TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【メソッド】

レジリエンス戦略

「低成長×非連続×高速変化」という経営環境下で、自社をしなやかにアップデートしていくための「レジリエンス戦略」について提言します。
メソッド2022.05.20

vol.1 レジリエンスカンパニーになるための基本戦略①

条件4.【経営システム】OODAループ思考による意思決定モデルの進化

不確実性に翻弄される環境下では、スピード重視の経営こそが競争優位性を高める重要な要素となります。そのためのマネジメント手法として、「OODAループ思考」が求められています。

 

OODAとは
ビジョンの実現・目標の達成に向け個々の(現場の)意思決定者がリアルタイムでデータを収集し、この瞬間に起きている環境変化に合わせて、現場レベルで判断・実行することにより、組織全体で目的を達成していくための意思決定プロセス

 

OODAループとは、米国の軍事戦略家であるジョン・ボイドによって提唱された理論であり、Observe(観察)、Orient(情勢の判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)という4要素で構成されます。

 

現場情報に基づいた即断即決型の「即興対応」が競争優位性の新たな源泉であり、それを可能にするのが、「OODAループを組織的に素早く回す」ことです。環境変化に即時対応できる次世代の組織を築くためには、OODAループ思考を取り入れ、組織として取り組むことが求められています。

 

条件5.【財務・収益モデル】リバウンドしない収益構造と効率重視のKPIモデル

コロナショックによる需要減は長期化する見込みであり、企業経営においては「効率的に利益・キャッシュを生み出す体質」への改革が必須となっています。

一方、対症療法的なコストダウンではなく、効率的に収益性を高めるための投資を進める企業もあります(テレワークの導入・拡大など)。ウィズ・アフターコロナ時代には、次の3つの着眼で財務・収益改革に取り組むことが必要です。

 

①損益分岐点を軸としたリバウンドしない収益構造改革

レジリエンスカンパニーが目指すべき損益分岐点比率は70%以下です。企業の成長段階で損益分岐点比率のバランスが崩れることがあっても、早期に70%以下に復元させる力を持っているのがレジリエンスカンパニーの条件です。

 

②CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)による資金効率の最大化

CCCとは、原材料などに資金を投入してから売り上げを回収するまでの期間(運転資金回転期間と同義)です。計算式は「売上債権回転日数+棚卸資産回転日数―支払債務回転日数」となります。

CCCが長ければ、より大きな資金が在庫や売掛債権に滞留し、売り上げが増えてもなかなか手元に戻らないため、次の設備投資に回す資金も確保しにくいことになります。逆にCCCが短ければ、売り上げの伸びにキャッシュの増加が伴い、次の投資機会へ迅速に対応できるという好循環が生まれます。

 

③ROICによる投資効率の評価

事業性評価において、効率的に利益を上げられているかを測る指標として注目されているのが、ROIC(投下資本利益率)です。ROE(株主資本利益率)、ROA(総資産経常利益率)の分子が純利益(または経常利益)であるのに対し、ROICの分子はNOPAT(税引き後営業利益)です。

 

つまり、有利子負債と株主資本を投下して、どれだけ事業で利益を上げることができたのかを測る指標であり、事業の形態にかかわらず、平等に事業のパフォーマンスを測れる点で注目されています。

 

 

日本の上場企業(銀行、金融、保険、証券、先物などを除く)のROICは平均約6%といわれています。付加価値アップにより「価格プレミアムを乗せる」、あるいは「製品をより効率的に生産する(コスト削減、資産効率の改善)」ことでROICを向上させることが重要になります。

 

 

※本コラムはタナベ経営主催「2021年度経営戦略セミナー」テキストを抜粋・編集したものです。

2022年11月2日(水)~11月29日(火)開催の経営戦略セミナーについてはこちら

 

 

 

 

1 2 3
レジリエンス戦略一覧へメソッド一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo