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メソッド2018.07.31

変化するファミリーマーケット、ママのツボを押さえよう!:マーケティングコンサルティング本部

 

現代ファミリーの生活実態

1986年に「男女雇用機会均等法」が施行されて32年が経過した。これまで3度の改正が行われ、目まぐるしく変化する生活環境に応じて整えられてきたことを示している。

バブル崩壊以降(1997年ごろ~)、専業主婦であることがステータスだった時代は終わり、リーマン・ショック(2009年ごろ~)で節約志向に拍車がかかった。その後、アベノミクス(2012年~)がスタート。景気は上向きに転じたが、実質賃金が低下し、企業の人手不足もあって共働き世帯が増加した。(【図表】)

 

 

【図表】共働き世帯と出生数の推移

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出典:厚生労働省「人口動態統計」、労働政策研究・研修機構「早わかりグラフでみる長期労働統計」
※「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」とは、夫が非農林業雇用者で、妻が非就業者(非労働力人口及び完全失業者)の世帯
※「雇用者の共働き世帯」とは、夫婦ともに非農林業雇用者の世帯
※2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果

 

 

一方、2016年の年間出生数が初めて100万人を切った。が、共働き世帯の増加で待機児童問題が持ち上がった。また、最近の新しい傾向として、働き方の多様性を認めるワーク・ライフ・バランスへの理解も広がるようになった。

 

 

「今どきママ」のニーズと価値観

共働き世帯が増えたとはいえ、いまだ家庭における母親の割合は大きい。ファミリーマーケットを顧客ターゲットとする企業は、決定権者である「ママ」たちを押さえる必要がある。

しかし、先述した環境変化に付随して家族の在り方が多様化し、ママの趣味・趣向やトレンドにも変化が生じている。従来の単純な年齢マーケティングは通用しない時代に入ってきており、求められるニーズも多様化しているのだ。

「今どきママ」たちは、業種も働き方も細分化している。また自ら働いて収入を得ているため、「お金で解決できる手段」が選択肢の一つとして増えた。さらに、「頑張り過ぎない」というライフスタイルに加え、“ママタレ”(結婚・出産後も芸能活動を続ける女性タレント)の露出増加で「自己実現したい」「所帯じみたくない」など、いつまでもキラキラ輝いていたいという価値観を持つようになった。

社会進出に伴って仕事での承認欲求を持つ女性が増え、初婚・初産年齢も右肩上がりだ。母親といっても、専業主婦で子どもを幼稚園に通わせている人と、働いて子どもを保育園に預けている人では、ライフスタイルも子育てに関する考え方も異なる。従って、母親という一つのカテゴリーにはめた画一的なプロモーションではなく、個々に合わせた訴求が必要である。

 

 

市場参入の糸口

ファミリー市場を、これまでマーケットとして捉えていなかった企業は、一度考えてみてほしい。大人向け商品を子ども向けに改良するなどの「新規市場開拓」「商品開発」、ファミリー層向けのにぎやかなイベント企画を通じた「集客強化」、次世代の育成に向けて子どもの時から商品やサービスに触れさせる「認知向上」「ブランディング」など、自社の販路拡大の一手として検討する余地があるのではないだろうか。

ファミリーマーケットへの新規参入を検討するに当たり、ニーズが自社商品の強みの中にあるのか、もしくは新たに創造することができるか、などを事前に調査することが重要である。その上で、市場規模や成長率、外部環境などを見極めながら、段階を進めていく。

 

(1)市場・現場の声から現状を分析する

消費者ニーズを理解するためには、まず現状を把握する必要がある。調査方法としてはターゲット層(母親)へのアンケートやグループインタビューなどがあるが、とりわけグループインタビューを推奨する。

会話の中に出てくる余談も必要な要素であり、アンケートによる一問一答では得られない情報が手に入るケースがある。実際、対面式で母親たちの声が聞ける場は貴重で、この場から商品開発やモニター調査に発展することがある。母親を取り巻く環境や悩みとなる課題を抽出し、自社の商品・サービスの特徴が生きる使用シーンやメッセージの伝え方の模索などを行う。

 

(2)自社のコアコンピタンスを探る

ニーズを踏まえ、自社が保有する経営資源をどのように活用することで課題解決がなされ、より際立つ特徴が生きてくるのか。現在実行している戦略において商品やサービス、ターゲットのミスマッチは起きていないか。外部環境を分析した上で見えてくる、差別化につながる強みは何か。これらの要素から、勝てる市場とコアコンピタンス(核となる強み)を的確に見極める必要がある。

 

(3)狙うべき参入ルート・手法などについて戦略を策定する

ターゲット・目的・コアコンピタンスを明確にした後、その目的達成に向けたソリューションを戦略として体系化する。顧客とのタッチポイント(接点)をどの販路で構築していくのか。どのように商品特性を見せていくのか?顧客接点は1つである必要はないが、その際にあくまで顧客視点であることが重要である。「消費者がどのような状況下でその商品・サービスに触れるのか」に応じて受け手の解釈が異なる場合もあり、注意が必要だ。

例えば、乳幼児を子育て中の母親が対象者であれば、子育てにかかりきりで外出する機会が少ない、外出しても着替えやおむつ、おやつなどの荷物が多く、子どもに手がかかるといったライフスタイル特性がある。そのような環境下で商品を訴求する場合、店頭がよいのか、ネットがよいのか。店頭を選んだ場合、じっくりパッケージ内容の説明文を読み込む余裕がないため、感覚的に商品特性が伝わるような設計にするなど、ニーズや課題といった前提条件を押さえた上で最適な戦略を構築する必要があるだろう。

 

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