、営業部3名、企画開発部2名、製造部3名、管理部1名で構成されていた。さらに、メンバーの役職もそれぞれ異なり、課長・主任・一般社員が含まれていた。

そこで、この9名を三つの班に分け、テーマも三つに分けて、達成期限を3カ月に設定。目標に向けて役割を実行・推進した。すると、細分化したことにより各人の役割が明確になり、営業・企画開発・製造などの部門間連携が強化され、情報共有がスムーズになった。

さらに、情報が共有化されたことで、メンバー以外の全社員にもプロジェクトの内容が周知され、全社員の協力の下、4カ月でプロジェクトの半期目標を達成することができた。

 

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プロジェクトの進捗確認は3カ月ごと

多くの企業では、年度単位で社内プロジェクトのテーマを決めて実行している。もちろん、1年間(12カ月)という区切りで成果・結果を出すことは、間違いではない。ただ、12カ月という長丁場では実行推進のメリハリがなくなり、ダラダラと進むことが多くなる。

D社も同様だったが、1年という期間で組んでいたスケジュールを、四半期(3カ月)、半期(6カ月)ベースに変え、それぞれの期間で目標を立てるように設定し直した。3カ月の進捗状況によって、次の四半期(=上期)の行動をブラッシュアップすることにしたのである。

するとプロジェクトメンバーは、四半期、半期でどこまで進めておかなければならないかを考えるようになった。「成果・結果=1年後」ではなくなったことで、進捗を細かく意識するようになったのである。

この進捗確認方法は、プロジェクトの進行にメリハリをつける意味もあったが、プロジェクトメンバーに、短期間(3カ月)で成果を出すリズムを身に付けさせるためのものだった。何をするか、具体的な内容を明確にし、短期間で成果を出す目標をつくることによって、どうすれば成果につながるかを考える習慣ができ、通常業務の改善にもつながった。

加えて、各プロジェクトの進捗状況と成果・反省を取りまとめ、3カ月ごとに経営会議で報告するようにした。結果、経営者・経営幹部がプロジェクトの進捗を把握できるようになったため、メンバーは有用なアドバイスをもらいやすくなった。もちろん進捗スピードも上がっていった。

社内プロジェクトは、中期ビジョンの達成だけでなく、組織力の強化や業務の改善、社員の意識改革をもたらす。プロジェクトがうまく機能していない場合は、ぜひ「3」を念頭に置いてテーマやチーム、人数、期間などを見直し、成果につなげていただきたい。

 

 

 

Profile
水谷 好伸Yoshinobu Mizutani
クライアントの成長を支える「熱血パートナー」として、常に全力投球で熱意あるコンサルティングを展開。「現場・現品・現実主義」に基づく、活用しやすい、業績先行管理の導入・定着などが高い評価を得ている。また、実践に向けた人材育成でも幅広く活躍中。
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