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コラム2019.06.28

「メンター制度」で 社内コミュニケーションの構造を変える
中尾 泰彰

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2019年7月号


【図表】メンター制度の仕組み
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「時間の管理」と「努力・支援の忌避」

限られた時間の中で、いかに成果を上げるか。昨今、「働き方改革=生産性改革」が各企業に求められており、その結果、企業の「時間」に対する価値観が大きく変化している。業務の優先度の軸に「時間」が据えられ、社員はミッションやタスクではなく、時間という目的で管理される。そのため、「少ない時間でいかに成果を上げるか」という価値観の働き方が増えた。

半面、新しいことに取り組んだり、異なる方法でやってみたりという試みや、「〇〇さんの手助けをしたい」といった支援型業務など、時間をかけても成果に直接つながりにくい業務が避けられる傾向も見られるようになった。

「変わる価値観」と「変われない自分」

「膨張型社員」が増えている――。これは、私が多くの企業を支援する中で感じた印象である。“ 膨張” とは、個人が変化する以上に組織の変化が速く、個々の社員がキャリア(職業・技能上の経験)の方向性を見いだせていない状態を指す。対応すべき業務が広がり続け、思考停止している状態とも言える。人間は太ると動きが鈍くなるように、ビジネスの現場も膨張すると考える力や行動力が鈍化する。

このケースに陥る企業の特徴は、何といっても中堅・若手社員の不平・不満が多いことである。

会社を取り巻く環境の変化が速いと、これまでにない新しい業務が増える。その変化に、自身のキャリアビジョンを合わせることができない。世の中のルールが大きく変わる中で、企業も社内の仕組み改革を急速に進めているのに、その変化についていくことができていないのである。

「伝える」と「伝わる」

「伝える」と「伝わる」。この違いは、コミュニケーションの主体が「自分」なのか、「相手」なのか、だ。この2つは分けて考える必要がある。

皆が多忙な現在においては、「伝える」ことに軸足を置いた発信が増えている。デジタル革命によるICT化の進展で、以前は対面で行っていたコミュニケーションの大半がデジタルにシフトしているからだ。手間暇をかけない必要最低限のコミュニケーションを続けた結果、人間関係が希薄化。「伝えている」ものの、相手に「伝わっていない」ことが増えている。

メンター制度とは

こうしたコミュニケーション不全の状況の中、「メンター制度」があらためて見直されている。メンター制度とは、新入社員(メンティー)に対して、異なる部署に所属する上司・先輩社員(メンター)が、仕事の進め方からモチベーション面に関してまで相談に乗り、サポートを行う制度である。(【図表】)

「メンター」(Mentor)の語源は、古代ギリシャ時代にオデュッセウス王(ギリシャ神話の英雄)の助言者や、その息子であるテレマコスの師を務めた「賢者メントール」の名といわれる。現在は仕事や人生をより良くするための支援者として、対象者へ指導や助言をする人を指すようになった。

職場におけるメンターとは、日々の業務のアドバイスではなく、社員のキャリアのアドバイスを行う存在であり、職業人生のモデルとしての役割を果たす人である。この存在が、今の企業には必要である。

こうした話をすると、「これまで社内の先輩が行ってきたことと何が違うのか」と思う人もいるのではないだろうか。確かに、“ メンター” という表現ではなくても、メンター的な役割を果たす人は多い。

例えば「落ち込んだとき、あの言葉で壁を乗り越えることができた」「自分の環境の変化に誰よりも早く気付いてくれた」「人としての根本を学ぶことができた」など、「その人がいたおかげで今の自分がある」と思える存在がいるはずである。それがメンターだ。

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