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コンサルタント レビュー

タナベコンサルティンググループの経営コンサルタントが、各専門分野の経営テーマに沿った戦略や施策を提言します。
2018.08.31

改善活動の「本当」の意味
市川 淳

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2018年9月号


 
何のために5Sをやるのか
 
 
私は今、ある海運会社の職場改善活動に取り組んでいる。現場や事務所の5S、社員の業務効率化など、現場そのものと働き方の両面から、より良い職場づくりを行うことが課題だ。
 
海運業という業種柄、その対象エリアは広い。例えば、5Sと言っても船着き場近辺や倉庫、車庫、駐車場、詰め所、休憩所と数棟の建屋……など、広範囲に及ぶ外の区域を回らなければならない。シャシーや包装材、コンテナ、鉄くずといった大規模な不要品やストックが日々発生する中で、規則立てて整然と管理していくのは非常に骨が折れるものだ。
 
特に5S活動は、日々継続していくことが肝要となる。従って現場の作業者の動機付けが非常に重要である。作業現場の清掃活動と捉えられがちな5S活動だが、「何のために5Sをやるのか」を何度も何度も、しつこいほど繰り返し伝え、不備を指摘し、成果を正当に評価していくことで、少しずつ改善への意識が生まれてくる。
 
そうすると、何も言わなくても現場の一人一人が、自らの創意工夫で現場の不備や非効率さを是正していくようになる。5S活動の精度を上げるだけでなく、「効率的に作業を行うには、どうすればよいか」「皆が喜ぶためにも、何をすればいいのか」など、職場をより良くする意識が生まれる土壌が出来上がる。
 
本当の“改善”とは、5S活動の結果、「目の前の景色が変わる」ことによる改善体験を積むことで、その人の働き方の意識が変わることにある。そして、目的意識を持った前向きな社員の存在が、職場を明るく変えていく。
 
 
 
その取り組みから、社員の姿が見える?
 
 
「カイゼン」と聞くと、どうしてもトヨタ生産方式のような合理化の方法論に終始しがちである。
 
以前、私はある工場のマネジャーを務めていた。当時は、“カイゼン”と称して合理的な工程組みや歩留まり向上、またロスカットのための施策を主導的に実践していた。貴金属加工の工場だったため、特に「切り粉」(加工時に発生する切りくず)の管理が原価管理上、重要だった。
 
切り粉は「減り」という用語で管理していた。元の素材である金やプラチナが最終製品になった時、加工前に比べて何パーセント減ったかという管理である。通常は10%ほどだが、これを9%にするだけで利益率が大きく変わってくる。
 
そのため作業服に付着した切り粉を振動機で落としたり、空気中に舞った粉をエアダクトで集塵したり、下水をろ過したりなど、目に見えない粉まで回収するべく、努力していた。しかし、こうした管理は人の行動を制限することはできても、人の行動自体を変えることはできなかった。
 
私は試行錯誤をしていた中で、1%の改善は、実は微妙な作業方法や工具の管理・工夫で簡単に実現できるレベルだと気付いた。現場の従業員と向き合い、彼らの意識と行動を変えるだけで、抜本的に解決できるものだと分かったのである。
 
結局、私はマネジャーとして、そこで働く人たちの姿を見ず、方法論ばかりに目を向けていたのだ。カイゼン活動に取り組む管理者は、実際に現場で働く人たちの姿が見えているだろうか。変えるのは方法論ではなく、実行する従業員の意識と行動にあるという視点をぜひ持ってほしい。
 
 
 

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