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【コラム】

コンサルタント レビュー

タナベコンサルティンググループの経営コンサルタントが、各専門分野の経営テーマに沿った戦略や施策を提言します。
コラム2019.07.31

「働き方改革」時代の人事戦略
~三つの視点で人事を変革させる~
松本 宗家

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2019年8月号


「働き方改革」が必要とされる背景

令和改元を前に、政府肝いりの「働き方改革関連法」の一部が2019年4月1日に施行された。その骨子は、内閣官房に設置された「働き方改革推進会議」が、非正規社員の処遇改善や賃金引き上げ、長時間労働の是正、転職・再就職支援、柔軟な働き方の環境整備、多様な人材の活躍など九つの分野に言及した「働き方改革実行計画」である。

なかなかメスを入れられなかった、「同一労働同一賃金の実現」や「長時間労働の是正」に踏み込んだ点において画期的と評価される改革だが、企業現場へいかに浸透させ、働く人々の暮らしが良くなる実感につなげていけるかが、これからの課題である。

この大改革の大義は「一億総活躍社会」の実現とされている。「『働き方改革』の目指すもの」は次の通りだ。

――我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。

「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。――

(厚生労働省ホームページ)

少子高齢化の進行により、日本の生産年齢人口は1995年の国勢調査をピークに、また総人口は2008年をピークに減少に転じている。高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は2015年時点で26.6%と、すでに4人に1人が高齢者だが、2020年には30%を超え、2065年には38.4%と推計されている。(【図表】)

【図表】国内人口の年次推移

出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(各年10月1日現在、出生中位・死亡中位)、厚生労働省「人口動態統計」

出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(各年10月1日現在、出生中位・死亡中位)、厚生労働省「人口動態統計」

経済活動の側面から見ると、急速な労働力不足が見込まれ、一般消費が先細る一方で、医療サービスなどの需要が高まることが予想され、働き方改革を通じて労働生産性と賃金を上げ、生産と消費の双方を支えていくことが重要な課題である。

人事制度改革は時流に合った経営課題

そんな背景の中、コンサルティングの現場において、人事領域の改善・改革のニーズが高まっている。法改正とその対応において“待ったなし”の大企業に比して、2020年4月まで適用に猶予があり、様子見の段階にある中小企業から、人事制度見直しの引き合いが増えているのである。

人事領域での働き方改革に連動するキーワードは、「生産性」「多様化」「柔軟化」が代表的だが、それぞれに企業の施策が考えられる。

(1)生産性
長時間労働や処遇格差の是正には、付加価値創造のために時間の配分方法を変え、生産性を向上させることが欠かせない。
【主な取り組み】
労働時間管理・指導、業務改善・効率化、組織・事業デザインの見直しなど。

(2)多様化
多様な人材同士が互いの事情を理解し、助け合える職場づくりが求められる。
【主な取り組み】
育児と仕事の両立、介護・傷病と仕事の両立、均等待遇など。

(3)柔軟化
ケア活動に従事しながら労働に参加したり、通勤の負担を減らして労働の質を高めたりするため、働く時間や場所を柔軟にする制度を導入する。
【主な取り組み】
働く時間の柔軟化(フレックスタイム、時間単位有休)、働く場所の柔軟化(テレワーク、サテライトオフィス)、所属の柔軟化(副業の自由)など。

各社は施策に取り組む際、この三つの視点を意識するとよい。そして、改革の理念を掲げて戦略的に進めていくことを、経営と現場が共有しながら実現することが重要である。

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