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【コラム】

経営者に贈るアドラー心理学の知恵:岩井俊憲

18万人以上にアドラー心理学の研修・講演を行ってきた岩井氏が、リーダーシップ、コーチング、コミュニケーションの観点から経営に必要なマインドとスキルについて解説します。
コラム2019.12.27

Vol.3 経営におけるマインドとスキル3


2020年1月号

 

 

今回のテーマは、「相互尊敬・相互信頼の関係づくり」です。生産性(スキル)を補完する意味合いでの人間性(マインド)を強化する知恵について、アドラー心理学の立場から分かりやすくお伝えします。

 

 

根本的な意識改革を

 

私が長年憂いている事象があります。企業内のパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、家庭での夫婦間のDV(ドメスティックバイオレンス)、親の子どもに対する虐待、学校内のいじめなどの、人間の尊厳を踏みにじる事件が後を絶たないことです。メディアで騒がれ、それなりの対応もできているはずなのに、次々と事件が報道されています。

 

アドラー心理学では、このような不幸な出来事は、人間に対する尊厳に欠けた行動だと見なしています。信頼している部下にパワハラ・セクハラをするなどあり得ないし、愛するパートナーに暴力を振るって問題解決を図ろうとすることもないし、親しい友人、あるいは同僚教師をいじめることなどないはずです。

 

さらに言えば、人間関係をタテの関係で捉えて当たり前だと思っている人たちこそ、このような不祥事を起こすとも考えられます。私が知っているある会社の社長は、社員を「連中」とか「奴ら」と呼び、対応も完全にパワハラでした。むべなるかな、社員の退職が相次ぎ、心ある社員たちからは猛反発を受けて、彼は社長の座を退かなければならなくなりました。

 

アドラー心理学では、役割や立場の上下はあっても、本来「人間の尊厳において上下はない」との立場から、ヨコの人間関係としての「相互尊敬・相互信頼」を推奨しています。ただ、「尊敬」の言葉を使うと、どうしても「尊び敬う」という「下の立場から上の立場の人を仰ぎ見る関係性」と見なされるので、私は「リスペクト」と表現しています。本誌2019年11月号の100年経営対談(アドラー心理学のポジティブ思考を経営に生かす)では、「尊敬ではなく『リスペクト』こそが、求められるマインド」という言い方をしました。

 

「リスペクト」に対する私なりの定義は、「人それぞれに年齢・性別・職業・役割・趣味などの違いはあるが、人間の尊厳に関しては違いがないことを受け入れ、礼節をもって接する態度」としています。この態度こそが、共同体(ゲマインシャフト)的な要素も併せ持つ機能体(ゲゼルシャフト)である企業にとって欠かせないマインドと位置付けたいのです。そして、この意識改革を成し遂げない限り、企業・家庭・学校などでの不幸な事件をなくすことはできないと思っています。

 

 

 

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