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コンサルタント レビュー

タナベコンサルティンググループの経営コンサルタントが、各専門分野の経営テーマに沿った戦略や施策を提言します。
2019.03.29

「ホールディング経営」を成功に導くポイント:経営コンサルティング本部

戦略と組織の関係性

「組織は戦略に従う」。これは、1962年に米国の経営史家アルフレッド・チャンドラーが著した『経営戦略と組織』の中に登場する有名な言葉で、戦略と組織の関係性を示したものである。

チャンドラーは同書の中で、米国の大企業4社(デュポン、ゼネラルモーターズ、スタンダード・オイル、シアーズ・ローバック)における組織改革の歴史を検証し、経営戦略の違いによって必要とされる組織形態が異なることを提言している。

彼は、「経営戦略とは、中長期的な業績目標を決め、目標を達成するために必要な人材などの経営資源を組織的・計画的に配分するということにある」としている。まさしく、戦略は組織に先行するということである。

タナベ経営でも、コンサルティングの依頼があった際は、クライアントに対して「経営とは変化をマネジメントすること」であり、それを実現するために事業戦略と経営戦略があり、「1T4M」という形で同様のことを提唱している。

ホールディング経営へ移行段階にある、あるいは検討中の経営者は、以上のような大きな視点からホールディングという組織形態を捉える必要がある。

※外部環境と内部環境の変化に対し、自社の固有技術(Technology)を市場(Market)にぶつける「事業戦略」と、その実現に向けヒト、カネ、マネジメント(Man、Money、Management)という資源を配分する「経営戦略」で目標を実現すること

〈 ホールディング体制に移行 〉

〈 ホールディング体制に移行 〉

「ホールディング経営」の意思を明確にする

ホールディング経営=手段、事業戦略=目的であり、ホールディング経営を選択するには中長期的な経営の大義に基づいて選択すべきである。

ホールディング経営を選択するに至った企業の主な戦略ビジョンを、外部環境と内部環境のそれぞれの変化の切り口で紹介する。

1.外部環境の変化に対応する戦略

(1)小さな市場でナンバーワンブランドを目指す
少子高齢化が進む日本では、大きな市場の創出が難しくなりつつある。また、すでに存在する大きな市場でも、大企業が激しい競争を繰り広げている。価格競争やコモディティー化が進む中、体力のある大企業は変化に対応できるが、中堅・中小企業は不利である。

従って、商品・サービスのカテゴリーやエリアなどの切り口で、自社がナンバーワンになれる小さな市場(勝てる場の発見)を目指す必要がある。

(2)多様な消費者に合わせた多様な戦略を生み出す
顧客ニーズが多様化する中、それに対する戦略と対策も多様化している。そのため、事業を一つずつ切り出し、事業ごとで市場環境の変化に対応する仕組みを構築すれば、より効果的な戦略・対策を打つことができる。各事業の役割は、真の顧客に共感し、そのニーズに適応する現場レベルでの戦略を柔軟に策定・実行する。

(3)柔軟・スピーディーな意思決定で差別化を図る
ある企業は、技術革新や消費者ニーズへの対応で、競合他社に後れを取るという課題を持っていた。機能別組織をとっていたその企業は、事業別に分社化することで、営業で得た情報を開発部門に伝達し、商品・サービスの提供を一本でつなぎ、スピーディーなサービス提供を実現した。分社化を選択した理由は、権限を委譲することで、より柔軟で機動的な判断を実現するためである。

2.内部環境の変化に対応する組織

(1)オーナー経営から組織的経営への移行
事業承継を機に、オーナー経営から組織経営へ移行する企業は多い。理由は、創業オーナー社長の経営スタイルを、2代目、3代目社長は体現することができないからだ。創業オーナー社長の経営スタイルは、経験と勘に基づく事業センスと、実績に裏付けられたトップダウンの指揮命令系統(マネジメントシステム)があってこそだが、2代目、3代目にはそれがない。

そこで、従来の経営スタイルから脱却し、客観的根拠に基づいて意思決定や戦略策定を行う組織経営と、グループガバナンス体制の構築が必要となる。

(2)新規事業開発・多角化を実行しやすい組織体制
企業の持続的成長・発展を進めるために、小さな市場で新規事業を創出し、多角化させる事業戦略が有効である。自社内で新規事業の開発機能を持たせる方法も一つだが、戦略的M&A(合併・買収)という形で進める方法もある。

新規事業をホールディング会社の下に付けていくことで、各事業会社の財務状況に影響を与えず、建て増しをしていくことが可能な戦略モデルである。

(3)経営人材の育成や意識改革を進める
日本生産性本部の茂木友三郎会長(キッコーマン取締役名誉会長)は、2018年の年頭所感で「日本の労働生産性は米国と比較して5割程度しかない。生産性向上は喫緊の課題である」と述べ、生産性改革の核心課題の一つは人材育成であるとしている。

教育の整備も一つの方法ではあるが、ホールディング経営により「オーナーシップを醸成する意識改革の断行」で人の成長を目指すことも重要だ。部門長から経営者となることで、権限委譲が進められ、その人の成長性を飛躍的に高めることができる。実際の経営者の話を聞いても、「経営者というポストに育てられた」という人は多い。

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ホールディング経営を有効に機能させる

これまで、経営者の目線でホールディング経営を捉えてきた。しかし、ホールディング経営を成功に導くための最も重要なポイントは、現場で動く社員である。ホールディング経営に移行することで、社員の負担は各段に大きくなる。事業部制での部門長は、ホールディング体制では経営者となるのだ。企業の成長・活躍は社員の成長・活躍にかかる部分が大きくなる。

企業経営では社員のことが置き去りにされがちであるが、社員がわくわくできるビジョンや社員が活躍できる仕組みなど、社員が自社での将来を感じられるようなメッセージを発信し、成功に導いていただきたい。

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