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【コラム】

経営者に贈るアドラー心理学の知恵:岩井俊憲

18万人以上にアドラー心理学の研修・講演を行ってきた岩井氏が、リーダーシップ、コーチング、コミュニケーションの観点から経営に必要なマインドとスキルについて解説します。
コラム2019.12.16

Vol.2 経営における マインドとスキル2


2019年12月号

人間性重視の日本的経営
VS
グローバリズムの成果主義

かつて「日本的経営」が“昭和の高度経済成長期を支えた仕組み”として、もてはやされた時期がありました。人間性を優先し、その結果として会社の業績が向上するという考え方です。米国の経営学者、ジェイムズ・C・アベグレンが著書『日本の経営』(1958年、新訳版は日本経済新聞社)で唱えた三つの特徴、「企業別組合」「終身雇用」「年功制」は、“日本的経営の三種の神器”と礼賛されました。社員が職場に居心地の良さを感じており、結束感・仲間意識が満たされ、公平感もあるという組織風土が、多くの日本企業にあったのです。 

ところが、1991年2月のバブル崩壊後、“仲良しグループ”的な日本的経営は否定されました。そして行き着いた先は、1995年ごろから各方面で取り入れられた「成果主義」でした。

職場では個人主義的な色彩が強まり、協力者が、仲間が、ライバルになりました。助け合うべき職場が競争的な雰囲気に変わったのです。人間性が軽視され、それに代わって極端な“生産性イズム”が善しとされました。この背景には、新自由主義の経済思想をベースにしたグローバリズムが存在していました。

やがて、成果主義は職場環境の悪化をもたらしました。成果主義に基づいて設計した人事制度が導入された結果、組織内の競争が激化し、職場の人間関係がぎくしゃくするケースが増えたのです。これが、従業員にメンタルヘルス上の問題を多くもたらしていることは、ここで取り上げなくても皆さん、よくご存じでしょう。

今回は、人間性(マインド)と生産性(スキル)という二つの軸のどちらが重視されてきていたかを振り返り、次回(2020年1月号)につなぐ襷の回とさせていただきました。次回は、生産性(スキル)を補完する意味合いでの人間性(マインド)を強化する方策を、アドラー心理学の立場から分かりやすくお伝えしていきます。

「アドラー心理学」とは
ウィーン郊外に生まれ、オーストリアで著名になり、晩年には米国を中心に活躍したアルフレッド・アドラー(Alfred Adler、1870-1937)が築き上げた心理学のこと。従来のフロイトに代表される心理学は、人間の行動の原因を探り、人間を要素に分けて考え、環境の影響を免れることができない存在と見なす。このような心理学は、デカルトやニュートン以来の科学思想をそのまま心理学に当てはめる考えに基づく。一方、アドラーは伝統的な科学思想を離れ、人間にこそふさわしい理論構築をした最初の心理学者である。
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筆者プロフィール

ヒューマン・ギルド 代表取締役
岩井 俊憲 (いわい としのり)
1947年栃木県生まれ。早稲田大学卒業後、外資系企業に13年間勤務。1985年㈲ヒューマン・ギルドを設立、代表取締役に就任。アドラー心理学カウンセリング指導者。中小企業診断士。著書は『「勇気づけ」でやる気を引き出す!アドラー流リーダーの伝え方』(秀和システム)ほか50冊超。

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