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コンサルタント レビュー

タナベコンサルティンググループの経営コンサルタントが、各専門分野の経営テーマに沿った戦略や施策を提言します。
2019.02.28

「インナーブランディング」による
自社の価値の“見せる化”
経営コンサルティング本部

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2019年3月号


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自社の強みと原点を明確にする

最近、コンサルティング需要が高まっているテーマとして「インナーブランディング」が挙げられる。インナーブランディングとは、企業が経営理念やビジョン、価値観などを従業員(社内)に理解・浸透させる啓発活動をいう。例えば、社員を中心に「ブランドブック」という小冊子を制作し、社風改革や人材育成に活用するといったものだ。

インナーブランディングのニーズが増えている要因として、会社の長期的な将来像を描くに当たり、あらためて立ち返るべき自社の強みや原点を明確にしたい、という思いがあると考えられる。そもそも“ブランド”とは、「相手との約束」である。「このレベルの品質は絶対に守る」という決意表明だ。よってインナーブランディングは、社員のものの見方や考え方、行動の基準線を「見える化」し、そこを目指す活動を継続することを意味する。このプロセスをトップだけでなく、若手を含めた社員参画型のプロジェクトで進めていくことがポイントとなる。

プロジェクトは6~12カ月で行われることが多く、6~10人のメンバーで構成される。私たちがサポートする内容としては、

1.ブランドの定義のインプット
2.自社の「価値」の検討
3.価値の「見える化・見せる化」

――というステップとなる。

 

 

Step1:ブランドの定義のインプット

ステップ1の「ブランドの定義のインプット」は非常に重要である。多くの社員が「ブランドは自分たちと無関係である」と考えているからだ。ブランドは、大手アパレルや世界的に有名な企業しか持つことができないと勘違いしている。しかし前述の通り、ブランドとは「相手との約束」であり、どのような企業でも必要となる。また、線引きした品質を維持向上しようとする活動を「ブランディング」と言い、日常的・継続的に行っていく必要があるのだ。

このプロセスには、時間がかかることもある。活動を受け入れられないメンバーも一定数いるからだ。納得が得られないとプロジェクトは進まない。その大きな要因の一つに「言葉の壁」の問題がある。実は、「自社の強みを磨き、顧客や社員に認知を促し続けることは大事である」ということに、反対するメンバーはほとんどいない。だが、その工程を耳慣れない言葉で説明すると、「自社にはそぐわない」と感じることがあるのだ。

例えば、私はあるクライアントから、「インナーブランディング」という言葉に最後まで拒絶感を示されたことがある。その際は「店舗サービスの強化運動」と平易な表現に言い換えたことで気持ち良く受け入れられたが、このように伝える言葉を変えてみることも一つの手である。

Step2:自社の「価値」の検討

プロジェクトメンバーは、プロジェクト後にブランディング活動を全社展開する中心メンバーとなる。自分の言葉でしっかりと他者に語り掛け、動かしていく必要がある。言葉選びと言葉に対する納得性を高めることは大事である。

その意味で、ステップ2の「自社の『価値』の検討」は、自らが考え、言葉にする大事なプロセスとなる。

企業のトップとディスカッションを行うと、多くの人は自社の価値や強みを正しく把握されており、世の中の課題やニーズにどのように貢献すべきかも分かっている。よって、インプットツールとして社員向けのブランドブックを作成しようと思えば、すぐに完成させることも可能である。

しかし、このプロジェクトの重要な目的の一つは「社員による社員育成」である。トップがピンポイントで自社の品質向上を訴えることも大事だが、加えて草の根運動的に社員同士が話し合い、考える場を増やすことも行わねばならない。この活動の中心となる人のことを「エバンジェリスト」(伝道師)と名付けている会社もある。いずれにせよ、プロジェクトメンバーはより深く自社の価値について考え、自分の言葉で語ることが求められる。

自社の価値を明確に言語化し、見えるようにすることも難しい。自分たちが当たり前だと思っていることを、顧客や世間がどう評価しているのかが分かりにくいからである。そこで、創業の思いや経営理念、トップインタビューや顧客へのアンケートから深掘りを行う。提供する商品やサービスをモノではなく、「コト」で捉えるようにしていく。

Step3:価値の「見える化・見せる化」

ステップ3では、他者が分かるように、価値を「見える化・見せる化」していく。ゴールであるブランドブックの制作を念頭に、文字による表現、絵や概念図などを検討する。ポイントは、誰が初めて見ても作り手の意図が伝わるか、である。ここで、またもやメンバーが頭を悩ますことになる。

この時点で、多くのプロジェクトにおいては、品質が格段に向上するダイナミズム(活力)が生まれる。コンサルタント主導で行われていたものStep3:価値の「見える化・見せる化」が、メンバーの理解の深まりとともに、オリジナルの表現や考えが出てくるのである。私たちが想定していた着地点よりも、はるかにワクワクさせられるアイデアが出てくる。各メンバーの顔つきに変化が見られるのも、この辺りからである。

最終的には、オリジナルのブランドブックが出来上がる。それと並行して、どのように活用するかもプロジェクト内で検討し、トップの承認を経て、実際の活動に展開していく。例えば、朝礼やミーティングでの唱和、小集団活動での改善の着眼点として活用したり、異常事項やクレームが起こった際に「ブランドブックの記載事項から何が外れていたから、問題が起きたのか」を具体的にディスカッションしたり、などである。

自分たちが一生懸命、考え抜いて形にしたブランドブックには愛着が湧くものだ。通常の指示命令で行われる業務とは異なり、プロジェクトメンバーの全社展開活動への熱意は、目を見張るものがある。

ブランドブックは社員だけでなく、顧客や仕入れ先、協力会社、就活生にも配布されることが多い。商品やサービスの品質向上に対する世の中への決意表明は、前向きに評価される。また、社員の家族に配ってみたところ非常に評判が良く、あらためて自らの仕事にプライドを持つことができたという話も聞く。

企業は、「世の中に価値を提供して利益を得る組織」と定義される。利益を得るほどの価値を約束するとすれば、インナーブランディングは社内外への決意表明として、非常に有効な方法であると言えるだろう。

 

 

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